組織変革についての論説
「ジョン・コッターの変革の8段階」
それが、現実に実践され、効果を生み出すための
ポイントについて、
組織開発の実務の観点からポイントを解説しています。
>>>前回からのつづき
【ステップ2:連帯チーム】
■トップが目的地とおおまかな期限を
自分の中で明確にしたら、
次に必要となるのは、
「実働部隊の編成」
となります。
というのは簡単ですが、その方法が問題です。
というのも、多くの組織が
「やってくれそうな職員に頼む」
「役員で連帯チームを担う」
「一定以上の役職者の中からピックアップ」
といった誤った方法をとっているからです。
勝手に期待する職員に頼んでやってもらったり、
「役員だからやる気があるでしょう?」
と思い込んでやらせるのは失敗です。
せっかくトップが
「何としてもこの変革を実現したい」
とゴールを明確にしても、
実働部隊に、そう思わない者がいると、
組織を動かすという大仕事が進むはずがないからです。
なので、
「本当に変えたい」
という意思があるなら新人でも頼んでやってもらうくらいの
観点が重要です。
中核となるチームは、紛れもなく組織をつくる人たちなので、問題意識があり、
「なんとしても変えてやる」
というコアマインドを持った人間で構成されなければなりません。
ここが一枚岩でなければ、変革施策自体が瓦解してしまいます。
■「関心が高くない人には関与させない」
「当事者意識が希薄な人に意見を聞かない」
は、組織運営の鉄則です。
傍観者に意見を聞いて良いためしがないのですから。
もし、
「本当はそこまでやる気がない」
という人が混じっていると、
打合せの場や施策が動き出してから、
「そこまで必要ですか?」
「しばらくうちは難しいです」
など、連帯チームの中にネガティブな意見が
出てきてしまいます。
反対に、
「とにかくやりましょう!どうしても現場がやれないと言ったら、われわれが飛び込んでいってどこまでできるか推進してきます」
という意気込みでなければなりません。
■つまり、
「コア・メンバー」
ではなく、
「コア・マインド・メンバー」
であることです。
くれぐれも、役職や委員などの肩書きで選んではなりません。
(というより、
日頃から、こうしたやる気のある人に役職を任せるという
思考が重要です)
やる気がある職員を組み入れ、
やる気に陰りが見られれば、無理に続けさせないことです。
【ステップ3:ビジョンと戦略を示す】
■コッターは、これをステップ3としていますが、
本来、その構成は、ステップ2の前に
しておかなければなりません。
なぜなら、
コア・マインド・メンバーで連帯チームを構成するにあたり、
その候補者に、このビジョンと戦略を示す必要が
あるからです。
目的地やプロセスの概略が提示されなければ、
候補者も、
コア・マインド・メンバーを引き受けられないからです。
なにかを任せる場合には、
「権限と責任を明示すること」
が組織運営の鉄則です。
責任を持って取り組もうとコミットしようとする
真面目な職員ほど、
権限や責任などを明示しないと困らせることになってしまいます。
また、そのコミットメントを取り付けないで進めてしまうと、
のちのちの不協和音の原因となります。
というわけで、
ビジョンと戦略をわかりやすく示すにあたっては、
適切に言語化することが不可欠です。
■言語化するためには、
トップ一人で文言を策定することができれば、
それでも結構ですが、
できれば、
首脳部の方とじっくりと話し合って策定する方が良いでしょう。
話し合う中で、具体的な事例を出し合うなどして、
微妙なニュアンスを確認しながら構成してゆきます。
もし、
首脳部に話し合う相手としての適任がいなければ、
ヒアリングを通じてニュートラルに引き出してくれる
コンサルタントを使って策定することも必要です。
患者サービス研究所でも
そのヒアリングの役割を務めさせていただくことがあります。
習熟したコンサルタントであれば、
さまざまなアングルから投げかけて、
トップの思想の輪郭を浮き彫りにしてゆきます。
また、その後、
コア・マインド・メンバーを編成したり、
組織全体を巻き込んでゆく際に、
シンプルでわかりやすく発信してゆくための
適切な言語化を想定して、ヒアリングしてゆきます。
患者サービス研究所では、
そのヒアリングをする場合には、
トップや首脳部の方々に、
事前に参考となる情報を準備して臨んでいただくよう
お願いしています。
情報を準備する時点から、
トップや首脳部の方々の脳内で言語化が始まるからです。
組織を動かすには、言語が全てではありませんが、
必要不可欠です。
一人の部下に、自分の真意を理解してもらうことさえ
どんなに難しいかを考えれば、
まして、
組織風土とか危機意識などの情意事項を言語化できなければ
組織を巻き込むことは不可能と考えても良いでしょう。
また、わたしたち自身、
思考や感情を言語化することによって、
さらに自分の価値観が明確になり、揺るがないものになる
という効果もあります。
>>>つづく