■組織づくりの要は管理職づくりであることは
みなさんもご存知のとおりです。
では、
多くの組織の経営者・役員は、
どんな管理職像をもち、
いまいる管理職に発信しているでしょうか?
そもそも、
経営者・役員にとって、最も心強いのは、
自分と同じ視野と発想を持っている人ではないでしょうか?
それは、
5~10年後の病院の位置付けについてイメージを持ち、
そのために必要な施設設備や
人員の採用・配置を見通していて、
そのために必要な費用をどう捻出するか?までを描けている、といった
まさに経営者・役員クラスの
人ではないでしょうか?
そして、そんな人がいれば、
ぜひ一緒に働きたいと思うでしょう。
まして、いまいる管理職が、
そんな視野と発想を持っていれば、
最強の組織だと思えるのではないでしょうか?
■ならば、組織づくりを進める中で、
管理職づくりにおいては、
そうした管理職像を持っていることが不可欠です。
そもそも、経営者・役員が、明確な管理職像を持っていなければ、
望むような管理職は生まれないからです。
■本来、トップが、
「自律進化組織を実現する」
という揺るがないゴールを明示していれば、
それに適った管理職像も明確になるはずです。
しかし、ここは、丁寧に組織が、求める管理職像を
明らかにしてゆく必要があることでしょう。
なぜなら、昭和の時代の、指示命令体質がしみついた
わたしたちには、
「指示命令体質に沿った管理職像」
が、驚くほど固定概念となっているからです。
■例えば、
「管理職」
について書かれた書籍を見てみれば、それはわかります。
多くの書籍には、管理職のあるべき姿として、
- どの部下よりも良いアイディアを出せなければならない
- どの部下よりも率先して働かなければならない
- 部下を観察して気持ちをしっかり察してやれなければならない
- 人望が大事
- どの部下よりも仕事ができなければならない
- 優しすぎず厳しすぎず、部下を指導できなければならない
- 部下の相談にはいつでも答えてやらなければならない
- 部下が働きやすいように環境を整えてやらなければならない
……などなど。
まさに「管理するのが管理職だ」と言わんばかりの
「管理型管理職」
が前提になっていることがわかるでしょう。
多くの組織が、
「あれもこれもできなければならない。
それが管理職だ」
そして、
「それができるかどうかを見て、管理職としての人事評価を行なう」
としている組織が多いでしょう。
まるで
「全能でなければならない」
と言わんばかりに高度な要求による呪縛にがんじがらめにされているのが
多くの管理職ではないでしょうか?
これでは、管理職自身が
自律進化体質になることは絶対にありません。
まして、自律進化組織をつくることは永遠に不可能です。
それどころか、管理職は
「自分自身も活躍して見せなければ、評価されない」
ということなるので、
部下が自分よりも活躍することを嫌うことになるため、
部下の手柄を隠したり、横取りしたりすることにすら
つながりかねません。
指示命令体質が当り前だった昭和の時代に、
上司が部下の邪魔をするといった虚しいことが起きたのも、
このためです。
では、自律進化組織を目指す組織においては、
管理職には、どんなメッセージを示せば良いでしょうか?
それは、上記の各項の逆となります。
・どの部下よりも良いアイディアを出せなくてもよい
- どの部下よりも率先して働く必要はない
- 部下を観察して気持ちをしっかり察する力がなくても良い
- 人徳はなくてもよい
- どの部下よりも仕事ができなければならないことはない
- 部下を指導できなくてもよい
- 部下の相談にいつでも答える必要はない
- 部下が働きやすいように環境を整えてやる必要はない
……というように、
自律進化組織においては、
「できるだけ管理しないのが管理職だ」
ということになります。
こうした価値観が、組織から発信されていれば、
管理職が部下と競う必要もないので、
心から部下の活躍を願い、力の限り応援して、
持てる力をすべて引き出してあげることができます。
管理職が動かない程よいので、
管理職は、
部下が最大限に活躍できるように、
サポートに徹することになります。
「解放型管理職」
とでもいうべきでしょうか。
さらに言えば、
できるだけ管理をしないのですから、
「管理職」
という名称も変えた方が良い、というのがわたしの考えです。
職員がみずから気づき、考え、話し合い、行動する
「職員の自治」
を側面支援するだけなので、
「自治支援職」
とした方が良いのではないか、とも考えます。
したがって、
一見、
「常識とは逆に見えるようなことこそ正しいのだ」
と固定観念を是正してゆくことが必要なのです。
■指示命令体質の感覚では、
「なぜ、管理職は、これらをしなくて良いのか?」
と思われるでしょう。
「これらは、職員自身ができる」
それが自律進化組織だからです。
「必要な武器が、必要な場所に置いてあるんでしょ」
というようでは、自律進化組織ではないのです。
「必要なら、自分たちで情報や技術を手に入れてきて、
自分たちで創り上げる」
これが自律進化です。
■このように、
指示命令体質における感覚を
ことごとく覆し、
その逆が自律進化体質における常識なのだと、
示してゆくことが必要なのです。
わたしたちでさえ、油断するといつのまにか
指示命令体質の視野と発想で考えていることが多々あります。
なので、
地動説から天動説へ切り替えるように、
指示命令体質から自律進化体質へ切り替えることです。
そして、いまいる管理職の方々にも、
「組織は、指示命令体質の管理職など、まったく求めていない」
と示して、
呪縛を解いてあげなければなりません。
多くの管理職は、
これまで永年、呪縛の中で生きてきているので、
呪縛が解かれたことに、かえって不安を覚えるかもしれません。
そのため、
それを見越した上で、
手間と時間をかけて丹念に呪縛を解いてゆくことが必要となります。
■そして、その最も重要な示し方が
「管理職のミッション」
です。
みなさんの現場では、
管理職の役割について、
「あれもできなければならない、
これもできなければならない」
と言って、
「管理型管理職」
を求める呪縛のメッセージを
管理職に発信しているでしょうか?
それとも、
「あれも要らない、
これも要らない」
と言って、
「解放型管理職」
を求めるメッセージを
管理職に発信しているでしょうか?
■みなさんの現場で行なっている
「管理職研修」
は、どちらでしょうか?
一回一回の管理職研修によって、
どんどん指示命令体質を助長するのか、
自律進化組織への変化を遂げるのか、
実は、
180度、反対の方向に進んでいるのです。
管理職(マネージャー)は、
プレイをしないのが原則です。
管理職(マネージャー)と呼ばれ、
プレーヤーと呼ばれない最大の所以は、
まさに
「プレイしないこと」
にあるのです。