離職を防ぎたければ、従業員の要望を叶えようとするな

離職を防ぎたければ、従業員の要望を叶えようとするな

■離職を防止するためには、経営陣はどうすれば良いでしょうか?

  1. スタッフからの要望を責任を持って聞く
  2. スタッフからの要望を責任を持って叶える
  3. スタッフからの要望を叶え、叶えられないことは誠実に謝る
  4. スタッフからの要望を叶える責任を負わない。

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■防げるはずの離職が起きてしまうのは、
なぜか?

家業のため、
家族のため、
体調のため、
どうしても仕事を続けられない、ということもありますが、
「これまで通りではないとしても、
どんな形であれば続けられるか?」
という相談をした方が良いことは言うまでもありません。

しかし、
そんな相談どころか、
あるいは
個人的な事情もないのに、
辞めてしまう、ということがあります。

こうした離職は、
本来、
「防げるはずの離職」
ということです。

こうした防げるはずの離職を防がないのは、
組織にとって多大な損失をもたらします。

  • 採用時の人事管理が無駄になる
  • 育成費用が無駄になる
  • 育成スタッフのモチベーションを損なう
  • 技能が蓄積しないのでサービスの質が向上しない
  • クライアントからの信頼が向上しない

・・・などなどそのロスは甚大です。

その欠員補充の際には、

  • 募集広告費用がかかったり、
  • 人材紹介会社へ多くの費用を払うなど、

費用面・心理面のとんでもなく大きな無駄が
何年も続いているとすれば、
経営としては、目も当てられない状態です。

離職が慢性化している組織では
「離職は仕方ない」
と、感覚が麻痺しているところすらありますが、
経営陣がそのような姿勢であれば、
他のスタッフを失望させていることは間違いありません。

いまいるスタッフの信頼も損なってしまうことによる
組織づくりにとっての被害は計り知れません。

■このような状況を振り返れば、
「スタッフに働き続けて欲しい」
と改めて思うことでしょう。

ただし、
「スタッフに働き続けてもらうためには、
スタッフの願いを叶えてやらなければならない」
と考えている人が多いのではないでしょうか?

コンサルタント業者が、
「従業員満足度調査」
を売って回っているので、
そんな感覚に陥ってしまうのも無理ありません。

しかし、
スタッフの満足度を調査したところで、
「給与や手当を増やして欲しい」
「休みを増やして欲しい」
といった待遇面の項目だけは誰もが
「Yes」
と回答する、という結果でしょう。

そして、お察しの通り、
お金も休みも、
要望する方は
「これ以上は要らない」
ということにはなりません。

単に
「贅沢をしたい」
「働きたくない」
という願望が必ずしもあるわけではなく、
「生きている時間は有限なのだから、
家族との時間を大事にしたい」
とか、

「これからますます生き難い時代になるので、
子供には、いかなる選択も
させてやりたい。
そのためにはお金があればあるほど良い」
といった思いもあることでしょう。

「自分自身、もっと勉強して
もっと世の中に貢献したい。
そのためには、
留学できる自由な期間とまとまったお金が
あったら助かる」
という尊い思いを持っている人もいるでしょう。

しかし、
言うまでもなく、
スタッフの要望に応じるには限界があります。

わざわざ満足度調査を行ない、
聞いたにもかかわらず、
要望は聞いただけで、
「その要望には答えられない」
という回答や態度を
組織が示すことになれば、

スタッフを失望させ、
組織とスタッフの関係を悪くするだけです。

なぜなら、
「スタッフから上がってくる願いを叶える」
という責任を
経営陣みずから負ってしまっているからです。

なので、
軽々に満足度調査を行なうことは辞めた方が良いでしょう。

アンケートは組織の意思表示ですから、
スタッフたちは、
アンケートの在り方・進め方を通じて、
組織や経営陣の考えや姿勢を見ているのです。

うっかり行なえば
スタッフからがっかりされることになるのです。

日本では、
長年の上意下達、
トップ・ダウンの思考が染み付いているため、
どうしても、
経営陣や管理職が、
あれこれと、負わなくても良い責任を、
わざわざ自分から負ってしまう傾向があります。

その重荷に苦しんでいる経営陣・管理職が
そこここに見られます。

この傾向を
みずから責任を負う病気
「負責病」
と呼んでいます。

■そこで、注意しておくことがあります。

経営陣は、
スタッフの離職を防ぐためには、
「スタッフから上がってくる願いを叶えてやれるとよい」
という誤解を
一刻も早く解くことです。

スタッフたちに要望を聞けば
筆頭に上がってくる休みやお金といった
「願い」
を叶えてあげることは限界がある、
どころか不可能です。

そんなことに責任を負っては、
スタッフの失望を買うことが明らかです。

まず、
従業員満足度調査などで、
自分たち経営陣が責任を負っているかのような顔で
スタッフの要望を聞いてしまうことが
第一の間違いです。

そして、その結果、
それを叶えることができない時に、
「それは無理だ」
と自分が回答することが、
第二の間違いです。

この2点で、スタッフは
完全に、
「この人たちが叶えてくれないのだ」
と理解してしまいます。

「自分の願いを阻んだのは、経営陣だ」
となれば、
そんな職場で勤め続けたいとは思えません。

離職するのは当然でしょう。

■では、どうすればよいか?

まず、
願いを持つスタッフたちと、
彼らを取り巻く環境や運命とが
向き合った間に立ち、
経営陣は、
スタッフの味方として、
その展開に立ち会うことがまず重要です。

そして、その結果、
その願いが叶わなかった時に、
「自分も味方として断腸の思いだ。
なので、その代わりにできることはやろうと思う」
とコメントすることが重要です。

この2点で、スタッフは
完全に、
「願いが叶わなかったのは、残念だが、
それは運命や環境のせい。
むしろこの人たちは自分たちの味方なのだ」
と理解します。

「叶うこともあれば叶わないこともある。
しかし、経営陣はいつも自分の味方だ」
となれば、
そんな職場は離れがたいものとなるのです。

離職しないのは当然でしょう。

つまり、
経営陣が、
「スタッフから上がってきた願いを叶えなければならない」
という呪縛から早く解き放たれた方が、
スタッフが、
経営陣に失望して離職にいたるということが
なくなる、ということです。