■昭和・平成といった
トップ・ダウンを基調としたこれまでの社会文化の中にいては、
永遠にボトム・アップを基調とした新たな組織文化を醸成することはできません。
しかしながら、
わたしたちには驚くほど、トップ・ダウンの文化の影が
染み付いています。
そのため、
組織内におけるさまざまな人とのコミュニケーションにおいて、
徹底してボトム・アップの文化を意識して
人と接することが重要となります。
そこで、
その違いを対照表で確認しておかれることをお勧めします。
■まず、左欄が
昭和・平成の
「これまで(大量生産の時代)」の文化です。
この時代は、
高度経済成長に支えられて、
作れば作っただけモノが売れた時代だったので、
企業は、
1秒でもスピードを上げて、
製品を製造して市場に送り出すことが何よりも大事でした。
そのため、
「社員が黙って作業してくれれば最も生産性が高い」
状況だったのです。
そんな組織が、社員に最も期待したことは
「黙って働き続けて欲しい」
ということだったのは当然でしょう。
したがって、そんな中で、
「辞めると言い出すのは厄介な社員」
と見られていました。
どんなに職場で理不尽なことがあっても、
頑張って働き続けるのが美徳であり、
世の中のみんなが一生懸命に頑張っている中で、
「他を辞めてきた」
という人は、
「耐性のない人」
なので、
わざわざ
「採りたくない」
と考えられていました。
そもそも、自社の社員でも、
「辞めるなど、生産性を下げるとんでもない奴」
であり、
安定した生活を捨てた愚かな人間と見られていたものです。
したがって、
辞めてゆく社員には冷たく、
「迷惑をかけて辞めて行った者が戻ってくるなどもってのほか」
だったのも頷けるでしょう。
こうして、
生え抜き社員が定年まで働き続ける終身雇用が
常識だったので、
「異分子や異文化は嫌い」
だったとしても、それが当り前の時代だったのです。
■しかし、いまは時代が変わりました。
作れば作るほど売れて仕方ないという安定の時代ではなくなりました。
明日何が起こるかわからない激変の時代となったのです。
そのため、
経営者ひとりの視野と発想で組織を切り回すトップ・ダウンでは、
組織が維持継続できない時代となったのです。
すなわち、
今や、
社員一人ひとりが自分らしいアンテナを持ち、
その関心に従って発言し行動できるボトム・アップが、生き残りの条件となっているのです。
このことは、今回のコロナ禍に
変化できなかった企業よりも
業態まで変えて柔軟に対処した企業が
生き残っていることからもわかるでしょう。
トップ・ダウンを脱却し、
社員の多様性を最大限に活かしたボトム・アップに切り替えられるかどうかが、
組織の生命線となっているのです。
■対照表の右欄が、
「これから(多様性の時代)」に必要となる文化の特徴です。
この時代は、大企業も潰れる不安定な状況なので、
社員にとって
「黙って働け」
と言われることの方が大きな不審や不安でしかありません。
逆に、
「社員がのびのびと考え働くほど、生産性が高い」
組織となります。
そんな組織が、社員に最も期待したことが
「みずから楽しんで働いて欲しい」
ということとなるのは自然なことでしょう。
したがって、そんな価値観のもとでは、
「やりたいことがあって職場を変える視点を持つのは良い」
こととなります。
その関心を存分に活かしてくれるのであれば、
社内で異動することも、むしろ歓迎されることとなります。
また、やりたくもない仕事を無理して続けるのは、
組織にとってもロスとなりますから、
職場を変えるという視点を持ってくれている社員の方が
そうした発想のない社員よりも価値があるのです。
なので、企業・組織は、
「やりたいことがあるなら、ぜひ来てやりたいことをやって欲しい」
と考え得ることとなります。
もし、自社の社員で、
「辞めたい」
という人がいた場合には、
「やりたいことが社内にない人なら、いるだけロス」
なので、無理に我慢させながら働かせる理由はどこにもありません。
迷惑がることも、恨んだり憎んだりすることも
ありません。
人と組織、社員と企業がフラットな関係なので、
社員が会社を離れてゆくことがあっても、
それは当然のことです。
石にかじりついても働き続けるべきという昭和の文化は、
この激変の時代をみんなで乗り切ろうという局面では、もはやまったく意味がありません。
したがって、辞めて行った社員でも、
「他でパワーアップして技術や人脈を携えて凱旋してきてくれるなら大歓迎」
です。
その力を、元いた職場で大いに発揮してくれることは、
極めて大きな財産であることは言うまでもないでしょう。
そもそも、
激変の時代においては、
進化するためのフットワークが、
常日頃から必要です。
そのため、経営者や管理職は、
「どんどん外の風を吹き込んで視野を広くして欲しい」
という考えを持つこととなります。
■もしみなさんが、
激変の時代を柔軟に変化して乗り切れる組織を実現したいと考えるならば、
この対照表は活用することができるでしょう。
日々の業務の中で、
「みずから楽しんで働いて欲しい」
「やりたいことがある社員なら職場を変えるのも良い」
「当社でやりたいことがある人ならぜひ迎えて、やりたいことを実現して欲しい」
「もし辞めても、パワーアップして戻って来れそうなら、もちろん大歓迎」
・・・そんな発言を、みなさんは、しているでしょうか?