■しばらく前に、医療機関向けの接遇セミナーを覗く機会がありました。
元客室乗務員だという講師は、
確かに清潔感があり、
これぞ接客のプロ、という印象の方でした。
ところが終盤に、
「気配りが大事だ」
という話になった時のことです。
「客室乗務員をしている中で、こんなこともあるのです。
最近のようなとても暑い日に、
出発時間が迫る中、
お客様が駆け込んで来て、
『姉ちゃん、水、水をくれないか』
と言われました。
そんな時、みなさんなら、
水をお出しする時に、
氷を入れて差し上げますか?それとも入れませんか?」
と、質問が受講者に投げかけられました。
みなさんなら、どちらにしますか?
■その講師の答えは、こうです。
「急いで駆け込んで来たお客様が
水を飲む時に、
氷が入っていると歯に当たってしまうので、
氷を入れずに出すのが正解です。
ホスピタリティとは、このような気配りを尽くせるようになることです」
■「ケースバイケースじゃね?」
と、いまPCもしくはモバイルの前で、
多くの方が、思わず口にされたのではないでしょうか?
どうやら、お客様に確認せずに、
そのような配慮をスマートにできることが、
客室乗務員の世界では美徳とされているのかもしれません。
しかし、
医療機関で働くみなさんなら、
「相手の真意なんて、聞かなければわからないもの、
いや、聞いても本音を話してくれるとはかぎらないもの」
と、ご存知の通りです。
人は自分と同じ考えをしているとは限らないものです。
まして患者さんは、
勝手に誤解したり、
勝手に取り乱したり、
勝手に疑い深くなっていたりしていて、
思いがけないことを思っているのが当たり前です。
したがって、
職員側が勝手に忖度することが
いかに危険なことかを、すでにご存知でしょう。
■一般的な接客術と、「医療接遇」の
本質的な違いの一端を知らされた一幕でした。
接遇研修をするとしても、
医療接遇の本質がわかる研修を選ばれることをお勧めします。
なお、医療接遇の本質が水際立ってわかるよう、
患者サービス研究所では、
研修において、このような質問をしています。
「傷病が治らなかったのに、患者さんが、
感謝して帰り、信頼してその後も通ってくるには、
一体、その病院とその患者さんとの間に何があったのでしょうか?」
さらには、
「患者さんが亡くなったのに、ご家族が、
感謝して帰り、ご自身が具合が悪い時にも信頼して通ってくるには、
一体、その病院とそのご家族との間になにがあったのでしょうか?」
医療機関でありながら、
医療上はまったく期待に沿う結果にはなっていないにも関わらず、
職員との間では良い関係性が築かれている、
……ということは、
このケースにおいては、
本質をとらえた医療接遇がなされたものと考えられます。
では、それは何だったのでしょうか?