負責病の実例(5) 「業務配分」

負責病の実例(5) 「業務配分」

◾️組織がなかなか自律進化体質に切りかわらないのは、

指示命令体質が染み付いているためです。
 
多くの組織において、
上司が指示命令をし、
部下が業務遂行するのが当たり前であり、
組織上層部も、
「上司の仕事は、いかに部下を従わせるかだ」
と考えていることがほとんどでしょう。
 
この体質の中で、にわかに
「ボトムアップが大事だ」
と言われても、
「本当に意見を言って良いのか?」
という不安から萎縮してしまい、
意見が上がらない、というのが
今日の組織の構図ではないでしょうか。
 
◾️そのため、上司の立場にある人は、大抵、
「部下をコントロールしなければならない」
と考えてしまい、
部下にさせれば良いものを、
ついみずから介入し、進んで責任を負ってしまう傾向があります。
 
これを、「負責病」と呼んでいます。
 
◾️そして、その象徴的なケースが、
「業務配分」
の場面にも現れます。
 
以前、医療機関であったことです。
 
ある事務職員が、ある時、経営者に、
「わたしの業務の範囲をはっきり定めていただけませんでしょうか?」
と頼みました。
 
業務範囲が不明確なために、
同僚との間で摩擦があったのでした。
 
たしかに、業務配分を職員本人が勝手に決められるとしたら、
組織が成り立たないので、
上司に頼むことが正しいようにも思われます。
 
しかし、その経営者の答えは意外なものでした。
 
というのも、その経営者の方は、
自律進化体質を体得されていたからです。
 
さて、その経営者は、どう答えたでしょうか?
 
その経営者の答えは、
「わたしが決めたら、きみは文句を言わずにやるのか?」
でした。
 
その意図はこうです。
 
「自分で業務範囲を決めて、
周囲に説明し、納得を得られれば、
上司の理解と許可を得ることもでき、
それが、もっとも自分自身納得のいく業務配分になるのだから、
なぜ、それをしないのか?」
 
自律進化が前提であれば、
答案を出すのも自由、
周囲の納得や上司の理解を得るのも自由、
「だから、自分の納得のいくようにしたらいいよ」
というわけです。
 
もちろん、最終的な決裁は、上司が責任を持ちます。
 
決裁のたたき台となる答案は、
上司が勝手に作るのではなく、
当事者である部下職員が作る方が、圧倒的に現場に適っていることでしょう。
 

なので、答案を出すのは部下職員の権利です。

 
部下の答案でうまくいかなければ、
また別の答案に切り替えれば良いだけです。
 
◾️にもかかわらず、多くの組織では、
部下からの頼みに応じて
上司が業務配分の責任を負ってしまう、負責病の傾向があります。
 
そのため、しばしば、
すっかり依存病になっている部下からは
「今回のは納得がいかない」
などの勝手な言い分が上がってくるという結果になっているのです。
 
これこそ、
「上が決めて、下が従う」
のが原則になっている指示命令体質の産物にほかなりません。
 
自律進化体質ならば、
その逆でなければならず、
部下職員は、
「下が答案を示し、上の理解を取り付ける」
ことが原則となります。