■医療勤務環境改善という大きなテーマが
医療業界での大きな課題となっています。
その「環境」とは、一体何か?
「とにかく働きやすければ良いんでしょ?」
という漠然とした認識からスタートすると、
対策も当然、漠然とした、
効果の上がらないものとなるのは必至でしょう。
ゴールが明確でなくて、
ゴールにたどり着けるほど、
簡単なことではないからこそ、
永年、
課題となっているのですから。
■そこで、「環境」を分類してみれば、
1.「物的環境」
2.「制度的環境」
3.「人的環境」
となるでしょう。
1.「物的環境」とは、
施設設備のことです。
現代では、致命的に劣悪な労働環境はなかなかありませんから、これは問題視する必要はないかもしれません。
確かに、休憩室がない、更衣室が狭い、
昨今では、LGBTの方に適したトイレがない、などの
課題があるのかもしれませんが…。
いずれにしても、予算によって解決することができるでしょう。
2.「制度的環境」とは、
職場のルールです。
これも、未整備な職場は少ないかもしれません。
就業規則が提示されていない、評価報酬制度が整っていない、などの課題があるかもしれませんが、
制度の問題そのものというより、
トップが人事労務管理を徹底するかどうか、
または、
制度を管理職が適正に運用できるようにしているかどうか、
といった、
経営者側のポリシーによって是正されることでしょう。
3.「人的環境」とは、
まさに人間関係のことです。
これこそが、職場の最大の課題ではないでしょうか?
というのも、永年、職員の離職原因のトップに上がるのが
「人間関係に悩んで」
であることは、改めて言うまでもない周知の事実だからです。
■しかしながら、この
「人的環境」
へは、いまだ誰もメスを入れていないように見受けられます。
というのも、
職員同士が仲良くなるかどうかは、
「トップや管理職がどうにかできるものではない」
と考えている組織が多いからです。
たしかに、
懇親会を催しても集まらない、
職員旅行もかけた費用ほど喜ばれない、
グループでの運動会は職員の負担になっている、
年度の全体集会に参加することが嫌で退職する職員さえいる、
……など、
組織が
「職員同士を仲良くさせよう」
と、介入すればするほど、
職員からは不評を被ってしまう、という傾向にあるようです。
■では、勤務環境改善において最も改善すべき
「人的環境」
つまり
「職員同士の人間関係」
は、どうすることもできないのでしょうか?
もし職員同士の人間関係が良くならなければ、
単に職員が働きにくいだけでなく、
連携が生まれないので生産性が上がらず、
できるはずの医療ができない、ということに陥ります。
職員同士が連携できていないために、
受けられたはずの医療が受けられないとすれば、
患者さんにとって、
これほど馬鹿馬鹿しいことはありません。
また、防げるはずの退職を阻めず、
無駄な採用・育成費用を支払い続けることとなり、
医療技術も向上せず、
健全な医療提供が行われないこととなってしまいます。
■本当に、
職員同士が仲良くなるかどうかは、
「トップや管理職がどうにかできるものではない」
で、済まされて良いものでしょうか?
「器用な管理職がいてくれれば助かるが、
器用な管理職ばかりではないのは、仕方のないこと」
と諦めていて済むのは、
もはや過去のことです。
いまや、
このテーマに介入して、
意図的・作為的・計画的に
変えてゆかなければならないステージにあることに
いち早く気づき、
新たな施策を進めてゆかなければなりません。
■なぜなら、
職員の勤務環境のうち、
最も重要な「人的環境」を整備しなければ、
現場が活性化することも、
組織の生産性を最大化することもできず、
まして、
組織を維持することもできないからです。
そして、
「職員の関係性づくり」
なくして、
「組織づくり」
は実現しないからです。