■経営者の多くは、
「スタッフにも、経営的な発想で考える視点を持ってもらいたい」
と考えていることでしょう。
では、そのためには、どんな施策を講じれば良いでしょうか?
- コンサルタントに依頼して、経営ゲームを研修に取り入れる
- ドラッカーの経営理論を学ばせる
- 財務分析を勉強させる
- 財務諸表を読ませる
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■研修会社やコンサルタント会社に尋ねると、
昨今は、社員研修のために開発された
- 財務分析ゲーム
- 経営ゲーム
- マーケット調査ゲーム
などなどがあり、
人材育成のための仮想体験ゲームがたくさんあります。
しかし、意味があるのでしょうか?
みなさんもご想像の通り、ゲームは、
都合の良いハードルが用意され、
都合の良い解決策が用意され、
うまくいったりいかなかったりする、
やはり、
所詮は、シミュレーション・ゲームでしかありません。
これで、実践力が身につくことがないのは明らかでしょう。
恋愛ゲームにしろ、株式投資ゲームにしろ、
現実社会で、理屈通りにゆかないものを、
ゲームで練習できるはずがありません。
もちろん、経営も同じです。
■では、どうすれば良いか?
一番の願いは、
「どこよりも自分の組織の経営について真剣に考えて欲しい」
ということなのですから、
自社の財務分析をしてもらうことです。
そのためには、
日商簿記4級くらいは必須ですが、
3ヶ月もあれば取得できるでしょう。
初めて見る財務諸表が自分の組織のものであっても、
それを自分なりに読み、
分析すれば、
それだけで、関心を持てるようになるはずです。
やがて、
「自分の組織の経営状況がが良いのか、悪いのか?」
が気になれば、
一般的な指標を自分で調べて比較するでしょう。
そして、
課題や改善方法が見えてきます。
その課題や改善方法を、
スタッフどうしで互いにぶつけ合えば良いのです。
■それが一通り済んだ時には、
スタッフ一人ひとりに、
財務の目、
分析の目、
会社を見る目、
現状への理解が備わっているはずです。
仮想体験ゲームをして、
さながら大人用の人生ゲームに興じてみたところで、
現場力・実践力は一向に身につきませんが、
現実の、自分の属する組織の財務諸表を読むようになれば、
おのずと
活きた学びができ、
現場に寄与する問題提起や改善提案ができるようになります。
最短最速で、
現場実務に活きる学びが得られるのです。
株式投資を覚えたいなら、机上の勉強よりも、まず
「1単位を買うことだ」
とも言われます。
■世間では、多くの組織が、
なぜ、それをせずに「ごっこ」に興じているのでしょうか?
それは、
研修会社やコンサルタント会社が、
「仮想体験ゲーム」
という商品を販売したいから、にほかなりません。
受講者にゲームを体験させれば、
既製品の世界の中で解説しておけば、
「経営的視点を教えた」
ことにできるからです。
ゲームはそれなりに楽しいため、、
受講者からの評判は悪くないので、
研修担当者も気軽に選択しがちです。
しかし、受講者が
「まあまあ面白かった」
「わかった気がする」
と感じることはあっても、本当の経営的発想も視点も身に付きません。
つまり、組織にとっては、
時間と費用と労力の無駄以外の何ものでもないのです。
また、
「チームワークを身に付けさせるため」
という名目で、
チーム対抗で、
作業の正確さを競うゲームワークをさせる研修会社もあります。
もし、そのゲームワークでチームワークが身につくならば、
プロのラグビーチームも、
プロの野球チームも、
プロのサッカーチームも、
そのゲームワークをしているはずです。
■組織運営の本質は、
「できるだけ、現場を学ぶこと」
に尽きます。
実際は、どうでしょうか?
ラグビーチームはラグビーをする中で、
野球チームは野球をする中で、
サッカーチームはサッカーをする中で、
最適なチームワークを身につけているのではないでしょうか。
企業や病院などの組織も同じです。
企業は企業の活動の中で、
病院は病院の運営の中で、
学ぶことが、
最も現場に適した技能を身につけることになるのです。
■自律進化組織研究所でも、
研修を引き受けますが、
その現場に準拠した内容、
その現場を踏まえた構成にしています。
▶︎たとえば、
昨年のある病院の接遇研修では、
「病院全体での協力によって、より良い接遇をしたい」
との要望がありました。
そこで、
その病院の訪問看護ステーションの管理職職員から、
訪問事業の実態や患者さんからの感謝の言葉、
地域連携の難しさなどを語ってもらい、
訪問事業の意義を病院全体で共有しました。
▶︎また、たとえば、他の病院では、
主任職の役割を学ぶ研修をしたいという依頼を受けました。
そこで、
まさに病院それぞれに異なるため、
その病院や管理職にとっての「期待する主任職」を事前に挙げてもらい、
一方、主任職全員の「自覚する主任職」を挙げてもらい、
それらをすり合わせて、
現実的な主任職像を明確にする研修を実施しました。
▶︎さらに、ある病院では、
職員発信の自主的な取組がいくつかあるものの、
「職員に今以上に、自主的な取組をする意識を高めて欲しい」
という目的の研修依頼がありました。
そこで、研修当日には、
そのいくつかの取組の担当者に登壇してもらい、
現状や意義、問題点ややりがいなどを
事例を挙げて説明してもらうことで、
臨場感のある投げかけをしてもらう研修にしました。
このように、現場発信型の研修にした方が、
所詮は部外者でしかない責任のない研修講師があれこれ話すより、
はるかにリアリティがあり、
自分の組織の素晴らしさや課題を肌で感じられる内容となるからです。
■さて、みなさんの現場ではどうでしょうか?
もし、スタッフにも、
「経営的な発想で考える視点を持ってもらいたい」
と考えているならば、
自分の組織の経営をまず見てもらうようにすることではないでしょうか。
みなさんの組織において、
「うちは全員、帳簿くらい読めますよ」
とサラリと言えるリーダーが、何人いますか?