■組織を良くするために、会議で新しい提案をすると、
ネガティブな意見が挙がって、通らない、ということがあります。
これでは、大きな改革ほど、実現できません。
では、どのようにすればよいでしょうか?
- 文句を言わせないだけの資料を準備する
- できるだけ必要な手間や費用がかからない小さい案にする
- くじけずに何度も会議に挙げる
- ネガティブな人には持ちかけない
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■役員会で
「新たな取組をしよう」
と提案しても、
さして意味のない反対にあって進まない、ということが有るでしょう。
それぞれ自分の課題を抱えている役員からは、
「うちから人は出せない。誰がやるのか?」
「費用はどれだけかかるのか?費用対効果のエビデンスを出せ」
「うまくいく保証はあるのか?」
「何かあったらどうするのか?」
・・・などなど、
否定的な意見、
よく言えば慎重論ばかりが上がることになります。
およそ肯定的な意見は出てきません。
まして、
人材や費用を上乗せしてまで
「応援するぞ」
「わたしも関わるぞ」
という意見などが上がれば、奇跡ではないでしょうか。
こんな会議をしていては、
毎月、時間が無駄になるだけです。
しかし、世の中の多くのビジネス・シーンで、
こうしたことが
日々、大真面目に繰り返されています。
ある意味、喜劇的でもあります。
■何故、こんなことが起きてしまうのか?
それは、
「会議を因数分解していないから」
にほかなりません。
会議で提案してから可決されるまでには、
実は、
A. 問題提起(客観的アプローチ)
B. 問題提起(主観的アプローチ)
C. 改善提案
D. 改善案の比較検討(客観的アプローチ)
E. 改善案の比較検討(主観的アプローチ)
F. 採決
・・・といったステップが
一般的には含まれています。
A〜Bまでは、
問題を共有するステップです。
医療現場で言えば、
診察をして、病因を明確にする段階です。
もし苦痛を感じていない患者さんであれば、
苦痛もしくは将来の問題を共有してもらう段階にあたります。
つまり、
「なんとかしなければ大変だ」
という
行動の「目的」を形成するステップです。
客観的なデータを見せただけでは、
ピンとこない人もいるので、
このまま放っておけばどんなに悲しい人生になるか、
「大好きな晩酌もできなくなる」
「旅行にも行けなくなるかもしれない」
「車椅子生活になれば、大好きな温泉にも一人では行けない」
「娘の結婚式にも出られるかわからない」
などの主観に訴えることが必要なこともあるでしょう。
こうして、
「何とかしなければいけない」
と、行動の目的が形成されて、
人は初めて
「では、どうしたらいいのか?」
という話題に関心を向けることになります。
そこで、ようやく、
C〜Eの、「手段」を選択するステップに進む準備ができる、というわけです。
ただし、
「こんな治療をします」
と一方的に決められてしまうと、
納得感がありません。
自己決定した実感がないからです。
そこで、
改善提案としては、
いくつかの選択肢を提示することが望ましいでしょう。
インフォームド・コンセントです。
そして、手際良く進めるならば、
挙げたいくつかの選択肢のそれぞれについて、
長所と短所をまとめた一覧表を提示すると良いでしょう。
まずは、客観的な事実について
比較検討を行ないます。
それでも、
価値観は人それぞれなので、
好き嫌いや、
タイムリミットに対する意識、
危機感の濃淡の差があり、
それを無視して進めれば、
やはり納得を得られません。
なので、次に
主観にアプローチして比較検討するステップが必要となります。
それぞれの勝手なフィーリングが働くこともあれば、
単に、根負けして
「ならば、みなさんに任せます」
という結論になることもあるかもしれません。
ともあれ、意思を固めてもらい、
ようやく
Fの「採決」に至る、ということになります。
■この、AからFまでのステップを
一度の会議でなんとか進めてしまおうとするならば、
こんなに横着なことはありません。
これで通るはずがないのは当然でしょう。
「痛いでしょ?
では、来週、この手術をします。
同意書にサインしてください」
と言っているようなものです。
いつも、自律進化組織研究所ではセミナーなどでもお伝えしているように、
責めて、
A〜Bの「目的」フェーズと
C〜Eの「手段」フェーズとは
分けておいた方が、はるかに円滑に進むことでしょう。
■ここからが本題です。
ただし、一番困るのが、
このように進めても、
「目的が刺さらない人もいる」
ということです。
とくに役員クラスになると、
固定観念があったり、
個人的な利害やこだわりが働き、
容易に価値観が変わらない、と言うことがあります。
高齢でなくても、
想像力が乏しく、
「なんとかなるんじゃないですか?」
「いずれ、様子を見て考えましょう」
と、さっぱり危機感を持てない人もいます。
さらに、想像力はあっても、
「そこまで気をつかわなくて良いのではないですか?」
「それくらいは我慢してもらいましょう」
などと、
関係者への良くない影響を問題として感じることができない
自己中心的な発想の人がいたり、
「バレなければいいのではないか」
という考え方の人がいたり、
みなさんと同じ水準のモラルを持てない人も中には
いることがあります。
このように、簡単には
「目的が刺さらない人もいる」
ので、
丁寧に進めても、
やはり否定的な意見が挙がって、
ブレーキをかけられてしまう、ということがあるのです。
では、どうするか?
■それは、
「ブレーキになる人を入れずに話を進める」
ということです。
「この件は役員会で」
と考えると、
役員全員に参加してもらうことになり、
役員の中にもブレーキは居て、
その人も同席することになってしまいます。
あるいは
「委員会で」
と考えると、
委員全員に参加してもらうことになるので、
やはりブレーキが同席することになるでしょう。
「経営企画室で」
ということもありますが。
経営企画室のスタッフだからといって、
全員がアグレッシブな考え方で、
前向きで協力的なわけではなく、
ブレーキも混じっているものです。
それをわかっていて、
敢えて、役員、委員、経営企画室といった肩書きで招集して
ブレーキをかけられてしまうのは、
得策ではありません。
■そこで、
「この課題に関心がある人」
を募って、プロジェクトチームを編成することです。
こうすれば、
関心もないのに招集されて、
余計な口出しをしてブレーキになるような人は、
そもそも、
混入することがありません。
そこに参集するのは、
関心がある人、
口先だけでない人、
役員でも委員でも企画室でもないのに
「関わりたい」
と考えて参加してくれる人、
つまり、
「野心的に行動する人」だけです。
こうすれば、
役員会がうかうかしていれば、
プロジェクトチームがやってしまう、
ということになります。
委員会がまごまごしているうちに、
プロジェクトチームが進めてしまいます。
経営企画室が動かなかったのに、
プロジェクトチームの方が企画してしまいます。
組織としても、
こうした方が、生産的です。
■ところで、
一般的には、
「会議でどう説得するか」
を考えがちで、
プレゼンテーション・テクニックを磨いたり、
ロジカルシンクや論法を学んだり、
パワーポイントの作り方を身につけたり、
話術やコーチング技法、
ファシリテーション、
アサーションなどを使おうとする傾向がありますが、
その場のやりとりで、
(しかも大勢いる中で)
(しかもその人同士の見えない力学が働く中で)
人を説得することなど、
容易にできるはずもないのです。
会議でなんとか説得しようとするのは、
ロスが大き過ぎる、
ということに気づいた方が良いでしょう。
とすれば、どうするか?
そもそも、
ブレーキを取り除いて、
もはや負けようのない会議になるよう、
「顔ぶれを変えてしまう」
ということです。
■これまでは、
「これに関することは、担当部署で」
という考え方が普通でした。
「担当部署でもない者が、口を出すな」
というのが常識だったでしょう。
いまは、
組織内の壁に遠慮している場合ではありません。
これからの時代は、
スタッフ同士が気を遣っている間に、
外部環境がどんどん変化したり、
他のフットワークの軽い企業・組織に出し抜かれたりして、
取り返しのつかない手遅れになってしまうのです。
なので、
ネガティブな意見や
ネガテイブな意見を言う人を
最初から、
話し合いの場から排して、
野心的で行動する人たちで、どんどん進めてしまう方が合理的なのです。
■役員や委員、経営企画室のスタッフには、
野心的で行動する人種になってもらいたいところですが、
いますぐ変わってもらうことは難しいかもしれません。
そこで、
長期的には、
役員にも委員にも経営企画室にも、
「変えたいことならいくらでもある」
という
「野心的で行動する人」
を登用してゆくことをお勧めします。
みなさんの現場の経営陣・管理職は
どうでしょうか?
「変えたいことならいくらでもある」
という
野心がある人ばかりでしょうか?