負責病の事例(14) 「モチベーションへの気遣い」

負責病の事例(14) 「モチベーションへの気遣い」

■ある法人で、あるプロジェクトが立ち上がることになりました。

 

そのために、理事は、

「こういう業務を果たしてくれる人が必要。

誰と誰と・・・に、この役割を担ってもらいたい。

 

このチームを編成するにあたり、

打ち合わせをするには、

場所は?

タイミングは?

内容は?」

と、その理事が具体的に考えを巡らせていました。

 

さらには

「彼女はこの件について慣れていないから、

彼と組ませた方が良いかもしれない。

 

こちらの彼はこういう人柄だから、

あのメンバーとうまくやれるだろうか?

 

その彼女とあのメンバーは

相性が良くないので仲良くできかもしれない」

……などなど、細やかな配慮をしている様子でした。

 

しかし、実は、

これはかなり「過保護」と言わざるを得ないことは、

みなさんからも明らかでしょう。

 

ではなぜ、

過保護な気遣いをしてしまうのか?

その原因はシンプルです。

 

メンバーとなる人たちから、

「ぜひやりたい!」

というコミットメントを取り付けていないから、

に他なりません。

 

コミットしていない人を集めて、

業務を担ってもらうのですから、

あれこれと気遣いをしなければならなくなってしまうというわけです。

 

そして、メンバーも、

気遣ってもらっていることに感謝することもありません。

 

ひどい場合には、

「やってあげている」

と履き違えているメンバーすらいることがあります。

 

しかし、本来、

みなさんがプロジェクトを立ち上げるのは、

メンバーを含めた組織全体のためになるからこそであって、

職員が

「頼まれたからやってあげる」

というようなものではないはずです。

 

本来は、

「大事ですね!ぜひやりましょう!」

と、当事者意識をもってもらわなければなりません。

 

■では、どうすれば良いのか?

 

経営陣は、

「こんなプロジェクトで、こんな役割を果たしてもらいたい」

と手段の話をしてはなりません。

 

まず

「こんな展開をして、こんな病院にしてゆきたい」

とゴールを明示することです。

 

そして、部下職員が

「それは大事ですね!」

と課題にコミットメントしてから、

 

次に、初めて

「ついては、こういう役割を誰かに果たしてもらいたい。

これができたら、すごいことだよね。

きみはチャレンジできる?

チャレンジできる人にチャレンジしてほしいんだけどな」

というスタンスで話すことです。

 

指示でも命令でも、

伝達でも申し入れでもなく、

「ゴール像の魅力について語り合う」

といった方が良いかもしれません。

 

しかも

「熱く語り合う」

ことです。

 

その上で、

「ぜひやりたい!」

とみずから手を挙げた人に、

「では、頼むよ」

「チャンスを与える」

のが良いのです。

 

■このようにコミットメントを取り付ければ

その後は、自律的に展開して行きます。

 

一方、コミットメントを取り付けずに

巻き込もうとすることが多いために、

変に部下職員に気を遣わなければならなくなるこの傾向こそ、

 

部下から頼まれてもいないのに

上司がみずから責任を負ってしまう

「負責病」

そのものです。

 

■職員研修についても、

経営陣が、

「こんなことをしてくれる職員に育てたい」

「ついては、こんな研修を受けさせよう」

と、職員のコミットメントを取り付けていないのに

「なんとか変えよう」

とする傾向があります。

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そのため、

「少しでも不満が出ない研修にしなければならない」

というおかしな責任を負ってしまうのです。

 

「こんな組織にしてゆかなければならない。

力を貸してくれる人には、任せたい」

とだけアナウンスすれば良いのです。

 

そのゴール像にコミットした職員は、

自分から

「そのためには、こんなことを学ばなければならない。

そのためには、もっとコミットする人を増やしたい。

そのメンバーで、打ち合わせたい。

そのためには場所と時間を決めたい。

そのためには・・・」

と勝手に展開を設計し始めるのです。

 

■取組がはじまってからの

モチベーションに対する気遣いは、不要です。

 

そもそも、

最初のコミットが甘かったり、

指示や命令によって役割を割り当てたりすると、

取組が始まってから、

モチベーションが上がらなかったり続かなかったりするので、

どうしても、

命じたはずの経営陣や管理職の方が

部下職員に気をつかうというおかしなことに陥ってしまうのです。

 

それが負責病です。

 

何より重要なのは、

取組が始まる前に、

コミットメントを取り付けておくことです。

 

そのコミットメントを取り付けることができていれば、

取組が始まってから、

モチベーションを心配する必要はありません。

 

コミットメントがある以上、

そのプロジェクトを成功に導けるかどうかの責任は、

本人たちが負うからです。