■研修会社に相談すると、
それはそれは、大きなつづらを背負って、
さまざまな研修プログラムを持ってくるでしょう。
「どれかを買ってもらいたい」
と考えるからです。
すなわち、
「若手職員研修」
「3年目フォロー研修」
「主任職研修」
「管理職研修」
「中堅職研修」
などなどと、必要以上のセグメントをしていますが、
品揃えを豊富にしているに過ぎません。
また、
リーダーシップ研修では、
自己分析をして、
自分がどんなタイプのリーダーになるか?
を決めさせる研修があります。
しかし、
リーダーのスタイルはそんなに簡単なものではないでしょう。
さらに、
部下を4〜6のタイプに分けたうえで、
タイプごとに適したコミュニケーションの方法を学ぶという
研修もあります。
いわば、
「部下の取扱説明書」
研修です。
と書いてみて、わたし自身も、つい
「面白そう!」
と思ってしまいますが、
意味のない研修であることは明らかでしょう。
というのも、
「〜〜の取扱説明書」
という本を買ってみても、
面白がって読んではみるものの、
それ以来、付き合い方が上手になるということには
まず、ならないことは、
すでにみなさんもご存知の通りでしょう。
このように、
研修会社は、
「どうやったら売れるか?」
を考えて、いろいろと工夫するのです。
「どうやったら、現場が良くなるか」
に関心がある研修会社は、あまり見かけません。
ともあれ、最も重要なのは、
「面白いか?」
ではなく、
「現場実務に役立つか?」
であることは言うまでもないでしょう。
■そこで、考えてみると、
そもそも、
「部下のタイプを見極めろ」
と言う発想自体に、問題があるのではないでしょうか?
なぜなら、
もし苦労してコミュニケーション方法を習得したとしても、
上司自身か部下のどちらかが異動したら
もう役に立たなくなってしまうからです。
また、部下にとっても、同じことが言えます。
上司の個人的なこだわりに付き合わせてしまうのは、
ロスが多いのです。
部下の方も、内心、
「あなたが気になるだけでしょ?」
と思いながら、振り回されてくれているとすれば、
気の毒な話です。
■というわけで、
職員の個性にとらわれるなど、
微視的になっていてはなりません。
反対に、巨視的な観点が必要です。
すなわち、
上司が部下の個性に振り回されず、
部下も上司の恣意に付き合わされず、
生産性の高い組織を築くためには、
やはり
「大義」
を大切にすることではないか?ということです。
上司や部下のパーソナルな価値観ではなく、
「組織にとって、どうしても必要なことに集中しよう!」
という号令です。
こうした大義のもとでは、
真面目な部下は、本気で着いてきてくれるはずです。
真面目じゃない部下は、居場所がなくなるだけです。
しかし、それは致し方ないでしょう。
組織にとってどうしても必要なことに賛同してくれない職員は、
他の職員に負担を及ぼしてしまうことにもなるので、
いつまでも一緒に働くことはできません。
その代わり、
どうしても必要なことにコミットして
力を発揮してくれる職員には、
組織も、
きちんと報いて上げることができるでしょう。
みなさんの現場における大義は、
どんなものでしょうか?
「なんとしても、これを進めなければならない」
という絶対不可避な課題・・・・
それは、
地域医療計画の中で、
自分の病院単体として生き残ることでしょうか?
あるいは、
近隣の公的病院・民間病院との統廃合を経て
生き残ることでしょうか?
採用広告費を使い続けて、
穴の開いたバケツに水を貯めようとするような病院を
卒業することでしょうか?
今後の施設基準をどのように定めてゆくか、をベースに
現在の建物をどのようにするか、
正しい判断のもとに、
柔軟に変容できる組織になることでしょうか?
■医療現場の職員の方々に、
「できたら、こうしようよ」
はありません。
多忙を極める現場では、
「どうしても必要なことならやるが、
どちらでも良いことならやる余裕などない」
というのが、
ほとんどの職員の方々の気持ちだからです。
そんな現場の職員の方々も、
「そういうことなら、ひとつやろうじゃないか!」
と向き合ってくれるための
「大義」
は何でしょうか?