注意!目標管理の導入方法を誤るから組織が依存化する

注意!目標管理の導入方法を誤るから組織が依存化する

■目標管理制度を導入しても、「形骸化している」という声が少なくありません。
当初目指していた「ボトム・アップ型組織になっていない」ということです。

その原因は、実は導入段階にあります。

では、ボトム・アップ型組織を実現するにあたり、目標管理制度の導入はどのように活かせば良いでしょうか?

  1. 目標管理制度の目的を、全スタッフにしっかり説明する
  2. 目標管理制度の目的を、まずは管理職にしっかり理解させる
  3. 目標を書く訓練を、何度も丹念に行なう
  4. どんな目標が望ましいか、スタッフ間で話し合わせる
  5. 他の組織で書かれている目標を学んで参考にする
  6. 目標管理制度の話をしない

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■目標管理制度を導入しようとする経営陣は、
ほぼすべての場合、
「スタッフがみずから目標を立ててチャレンジしてゆく組織をつくりたい」
という動機を持っているように見受けられます。

自発的に考え行動する、
すなわち
「自律進化組織」
を望んでのことでしょう。

一般的な表現で言えば、
「ボトム・アップ型の組織にしたい」
ということでしょう。

ところが、
目標管理制度の導入のプロセスはどうなっているでしょうか?

目標管理制度の権威と言われる学者の提示する方法も、
目標管理制度導入コンサルタントの提示する方法も、
出回っているビジネス書に書かれている方法も、
たいてい、
以下のような流れになっている傾向があります。

  1. まず、管理職に目標管理制度の目的を学ばせるために研修を行なう
  2. 手始めに、管理職が、自分の担当する部署の目標を、目標シートに書いて提出してみる
  3. 上席者が、管理職の目標設定面談を行ない、目標シートに書かれた目標を、より妥当なものにするよう指導する。この場合、目標管理制度導入コンサルタントが同席することもある
  4. 上記を何度か繰り返すことによって、管理職は次第に適切な目標を書けるようになる
  5. その次の段階として、各管理職が、自分の担当する部署の部下スタッフたちに、目標を書かせる
  6. 管理職が、部下スタッフの目標設定面談を行ない、指導する
  7. 上記を何度か繰り返すことによって、部下スタッフは次第に適切な目標を書けるようになる

概ね、このような運びになっているのではないでしょうか?

■ここまでで、すでにお気づきのことと思いますが、
この手順は、
目指していたボトム・アップ型組織と正反対の、
完全なトップ・ダウン型組織を作っていく作業に
なってしまっています。

なぜ、これが失敗になるのか?

まず、第一に、
「目標を書け」
と言われて書いている時点でトップ・ダウンが働いています。

また、
上席者が管理職に対して、
管理職が部下スタッフに対して、
目標の書き方を指導するという点で、
上から求めた目標を部下たちに書かせる作業において、
強力なトップ・ダウンが働いています。

その結果、目標を書かされる側は、
「上司がが認めてくれる目標を書かなければならない」
と考えるので、
ボトム・アップは起こらない風土になります。

下書きは本人が描くけれども、
そこに本人のモチベーションがありません。

それは、
上司に気に入られる目標を書いて、
上司の了解を取る
という機械的な作業となっています。

その結果、みなさんが感じた通り
「上層部が導入するにあたって、トップ・ダウンで進める気満々だ」
ということが管理職や部下スタッフに明らかに伝わってきます。

なので、やればやるほど、
組織がトップ・ダウン型組織にになっていく
ということです。

こうしてみれば、
このような進め方では(一般的ではあるものの)、
目標管理制度を導入したのに一向にボトム・アップ型の組織にならないのは、
むしろ必然としか言えないでしょう。

■ここからが本題です。

では、どうしたらいいのか?

上記の進め方で正しいのは一点。

管理職から巻き込むことは組織づくりには重要です。

ただし、
管理職に目標管理制度の話をしない
ことが重要です。

では、どうするか?

まず、
管理職に今の組織の現状をしっかりと理解させることです。

もちろん、集めて講義を聞かせるといった
研修ではない方が効果的です。

具体的には、
外部環境を見に行かせて、
制度的あるいは社会環境的に、
あるいは将来的に、

または、
競合他社の状態を見たり、
あるいは社会情勢などを見て、

「自分の組織がこれから安泰ではない」
ということを肌で感じてきてもらうことです。

つまり、最も重要なのは、
こうしたことによって、
管理職が強烈な問題意識を持つようになることが
何よりも重要だということです。

もし、
これが充分にできて、
管理職は強烈な問題意識を持つようになれば、
後は、おのずと自律進化組織になります。

実は、
目標管理制度を導入しようとしまいと
自律進化が始まるのです。

なぜなら、実際、
このように強烈な問題意識を持った管理職は
自分から、
「変えたい事ならいくらでもある」
という状態になっているからです。

「あれも変えたい」
「これも変えたい」
「こういう拠点展開をしなければいけないのではないか」
「そのためにはこういう人材を今のうちから集めなければいけない」
「ならば自分の過去の人脈をたどって人と会っておこう」

あるいは
「今いるスタッフたちにどんな教育をしたらいいか」
「教育を施す前に自分と同じ問題意識を持たせるためにはどうしたらいいか」
「外部のどんな情報に触れさせたらいいか」
「そのためにお金や時間を整備する必要があるならば、上席者に相談して決済を取り付けよう」
・・・といった想いや考えを持っているはずです。

■そして、
もうお判りのように、

このように強烈な問題意識を持ち、
自分なりにどんどん変えていきたいと思っている管理職であれば、
もし、みなさんが目標管理シートを渡したときには
「目標が書けない」
ということは、
起こりようがないのです。

むしろ、
「どれから書いたらいいですか?」
「書き切れないんですが?」
という声が返ってくるはずです。

その場合、目標管理制度のメリットといえば、
「各自が持っている問題意識を言語化し記録化することができる」
「なので、成果についての検証がしやすくなる」
という点になってくるでしょう。

そして、
このような組織こそが、
まさに
「自律進化組織」
にほかならないのです。

導入の進め方が正しければ、
導入ができた時点で、
すでに自律進化組織を実現している、ということになるのです。

したがって冒頭のクイズ
「ボトム・アップ型組織を実現するにあたり、目標管理制度の導入はどのように活かせば良いか?」
について、

[1]の「目標管理制度の目的を、全スタッフにしっかり説明する」
[2]の「目標管理制度の目的を、まずは管理職にしっかり理解させる」
[3]の「目標を書く訓練を、何度も丹念に行なう」
[4]の「どんな目標が望ましいか、スタッフ間で話し合わせる」
[5]の「他の組織で書かれている目標を学んで参考にする」
・・・は、いずれもトップ・ダウンの思考を浸透させることになるので、
妥当とは言えません。

反対に、
[6]の「目標管理制度の話をしない」
ことが重要です。

もし、管理職やスタッフが、
強烈な問題意識を持っていないのに、
目標管理制度という素晴らしいシステムを教えても、
活用されません。

それどころか、迷惑がられ、
不満を訴えてくる者もあるでしょう。

痛みを感じていない人には、
素晴らしい薬も不要なものなので、
捨てられてしまうのです。

反対に、
鋭い痛みを感じている人は、
誰かに指示命令をされなくても、
自分から、真剣に良薬を探したり、
遠路でもはるばる良医の治療を素直に受けに行きます。

同様に、管理職やスタッフが、
強烈な問題意識を持ったならば、
みずから、
さまざまなことを考え、
真剣に行動します。

そこに、みなさんが
目標管理制度というシステムを紹介してあげれば、
どんなに感謝されるか、知れません。

そして、
大いに目標管理制度を使いこなしてくれるでしょう。

■このように、
トップ・ダウンの発想を抜け切れずに
目標管理制度を導入すれば、
そのプロセスが、そのままトップ・ダウン型の組織風土を助長してしまうという
大きな「逆効果」を
もたらすことに、注意されることをお勧めします。