ぼくでもできた! HIT-Bit

ぼくでもできた! HIT-Bit

■このブログでいつも登場する

自律進化組織づくりの

「HIT-Bit」

とかいうやつ、

本当に簡単にできるのか?

 

……と思っておられる方も少なくないことでしょう。

 

本当は、テクニックが必要なんじゃないの?

 

誰がやっても、効果があがるのか?

 

と、訊かれたことも、確かに何度もあります。

 

しかし、ご安心ください。

 

HIT-Bitは、

アメリカの大手コンサルタント会社がつくった方法でもなければ、有名大学の心理学教授が研究の末、編み出した手法でもありませんから。

 

…と聞いたら、余計心配になるじゃないか!

と思うでしょうか?

 

要するに、

まったく専門的な技術や知識を要することなく、

もちろん難解な理論も、

高額なシステムも、

有能なナビゲーターも必要とせず、

素朴な現場の日常の中から生まれた方法だということ、

 

つまり、

誰にでもできる簡単でシンプルな方法だということです。

 

そもそも、

簡単でなければ、続けられないので、

組織の体質を変えることはできませんし、

シンプルでなければ、

多くの現場で実践することはできません。

 

つまり、

簡単でない施策や、シンプルでない施策を

勧めてくるコンサルタントは、

本当に組織を変える方法を知らないということです。

 

というわけで、今回は、

「HIT-Bit」

の誕生秘話(どこでもお話ししているので、聞いた人は誰でも知っている秘話ですが……笑。静かなブームっていうのもありますが、どっちやねんという気持ちでいっぱいです。)を

お話しましょう。

 

■わたしが、

すでに病院などからの依頼で、

接遇研修を務めさせていただくようになって

しばらくした頃のことです。

 

以前の取引先の方から

「三好、現場で働く気はないか?」

とお誘いを受けたのでした。

 

「いやー、つるはしとか使ったことありませんしー」

「現場といっても、医療現場だぞ」

「いつからですか?」

 

こうして、

企業健診の受診者を対象とした健診センターの

事務課長という立場で勤務することになりました。

 

医療現場での勤務経験もなければ、

健診センターの内情もわかっていない状態でしたが、

医療現場の管理業務こそ、

医療経営コンサルティングの基本でもあるはず、と思い、

務めさせていただくことにしたのでした。

 

その健診センターは、

開設以来10年弱を経過していたものの、

待遇が良く、

事務職員はほとんど退職しない傾向がありました。

 

そのため、事務職員は、

7〜8年目の方を筆頭に、ベテランの女性職員ばかりでした。

 

そんな職員たちの間には、

「わたしたちは、充分しっかりとやっている」

「せっかく自分たちで楽しくやっているのに」

といった想いがあったようで、

現場から、

「なぜ、そんなわたしたちの上に管理職が来るのか?」

と、不満や不信が生まれたのは、むしろ自然なことだったのでした。

 

彼女たちは、言葉にこそしませんでしたが、

「こんな課長などいなくても、充分きちんとやっていることを示してやれ」

と言わんばかりで、

まったくと言って良いほど、すすんで業務の内容について教えてくれるということはありませんでした。

 

できるだけ、仕事を見て憶えようと思いましたが、

業務を完全に習得した職員たちが、

無言で判断したり

あうんの呼吸で協力し合っていることについては、

どんなに観察してもその背景は分かるものではなく、

 

やむなく、わたしは、

消耗品の補充や、更衣室の清掃など、

見れば分かることを探してやるなどして、

無理矢理、下働きで現場に関与していったのです。

 

■すると、

ここまででみなさんにもお察しのことと思いますが、

「現場職員の間には、

自分たちの想いや働きぶりが上層部に理解されていないことへの

不満が鬱積している」

という状況が、わたしにもわかってきたのです。

 

日々、さまざまに話し合ったり、改善したりしているのに、

また聞けばいろいろと困った事態にも直面する時も

自分たちで乗り越えているにも関わらず、

そうした苦労が

「まったく上層部には判ってもらえていない」

という状況だったのです。

 

一方、上層部は上層部で、

「新たなことを現場にさせようとしても、

できない理由ばかりを言って来る」

「現場はこっちの状況をまったく解ろうとしない」

と不満を抱えていました。

 

なので、現場に話を通さなければならないことについても、

腫れ物に触るように、

言うべきことを言えずにいたのでした。

 

仲を直せない父と娘のようなギクシャクした関係は、

滑稽にさえ感じられます。

 

上層部と現場の仲が直れば、

「どんなに健全で報われる職場となることか!」

と思いました。

 

その時、わたしは、

「考えてみれば、それこそが自分の役割だ」

と感じたのです。

 

■そして、ある日、

終礼が行われた際、その最後に、わたしは

事務部門の職員にこう提案したのです。

 

「ぼくには、みんなの想いや仕事ぶりが、

上層部に充分伝わっていないように感じる」

 

すると、

「いまさら、何を言い出すのか?」

という視線が返ってきました。

 

「なので、みんな、ここで働いていて良かった!と

なかなか思えないんじゃないかな」

 

すると

「わたしたち、そんなこと、期待してません。

仕事を無事に終えて早く帰れることが大事なだけなんですけど」

という視線。

 

「これでは、報われないよね?」

 

すると

「あんたに何ができるって言うの?」

という視線。

 

「みんな、日々、いろんな工夫や改善をしたり、

大変な中、頑張ってくれているのだから、

それがちゃんと上層部に判ってもらえなければいけないと思う。

なので、

これからは、ぼくが、きちんと伝えたいと思う。

でも、何の武器もなければ戦えない。

そこで、日々、みんながどんな想いでいるのか、どんな苦労をしたのか、どんな改善をしてくれているのか、情報をもらえないだろうか?」

と。

 

わたしはさらに、続けました。

 

「みんなが終礼をする日には、終礼の後に、

終礼がない日でも、夕方少しだけ集まって、

『今日はこれが気になった』

『今日は、あれが大変だった』

『今日は、ここを改善しておきました』

など、どんなことでも良いので、

一言づつ聞かせてもらいたい」

 

この「一日一言」の提案を聞いて、

事務職員は、

みな、ますます懐疑的な表情をしていました。

 

「それ強制ですか?」

という質問はあったものの、

「ダメ絶対」

といった拒絶反応まではなかったので、

翌日から、「一日一言」を始めました。

 

想像してはいましたが、

断固、参加しない職員も、

参加しても発言することを頑なに拒む職員もいました。

 

しかし、

発言内容を一つ一つノートに書いていたので、

現場の様子が、手に取るようにわかる情報が、

日々、手元に残りました。

 

おかげで、

上司から呼ばれた時には

必ずそのノートを手にして応じたので、

現場の様子や、職員の心情などを

逐一、克明に具体的な報告をすることができたのです。

 

上層部に現場の活躍ぶりや苦労が伝わり、

理解を得られるようになると、

事務職員の反応も徐々に変わってきました。

 

事務職員たちも、徐々に

この「一日一言」は悪くない、という雰囲気になってきたのです。

 

「今日は◯◯ちゃんは、歯医者なので、最初に発言して、すぐ退出しても良いですか?」

と、何とかして参加し、発言だけでもして帰ろうとするようにさえなりました。

 

「受診者のため、もっとこうしてあげたほうが親切ではないか」

と、素晴らしい提案がありました。

 

指摘された不親切な状態は

以前からあったはずでしたが、

これまで改善されずに来たのは、

単に、取り立てて話し合う機会がなかったからでしょう。

 

他部署の協力を得なければ改善できないことでしたが、

「受診者のために、より親切に」

と考えてくれた事務職員の気持ちが嬉しかったので、

「では、一緒にその部署に相談に行こう」

と言うと、本人は快諾してくれ、

二人で交渉した結果、先方の了承を得ることができました。

 

さっそく、

翌日から、職員の提案が実践されるようになったのです。

 

■この「一人一言」を進める上で、

わたしには

まったく技術も知識も必要ではありませんでした。

 

わたしは、それまで、

コーチングや、ファシリテーション、アサーションを

学んだこともありませんでしたから、

そもそも技術も知識もなかったのです(今もですが…)。

 

素朴に、

「みんなの想いや考えを知りたい。

それを聞き、応援できることをしたい」

と思っていただけです。

 

なので、

自分が予期しなかった問題提起や改善提案が上がった時には、

素直に

「よく気づいたね!細やかだなぁ」

「すごい!なぜ、そんなことを思いついちゃうの?」

「あれ、みんながやってくれたの?ありがとう!」

「そんなことを始めていたの?誇りに思うよ」

「素晴らしい!いいことを言うね〜」

と、感心し、感謝、敬意、驚き、喜び、賛同、承認の気持ちを

ありのままに現していただけでした。

 

しかし、

それを続けていたわずか1ヶ月の間に、

わたしも思いもかけなかったような問題提起や

想像もしなかった改善提案が上がり、

事務職員たちが働いてきた6〜7年の間に、

ずっと解消されずにいた大小さまざまなことが、

次々に、改善されるようになったのでした。

 

しかも、わたしからの指摘や指示・命令ではなく、

すべて、職員からの意見によってです。

 

まさに「自律進化」です。

 

コミュニケーションの技術も特に無ければ、

まして、現場の担当業務についての知識も無い…、

そんなわたしでもできたのです。

 

以上が、「HIT-Bit」の原型が生まれた経緯です。

 

■始めることは簡単ですが、

もし始めた場合には、ぜひ、

①永続して組織体質にすること

②効果測定をして向上してゆくこと

をお勧めしています。

 

効果測定しなければ、

「もっとよくしてゆこう」

と取組を永続することができず、

組織体質にすることはできないからです。

 

これでは、一時的なイベントになり、

時間と労力の無駄となってしまいます。

 

これら

①永続して組織体質にすること

②効果測定をして向上してゆくこと

については、また別の機会でご紹介したいと思います。