■感情というと
「わくわくする」「がっかりした」なども
感情だと思う人がいると思うので、
「感情エネルギー」
ということにしましょう。
感情がエネルギー?と思うでしょうか?
「ひっこみがつかない」とか
「振り上げた拳の下ろしどころがない」とかいうのも、
感情が物理エネルギーと同じ性質を持っていることの現れでしょう。
たとえば、
20トントラックが、時速120キロメートルで疾走していたら、
それはとてつもなく大きなエネルギーが働いていると言えるでしょう。
このトラックをもし一瞬で停めようとすれば、
高速道路の橋脚にでも激突するしかないのではないでしょうか。
そうなれば、
周囲が震えるような大音響が轟き、
周辺を揺るがす地響きが起こり、
激突の衝撃でさまざまな部品が四方に飛び散って、
時には、通りすがりの無関係な人に怪我をさせてしまうこともあるでしょう。
そして、損壊のひどい場合には、
二度とクルマとして機能しないほどに大破することもあります。
したがって、
どんなに急いでいても、安全に停止しようとすれば、
何度にも分けてブレーキを踏んで時間をかけて停めるか、
右に左にハンドルを切ってエネルギーを分散して徐々に速度を落とすより
他ありません。
大きなエネルギーを帯びているものを停めるには、
このように、
そのエネルギーを何らかの形で発散する、ということなのです。
エネルギー保存の法則といって、
エネルギーは無くなるのではなく、
形を変えるだけなのです。
■さて、これを感情に置き換えてみるとこうなります。
Aさん(女性)のことを、Bくん(男性)が
好きで好きで仕方なく、
「Aさんのためなら死ねる!」
というくらい、命がけの真剣さで好きだったとしましょう。
(きみのためなら死ねる!って、昭和過ぎる…)
これは、とてつもなく大きなエネルギーです。
ところが、Aさんにはまったく応じる気がなく、
「早く断りたい」
と思って、初めてかかってきた電話で
「わたし、まったく考える気はないので」
と言い放ち、ガチャンと切ったら、どうなるでしょうか。
「そうか、わかった」
とならないのが感情です。
Bくんは、
周囲が驚くような大声でわめき、
周辺を揺るがすほどに悶絶して大暴れしたり、
周りの環境を壊したり手当たり次第に物を投げるなどして
時には、無関係な人にひどい言葉を投げつけて傷つけてしまうこともあるでしょう。
そして、ひどい場合には、
二度と正常な判断ができなくなるほどに心を病んでしまうこともあります。
したがって、
どんなに断りたいと思っていても、安全に収拾しようとすれば、
何度にも分けて断る態度を示すなどして時間をかけて断るか、
他の事柄に関心を向けさせるなどして、徐々に自分への関心を減退させるより
他ありません。
■このように、
真剣な人、深刻な人は、
非常に大きな感情エネルギーを帯びていることを知っておきましょう。
そのエネルギーに近づくには、
こちらも同等以上のエネルギーを持って臨まなければ、
理解し合うことも、
思う方向へ誘導することも、
まして停めることもできません。
真剣さのエネルギーを持たずに
なまじ近づけば、
怒りをかって傷つけられたり、軽蔑されてしまうだけです。
それは、120キロメートルで疾走する20トントラックに
自転車で近づくようなものです。
弾き飛ばされたり、
巻き込まれて取り返しのつかない大怪我を負ってしまうだけとなることは
想像にやすいでしょう。
■みなさんの目の前の人が、
いま、どんな理屈を述べていようと、
その根底にある感情エネルギーが大きいのか小さいのか、を
感じとろうとすれば、
良い関係性を築くことが可能となります。
逆に、感情エネルギーに配慮せずに、
述べられている理屈に振り回されてしまうと、
なぜか、良い解決に向かわない、ということが起きてしまいます。
コーチングや、
NLP、
アンガーマネジメント、
アサーション、
ファシリテーションなどの
コミュニケーション・テクニックをいくら学んでも、
うまく話を運べない、ということが起きるのは、
それらは表現の方法に過ぎないので、
その根底にある感情エネルギーに配慮した対応ができていない、
ということなのです。
次回は、ビジネスシーンにおける
「感情物理の活かし方」
を具体的にお伝えします。