「原則、相対評価」を卒業する

「原則、相対評価」を卒業する

■医療現場においては、

人事評価をしているところもまだまだ少ないのが実情です。

 

評価がなければ頑張っている人が報われません。

 

頑張っている人が報われない現場では、

現場っている人ほど馬鹿らしくなって辞めてしまい、

頑張っていない人ばかりが居心地が良いので残る、という

ことになるのは、

明らかでしょう。

 

年功に応じて役職に任じられる人が多いので、

働きと報酬がバランスしていない、ということも

珍しくありません。

 

これこそ、組織腐敗の原因の、代表例の一つです。

 

したがって、

一日も早く人事評価を導入する必要があることは、

火を見るより明らかでしょう。

 

■そこで、注意しておかなければならないのが、

世の中で一般的に行なわれている評価制度に

惑わされない、ということです。

 

というのも、

そもそも、我が国において一般的に行われているのは、

「相対評価」

だからです。

 

相対評価をするのは、昭和の発想にほかなりません。

 

昭和の時代には、

世の中が経済成長期にあり、

企業も毎年ベースアップしていました。

 

なので、

社員を厳密に評価したり

差をつける必要がありませんでしたから、

人事評価も真剣にされていませんでした。

 

「みんなそこそこに頑張っている」

「強いて言えば、やや差がある」

という程度の評価しかしてなかったのです。

 

人事評価といえば相対評価でした。

 

■たとえば、

「組織には、2:6:2の法則がある」

という話も、まことしやかに信じられてきました。

 

職員全体を10とすれば、

頑張る職員が2、頑張らない職員が2、どちらでもない職員が6

という割合になる、という説です。

 

しかし、経営者が、

組織内の序列を見ていて良いはずはありません。

 

なぜなら、本当の敵は外にいるのですから。

 

つまり、

経営者が相対評価していることは、

職員に対しては、

「競争相手は同僚だよ」

というメッセージになっている、ということです。

 

■たとえば、

みなさんも、

戦国武将だった頃、

合戦の際には、

「家来の誰が誰より活躍したか?」

は後の話だったはずです。

 

そんなことよりも、

いま目の前の敵との戦いに死力を尽くさなければ

死んでしまいます。

 

家来同士を比較することよりも、

「どれだけ敵を倒したか?」

が問題だったことでしょう。

 

たくさん倒さなければ、

たくさんの所領が手に入りません。

 

誰かより優れていても、

全体が負ければ、

所領も得られないどころか、命の保証もありません。

 

■つまり、

真剣勝負の場面では、

組織内の職員間で相対評価している場合じゃない、

ということです。

 

それは、

戦国時代も、

いまの医療業界も変わりません。

 

「2:6:2になっちゃうんだよね」

などと、

経営者が内部ばかりを見て、

外部環境に負けている場合ではありません。

 

むしろ、

「外の敵を倒すためには、

いかにして最強部隊をつくるか?」

を考えることに全力を注いで欲しいものです。

 

「どうすれば、8:2:0にするか?」

という発想でなければなりません。

 

■そもそも、常に進化している組織にすることです。

 

進化する組織になるにあたって、

もちろん比較することは必要ですが、

その対象は、

以前の自分の組織でなければなりません。

 

すなわち

「絶対評価」

をすることから始める発想が必要ということになります。

 

職員についても、

まず絶対評価をすることです。

 

なお、

それを人事評価に活かす時には、

報酬の原資は有限なので、

職員間の仕事ぶりを比較し、相対評価することが

必要になるだけです。

 

■世間一般では、

「原則として相対評価」

が行なわれていますが、

それは昭和の時代の悪しき名残りと言えるでしょう。

 

そして、これからは、

「原則として絶対評価」

とすることをお勧めします。

 

それはつまり、

経営陣も、

「誰が誰より貢献したか?」

という相対評価の発想ではなく、

 

「どれだけ組織を強化できたか?」

「どれだけ成果を出せたか?」

という絶対評価の発想が基本、ということです。

 

まず経営者が

「原則、相対評価」

の発想から卒業できていなければ、

職員はまして

「相対評価」

の発想から脱却できません。

 

すると、

もし組織全体で赤字となったときにも、

職員は、

「あの人より自分の方が成果をあげたのだから評価されて当然」

と主張することになるので、

経営者が無理をして報酬を支給したとしても、

感謝することもないでしょう。