■すべての職員が、自分の仕事を
「より良くする」
ことを当り前に考えることができれば、
その組織はとてつもなく優れた組織になります。
ところが、世の中の多くの組織はその逆で、
職員が、自分の仕事を、
「今日の仕事をこなすこと」
と考えているので、なかなか現場主導で進歩する、ということが起こりません。
この職員の履き違えは、
実は、致命的な組織の違いをもたらします。
というのも、
「より良くするのが仕事」
という現場では、
つねに、より良くしたいので、変化することが当り前となります。
その結果、
課題や違和感について話すことは、極めて価値があることとなります。
一方、
「今日の仕事をこなすこと」
という現場では、
今日の仕事以外のことは、その邪魔以外のなにものでもないので、できるだけ変化を拒むようになります。
その結果、
課題や違和感について話すことが負担でしかなく、まして成長することを拒絶することとなります。
■そこで、本題です。
職員一人ひとりが、
「もっとより良くしたい」
と思うためには、どうすればよいでしょうか?
その一つには、職員が、自分の職業について
「哲学」
を持つこと、も挙げられます。
たとえば、みなさんの現場や、
近隣の医療機関の外来で、
フロア・マネージャーを配置しているところはあるでしょうか?
「医療コンシェルジュ」
と称して、ホテルのような制服で、患者対応をしているところも、なかにはあります。
しかし、その方々は、どんな職業哲学を持っているでしょうか?
■もし、患者さんの荷物を持って運んだり、
ドアの開閉を手伝ったり、
エレベータの前まで案内したり、
ということであれば、
そんなコンシェルジュを置くことはかえって危険です。
というのも、
コンシェルジュを置くことによって、
医事課職員が
「患者対応は、コンシェルジュの仕事」
「原則として、私たちの仕事ではない」
と考えてしまいがちだからです。
せっかく人件費を割いてコンシェルジュを置いても、
窓口事務と患者対応を、
医事課とコンシェルジュに分割しただけ、という
不毛な結果になりかねません。
また、荷物を運んだりドアを開閉するだけなら、
コンシェルジュでもありません。
病院によっては、ボランティアの方々がしてくださっている内容ではないでしょうか。
■そこで、改めて問われることになります。
フロア・マネージャーとは何をするための存在なのか?
荷物やドアももちろんしますが、
本当に重要なのは、
「患者さんのパーソナルな情報を把握できて、
初めて、医療現場で求められるフロア・マネージャーだ」
と言えるということではないでしょうか。
フロア・マネージャーなら、
患者さんのうち、
(全部とは言いませんが)
100人くらいは、顔と名前を覚えておきたいところではないでしょうか?
そして、
「いつも息子さんのクルマで来られる患者さんが、
今日はお一人でバスに乗って来られた」
ということを外来でキャッチして、
患者さんが受診する診療科のクラークに、
「今日は、息子さんが来られていないので、
次の場所まで、アテンドして差し上げられないか?」
と連絡する、
・・・そうしたことができて、医療現場のフロア・マネージャーが配置されている意味があるでしょう。
そうしたことができて、初めて
「医療コンシェルジュ」
と名乗っても恥ずかしくないでしょう。
■「100人も覚えられるのか?」
という人もいます。
しかし、一流ホテルのドアマンなら、
1000人のお客さんの顔と名前を覚えている、とも言われます。<
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また、
「そこまで覚えている必要があるのか?」
という人もいます。
しかし、考えてみれば、
ホテルに来るお客さんよりも、
何倍も不安な気持ちを抱えて来るのが患者さんであり、
何倍も、
「わたしにきちんと向き合ってもらえるのか?」
と心細い思いでいるのが患者さんです。
ホテルなら、そこまで向き合わなくても事故になりませんが、
病院では、
きちんと向き合って、
患者さんに心を開き、すべて打ち明けてもらえなければ、
事故にもつながります。
そう考えれば、
ホテルのドアマンよりも、
医療現場のフロア・マネージャーの方が、
何倍も来院者の顔と名前を覚えておく意味が大きいはずです。
病院のフロアマネージャーで、
そんなプライドを持って働いている人がいるでしょうか?
まさか、
「一流ホテルには、一泊何十万、披露宴何千万の客が来るから」
覚えるべきだが、それと比べて病院では、
「お支払いいただくお金が少ないから」
そこまでやるような崇高な仕事ではない、
と考えるでしょうか?
このプライドの差が、
「職業哲学」
の差にほかなりません。
医療従事者の方々は、
高度に専門的で、素晴らしいお仕事をされているのですから、
医療現場だけにとどまらず、
社会に対して胸を張れる職業哲学を持つべきでしょう。
そして、職業哲学こそが、
「もっと良くしたい」
というプロフェッショナルとしての意識をさらに高くするのではないでしょうか?
■みなさんの現場では、
各職種の方々が、各部署において、
職業哲学について、話し合う機会をもっているでしょうか?
それには、
職員同士が価値観を出し合うことが当り前でなければなりません。
しかし、そうした機会が、自然発生することはありません。
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