理念が、現場の具体的な言動になる方法

理念が、現場の具体的な言動になる方法

■昨日、ある病院の看護部長から、
いまの取組について聞かせていただきました。
 
これまでと異なり、
まず、病院の理念を確認し、
それに基づいて看護部の理念が作られ、
そのもとにチームの方針が定められ、
さらにその前提があって職員個人の方向性が決まらなければならないのだ、と。
 
本当にその通りですね。
 
ただ、
「難しいのは、病院の理念を、現場の具体的な行動に下ろすことなのです」
とも。
 
■わたしが勤務してきた多くの企業においても、
会社の理念は
「社会貢献」
であるにも関わらず、
現場に降りてきた時には、その社会貢献を実現するために、
社員一人一人には、
「販売数を昨年対比10%アップする」
「そのために集客数を同20%アップする」
「そのために外交訪問数を30%増やす」
といった、
単なる数値目標になってしまっている、ということが起きていました。
 
社員にとっては、
「数値目標」
だけが至上命題となる以上、
「社会貢献しよう」
と呼びかけられているとは、微塵も感じられません。
 
そもそも、このように理念を、単なる数値目標にしてしまっては、
理念を定めている意味はないでしょう。
 
■もし、
「社会貢献」
を現場の職員の価値観になるようにして、
現場の日常の言動となるようにするためには、
どうすれば良いでしょうか?
 
現場の言動にならない最大の原因は、
職員にとって、
「具体的に、どのような言動が、理念に適っているのかが、わからない」
ということです。
 
たとえば、患者さんと話をするときの、立ち居振る舞いは、
「これで良かったのか?」
 
あるいは、患者さんからの電話に応じた時の態度は、
「あれで良かったのか?」
 
その確認を、現場では誰もできていません。
 
上司に聞いても、明確な答えが返ってきません。
 
仮に、理念を定めた役員に聞いても、答えは一様ではありません。
 
理念は定められているものの、誰も
「具体的に、どのような言動が、理念に適っているのかが、わからない」

……これでは、

まもなく職員の間から、理念は忘れ去られてしまうのは当然です。
 
だからと言って、上層部から
「理念とは、たとえば、こんな時に、こんな言動をすることだ」
と具体例を示してしまえば。
現場は
「それをやればよいのか」
「それをしなければいけないのか」
と限定的に理解してしまう恐れがあります。
 
中には、
「自分の部署では、そんな状況はない。
自分たちがどうすれば良いのか教えて欲しい」
と言い出す職員もあります。
 
理念をきちんと理解できていない職員からは、
「どんな言動なのかを決めて欲しい」
と、言動のルールを求める声が上がってくるという、
皮肉な現象が生まれてしまうのです。
 
■では、どうすればよいのか?
 
この点においても、
現場職員一人ひとりの「OUT-Put」がカギとなります。
 
すなわち、現場職員が、
「今日、こんな対応をした」
「今日、こんな場面があった」
と、理念を実現したのではないかと思われる事例を、
上司に、日々報告するようにします。
 
そして、上司や上層部が、
「たしかに、これこそ理念の体現だ」
と考える事例について、
「このような理念を体現した事例がありました」
と、組織全体に発信して情報共有するようにします。
 
そうした事例が蓄積してゆくことによって、
「理念を実践したらこうなる」
という事例集が厚みを増してゆくことで、
現場職員にとっても、具体的に理念に適う言動がイメージできるようになるのです。
 
■このようなことが可能になるためには、
現場職員が、理念を実現したのではないかと思われる事例を、
上司に、日々話してくれるようになる組織風土が必要となります。
 
報告のみならず、
意見、感想、価値観を
日々、当たり前に話し合える関係性を築かれていなければなりません。
 
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