■研修も会議も、
「みんな聞いているのか聞いていないのかわからない」
「意見を言わない」
「そのため、リーダーが一方的に話をして終わる」
・・・ということを聞くことがあります。
言うまでもありませんが、
理想は、
みんながどんどん発言し、
意見を出し合い、
議論をして、
リーダーがいなくても話が進み、
研修や会議の後は、
みんながどんどん行動してゆく状態でしょう。
なぜそうならないのか?
それは、
人間の心理構造から考えることで、
非常に明らかになります。
■以前からお伝えしているように、
そもそも人間は、
他者からの情報や価値観をIN-Putされることは、
元気を損なう作用があります。
みなさんも、
上司から呼ばれて
自分が関心のないことを一方的に話を聞かされ、
「では、そういうことだから、よろしく頼む」
と話を終えられた時、
心から元気になることはないでしょう。
逆に、
自分の価値観をOUT-Putして承認されることは、
大きな元気を得る作用があります。
たとえば、
自分の考えをどこまでも聞いてもらえて、
「応援するぞ」
と言われれば、
大いに勇気と元気を持つことができるのではないでしょうか。
■したがって、研修でも会議でも、
心が元気になり、
発言が飛び交い、
参加者のその後の行動に確実につながるような活力をもたらす時間にしたいならば、
できる限り、
一人ひとりからOUT-Putを促すことに尽きます。
こう聞くと、
「研修とは学びの場なので、IN-Putが大事なのではないか?」
と思う人もいるかもしれません。
あるいは、
「こちらが考えてもらいたい議題があるから集まるのが会議だ」
と考える人もいるでしょう。
しかし、
人間の心理は理屈とは関係がありません。
「一方的にIN-Putされるのが、嫌なものは嫌」
・・・これはわたしたち自身も同じなのです。
■こうして考えてみると、
冒頭に挙げたような
「みんながどんどん発言し、
意見を出し合い、
議論をして、
リーダーがいなくても話が進み、
研修や会議の後は、
みんながどんどん行動してゆく」
研修や会議のつくり方は明らかでしょう。
すなわち、
研修や会議の時間のうち、
いかにIN-Putの時間を少なくし、
どこまでOUT-Putの時間を確保するか?に
徹すればよい、ということです。
逆に言えば、
IN-Put主体の研修や会議をしているようでは、
組織が元気に動き出し、
パフォーマンスを向上することはできない、
ということがわかるでしょう。
■なお、
「なぜ、IN-Put型の研修や会議が多いのか?」
というと、
昭和の時代のトップ・ダウンの文化が
世の中にも、多くの企業組織にも染み付いているからです。
そんな社会や組織の中で育てられてきた私たちの中にも
脈々と、トップ・ダウンの文化の血が流れています。
そのため、
トップ・ダウン型、IN-Put型の研修や会議にも
それほど大きな違和感を持ちません。
「IN-Put型の研修や会議はやらない方が良い」
というくらいには感じている人もいるかもしれませんが、
正しくは、
「やってはならない」
と考えるべきでしょう。
なぜなら、上述したように、
「そもそも人間は、
他者からの情報や価値観をIN-Putされることは、
元気を損なう作用がある」
通り、副作用しかないからです。
そんな時間なら、できるだけ無くさなければならないのです。
しかし、
世の中の経営者や管理職は、
トップ・ダウンで指示命令した方が楽なので、
なかなかIN-Put型の研修や会議を卒業できません。
大勢を集めて演説を聴かせたり、
スライドを見せたりプリントを配って済むのならば、
やめられないのも無理ないでしょう。
さらに良くないことに、
その部下である社員の側もまた、
トップ・ダウンで指示命令してもらった方が、
考えずに済み、
発言に責任を持つことなく、
周囲の同僚の目を気にする必要もないので
「その方が楽」
とばかりに、
OUT-Putしようとしたがらない傾向があります。
ボトム・アップ型よりは依存的になっていた方が
不満は多々あるものの楽だというわけです。
組織の上方も下方も
IN-Put型の研修や会議に慣れきっており、
トップ・ダウン型の文化に浸かりきったまま
何十年もの歴史を辿ってきているので、
ボトム・アップ型の文化を根付かせることは
すぐにはできないでしょう。
だからこそ、
せめて研修や会議から、
OUT-Put型へと移行されることをお勧めします。
■具体的には、リーダーは、以下を参考にされると良いでしょう。
1.課題を投げかける
できれば事前に課題を伝えておき、
研修・会議の場で各自の意見を聞くことを予告しておきます。
時間の節約にもなると同時に、
参加者に
「OUT-Putするのが当り前だ」
という感覚に慣れてもらうことができます。
2.参加者から上がった意見はつねに承認する
必ずしも賛同しなくても、
意見を発信し自分をOUT-Putしてくれたことに対して、
感謝と敬意を示すという意味です。
しかし、これでは、やはり
肝心な部分でトップ・ダウンの域を出ません。
肝心な部分とは、「議題(何について話すか?)」です。
この状態では、やはり
上司が話してもらいたいと思うことについて話す
お行儀の良いトップ・ダウンだからです。
本来目指しているのは、
議題までも部下たちが上げてくるような元気な組織ではないでしょうか。
そこで、次第に、
3.部下たちから事前に議題を上げてもらうようにする
ということも重要です。
さらに、
4.毎回の研修・会議では、終盤には必ず時間をとり、
「聞きたいこと、言いたいことはないか?」
を一人ひとりに訊く
日本人は自分の発言でみんなの時間を使うことに
抵抗や罪悪感を抱きやすいので、
最初のうちは、
一人ひとりに訊く時期が必要な場合が多いでしょう。
■このようにしていると、
徐々にOUT-Putが増えてきます。
他の委員会や日常の現場でも
会話が増えたり、
これまでにない意見が飛び出すようになります。
研修や会議が
「こんなに変わるものなのか!」
という驚きの声を、
わたしも、多くの現場で聞きます。
これからの時代は、
「参加者がどんどん話し、上司の声は聞こえてこない」
・・・そんなOUT-Put型の研修・会議が
できていなければならないでしょう。
他の組織の、
参加者の声が聞こえてこない、
IN-Put型の研修・会議を
「まだやってるの?」
と言えるくらいに、
ご自身の組織を、
OUT-Putが当り前の組織へと
一日も早く切り替えることをお勧めします。