「水道管をきれいにすれば、きれいな水が飲める」という勘違い

「水道管をきれいにすれば、きれいな水が飲める」という勘違い

■クレームが発生したり、

ミスが発生したことがきっかけで、

しばしば

「職員間のコミュニケーションが円滑ではない」

という話になります。

 

そこで、多くの組織・団体では、

「コミュニケーションを良くすることが大事」

ということになっています。

 

そこで、登場するのが、多くのシステム業者です。

 

社内メールシステムやら、

社内における電子掲示板やら、

勤怠管理システムに近況を記載できる複合システムやらを

つくっては、

「これで、職員間のコミュニケーションもバッチリ」

「風通しが良くなって退職も激減」

「職員が楽しく健康な職場づくりも思いのまま」

と宣伝しています。

 

ところが、そう都合よく現場が変わることがないのは

ご存知の通りです。

 

「この機材があれば、あなたの作曲の世界は大きく広がり

イメージを素晴らしい音楽にするのも、思いのまま」

というコピーに惹かれたものの、

「やっぱり自分の中に美しいイメージがなきゃ、

どんなに良い機材を買っても、

素晴らしい音楽が作れるわけじゃないじゃないか!」

と知らされたこともあります。

 

「この一着があれば、

あなたの今年の夏の装いも思いのまま」

というコピーに惹かれたものの、

「やっぱり、考えてみれば、この一着を応用するだけじゃ

ワンシーズン乗り切れるわけないわ!」

ということもあるでしょう。

 

このように、

「思いのまま!」

と書かれていても、

大抵の場合、

その一品が何かを変えてくれるわけではない、

……ということに気づかされたことが

誰にでもあるのではないでしょうか?

 

では、同様に、

コミュニケーションのためのシステムを導入しても

現場の風通しが良くなるわけではなく、

組織が変わることがないのは、

なぜでしょうか?

 

■それは、水道に例えれば

「パイプの話」

に過ぎないからです。

 

口径が大きく、内側の表面が平面であれば、

確かに、多くの水を、短時間で、円滑に

届けることができるでしょう。

 

しかし、パイプがどんなに良くても、

その中を通す水が汚れ濁っていれば、

届いた先で、

気兼ねなく水を、飲んだり浴びたりすることもできません。

 

水の送り元と、届け先が

気兼ねの要らない良い関係になることもないのです。

 

■要するに、

いくらコミュニケーションのパイプを

立派なものにしても、

そのパイプを通じて、相手に届けるメッセージが

清潔で、澄んだ水のように、

相手を安心させ幸福にするものでなければ、

関係が良くなることはないということです。

 

このことは、

LINEが身近なものになり、

コミュニケーションが便利になった反面、

以前よりも、

人を傷つけるメッセージを大量に流すことも可能となったために

中学生・高校生がLINEの世界の中でまでいじめられ、

退学やメンタルトラブル、自殺にまで

追い込まれるケースが後を絶たないことからも判ります。

 

同じく、ツイッターやフェイスブックで

誰もが、瞬時に膨大な数の人たちに

メッセージを発信できるようになった代わりに、

面識のない人から誹謗中傷を受けて、

炎上するということもよく耳にします。

 

人間が、

相手を幸福にするような綺麗な水を流すことを出来ず、

相手を傷つけるような汚れて濁った水しか流せないままなのに、

パイプが太くなったために、

おもに汚水が流通するようになっている、という状態です。

 

■これは世間のことだけでなく、

組織・団体においても、

まったく同じ構造になっているということができます。

 

「コミュニケーションを良くする」

とは、

「いつ、どこで、どのようにコミュニケーションをとるか」

というパイプの話をする以上に、

「どんなメッセージを届けるのか」

という、流そうとする水質の話を先にしなければ

ならないということです。

 

■では、組織において、

相手を幸福にしたり、

勇気や元気を与えて、

お互いの関係を良くするメッセージとは、

どのようなメッセージだと考えられるでしょうか?

 

一言でいえば、

(これは、セミナーや研修でもお伝えしていることですが)

つまるところ、

「何でも言ってみて。

できるできないは、後で決めれば良いのだから」

というメッセージだと、

患者サービス研究所では考えています。

 

人は、

他者の価値観を押しつけられることが最も苦しく、

自分の価値観を引きだしてもらい、

理解し応援してもらえることで、とてつもない力が

湧くからです。

 

とすれば、コミュニケーションにおいて、

相手を苦しめる汚れた水とは、

価値観を押し付け相手の力を奪うメッセージであり、

相手に元気と勇気をもたらす澄んだ水とは、

価値観を引き出し相手の力を大きくするメッセージのことだと

言うことができます。

 

実際、わたしたちも、

「何でも言ってみて。できる限り応援するよ」

と言われれば、

これまでにない力を発揮することもできるようになり、

応援してくれた人を自分も応援しようと

心から思えるようになるのではないでしょうか。

 

世間では、

傾聴力、

質問力、

雑談力、

アサーション、

コーチング、

アンガーマネジメント、

レジリエンス、

交流分析

……などなど、

さまざまなコミュニケーション技法が紹介され

学ばれていますが、

 

そんなテクニックがなくとも、

 

周囲の人に、つねに、

「何でも言ってみて。

できるできないは後で決めればいいんだから」

と、つねに言って回っているだけで、

充分、勇気と元気を与えることができ、

同時に周囲から最も大きな理解と応援を得られる存在に

なることでしょう。

 

■みなさんの現場の職員の方々が、

つねに、

お互いに、

「何でも言ってみて。

できるできないは後で」

と言い合っていたら、

コミュニケーションのとりこぼしは、

まず生じないことでしょう。

 

また、みなさんが指示・命令をしなくても、

職員が互いに助け合い、

自分たちの信じる通りに話し合い、行動し、

進化し続ける現場となることでしょう。

 

つまり、自律進化組織となってゆきます。

 

逆に、

「何でも言ってみて。

できるできないは後で」

と、言い合えていない現場からは、

論理必然的に、自律進化は生まれません。

 

「本当はこうしたい」

と話せない現場では、

新しい提案も実践もできないため、

進化することができないからです。

 

ただし、現場の職員の方々に、

「明日から、お互いに、

『何でも言ってみて。できるできないは後で』

と言い合いなさい」

と指示しても、

そんな行動が始まることもなければ、

風土が変わるものではありません。

 

そのように言い合える関係性を創るための方法、

コミュニケーション・モデルが必要です。

 

そのための、

シンプルで、

誰でもできる、

システマチックな方法が

『HIT-Bit』

です。