■医療安全の領域では、
いま、合理的・科学的な考え方になって、確実に進歩してきました。
つまり、以前は、
「気をつければ事故を無くせる」
「事故が起きるのは気が緩んでいる証拠だ」
という精神論が主流だったために
「気をつけましょう」
「注意しましょう」
という指導・教育がなされていましたが、
「気をつければ事故を無くせる」
というのは幻想だと気づき、
「やっぱり精神論じゃ限界があるね」
という結論に達し、
こんにちでは、
「人間は、勝手に誤解するものだ」
「人間は疲れてくればミスをするものだ」
という人間観を前提にして、
「誤解やミスをする人間が関わっても、
事故につながらない仕組みや環境を設計するのが本当の医療安全だ」
という科学的・合理的な考え方になっていて、
確実に安全性が向上しています。
■一方、リーダーシップ論や、
ホスピタリティ論、
モチベーション論、
コミュニケーション論などの、
組織論については、どうでしょうか?
いまだに、
「モチベーションが上がらないのは、組織の方針を理解させられていないからだ」
「コミュニケーションが増えないのは、忙しいという言い訳をしているからだ」
「ホスピタリティが向上しないのは、研修での意識づけが足りないからだ」
「リーダーシップの効果が上がらないのは、リーダーに危機感が足りないからだ」
「習慣が身につかないのは、繰り返しやらせていないからだ」
といった精神論に浴しているのではないでしょうか。
しかし、もう、
「頑張れば意識が高まるはずだ」
「意識が高まれば頑張れるはずだ」
というのは幻想だと気づき、
「やっぱり精神論じゃ限界があるね」
と結論した方が、合理的ではないでしょうか。
「人間は、習慣を身に着けるのは大の苦手だ」
「人から与えられる変化は大嫌い」
「でも自分で変えるのは好き」
「指示や命令ではモチベーションは上がらない」
「そのため、上司からの指示や命令は歓迎しない」
「そのくせ、自分のことを判って欲しい」
「誰でも近視眼的になり目的と手段を取り違えるものだ」
「成長意欲や貢献意欲はもともと持っていない」
「持っているのは、自由と承認を求める気持ちだけ」
といった実状を直視した人間観を前提にして、
「そんな人間が関わっても、
おのずとモチベーションが上がる、
ホスピタリティが上がる、
コミュニケーションが増える、
リーダーシップが向上する 仕組みや環境を設計するのが本当の組織創りだ」
という考え方に立って、
科学的・合理的に進めることをお勧めします。
■コンサルタントが提供する研修も同様です。
リーダー対象の教育研修では、
「どうすれば、部下が危機感を持つか」
「どうすれば、部下が達成感を感じることができるか」
「正しい目標設定とはなにか」
「どうすれば、部下が納得する評価ができるか」
などなどのテクニックを教えるばかり。
交流分析をしてみたり、
SWOT分析をさせてみたり、
富士山麓の地獄の猛特訓とか、
チーム対抗の工作ゲームをしたり、
暗闇で一緒に過ごす体験をさせてみたり…。
しかし、それが、現場で、 具体的に、いつどのように活きるのでしょうか?
そもそも、職員の目が輝き、 組織が活性化するのでしょうか?
それによって、
モチベーションやホスピタリティ、
コミュニケーション、リーダーシップが
どれだけ向上したのか、を
効果測定していなければ、
「効果があった気がするだけ」
に過ぎません。
■「頑張れば良くなる」
という精神論や
「人間は教育すればやる気を出す」
という幻想を、
一日も早く卒業しましょう。
そして、
「人間は、精神論では頑張れないもの」
という前提に立ち、
科学的・合理的な手法を用い、
定量評価する施策を選ぶことをお勧めします。
そのような施策を導入すれば、
おのずと職員の目が輝き、みずから進化し続ける組織になるはずです。