判って欲しければ、判らせようとしてはならない

判って欲しければ、判らせようとしてはならない

■いまは、いずれの組織でも、この難局を乗り越え、
スタッフを楽にして希望を持てるようにしたいでしょう。
しかし、コロナ禍でスタッフが疲弊している中、新たな施策を導入しようとすれば、
現場からはいつも以上の反発の声が上がることは必至でしょう。

では、次のうちどのようにすれば、
新しい施策を円滑に導入し、現場を楽にすることができるでしょうか?

  1. 強権的に、新しい施策を導入する
  2. どうすれば導入に賛成するか、条件を現場に訊く
  3. 新しい施策を導入するかどうかは現場に任せる
  4. まず、新しい施策の話はしない

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■昨年後半から、いくつかの医療機関で、
職員面談を行なっています。

厳密には、管理職面談ですが。

それらの医療機関は、
「コロナ禍の影響を受けて、
これまではイレギュラーな体制を敷いていたが、
いつまでもこれを異常事態だとしていては、
本来、重要としてきた組織運営もできない」
と感じて、

「そろそろ、
改めて組織づくりをしてゆきたい」
と考えました。

そこで、
「何から始めるか?」
という相談になります。

組織づくりの要は管理職ですから、
おのずと管理職が対象となります。

しかし、
「組織づくりとは教育研修だ」
という発想では、
自律進化組織は創れません。

まして、これまでコロナ禍でいつも以上の
心身の負荷を引き受けてきた管理職の方々に、
さらに、
教育研修を施しても、
受け止められるはずがないことは、
みなさんもご存知でしょう。

そこで、最初のステップは
必然的に、
「管理職を対象とした個別面談」
ということになります。

個別面談といっても、
わたしから伝えることは、ほとんどありません。

管理職の方々から
「聴くこと」
に徹する、ヒアリングです。

■もちろん、普段一緒に働いているわけでもない私が
「聴きますよ」
といっても、全てを打ち明けてもらえるわけではありません。

しかし、対象者の方々は、
通常時のヒアリングよりも、
明らかに多くのことを話してくれる傾向がありました。

それだけでも、
いかに普段、想いを吐き出せていないか、がわかります。

一昨年来の働き方改革によって、
「余計な残業はしてはならない」
どころか、
医療現場の場合には、
早めに出勤して患者さんの情報をとらなければ、
業務に差し支えるため、必要に迫られてしている
「早出残業さえも注意される」
という状況がありました。

こうした状況は、事情は違えど、
他業界においても、似たような形で発生していると聞きます。

さらにコロナの影響で、
対面での対話を極力減らすようになり、
月例会議も、かつての60分から15分で済ませるなど、
コミュニケーションそのものが自制されています。

まして、
「本当はこんなことで困っている」
「こんなことで悩んでいる」
「あれが悲しかった」
「これはわかって欲しかった」
などの感情を話すことなどは、
いっさい我慢せざるを得ない空気になっているところが
多いでしょう。

言ってみれば、職場環境は、
「自分の感情は出すな。黙って働け」
と命令されて、
いつも以上に負担が多い中、
何ヶ月も働いているようなものです。

これでモチベーションが下がらないはずがないでしょう。

あるいは、気丈に前向きな人ほど、
ストレス過多となり、
メンタルを病んでしまいます。

■したがって、
組織づくりをするにしても、しないにしても、
いま、
最も急がなければならないのは、
スタッフの方々の「想いを吐き出せる機会」を
設けることにほかなりません。

実は、その意味もあって、
それぞれの医療機関で、
まずは管理職の方々との個別面談を行なっているところです。

■面談の結果はどうだったか?

その一部を挙げてみましょう。

  • 離職を考えているという声をキャッチすることができた。
  • スタッフの方々が、「本当はこうしたい」という想いをもって、日々働いてくれている、という状況がわかった。
  • しかしながら、それを仲間と語り合う余裕もないとのこと。
  • そのため、「一緒に働いていても寂しい」という言葉も。
  • 互いのコミュニケーションがとれていないことから、毎日、大小さまざまな摩擦が起きているということ。
  • しかし、それを報告する相手も相談する時間もないので、解決されず、人間関係が悪化している例も。
  • せっかく、それぞれに患者さん・クライアントのために「もっとこうしたい」という考えがあるにも関わらず、互いに話し合えないので、まったく実践できていない。
  • 摩擦が起きている状況が上層部に上がらず、誰も是正しないので、現場では理不尽なことが放置されている。
  • 長く働いている人ほど幅を利かせてしまい、新しく入った人ほどどんどん辞める、という現象が続いている現場もあり。
  • 職員が退職を申し出てくるときは「急」であり、しかも決意が硬く説得しても「翻意しない」。

・・・こうした情報は、決して意外ではありません。

むしろ、典型的なケーズばかりでした。

そして、このように、スタッフの視点に立とうとするからこそ、
スタッフの想いを知ることができるので、
現場の関係調整に介入できたり、
離職を防止する方策を講じることもできるようになるのです。

反対に、面談に応じてくれた職員の方々からは
こんな声が聞かれました。

  • 話ができて、ずいぶんスッキリしました。
  • 上層部が考えてくれているのがわかって、良かった。
  • もう少し頑張ってみようと思います。
  • 相談できる相手がいなくて困っていたので、相談先をどう考えれば良いか、わかってよかったです。
  • 今の状態が続くなら、辞めようと思っていたところです。もう少し状況を見てみようと思えました。
  • もっとみんなと話すようにしようと思いました。
  • いろいろ意見を言っていいのですね。
  • トップの人たちは、誰も現場を理解するつもりがないのかと思っていた。できたら、自分からもっと接点を持とうと思う。

■多くの現場では、
こうした面談を通じて、
このように管理職の方々に
経営陣がこれまで以上に現場を大切にしようと考えていることが伝わったところで、
初めて、
改革のステップに入ってゆくことが可能となります。

なので、冒頭のクイズは、
[4]の、「まず、新しい施策の話はしない」のが、
正しい最初のアクションです。

[1]の「強権的に新しい施策を導入する」は、
現場の
「現場を全然わかってくれていない」
という不満を生むので、大反発を招くこととなり、
大量退職にすら繋がると考えた方が良いでしょう。

[2]の「どうすれば導入に賛成するか?条件を訊く」も、
「導入することありき」が伝わることで、
現場の
「現場を全然わかってくれていない」
という不満を招くことには変わりないので、
「どんな条件を提示しても、賛成はしかねます」
という回答を引き出すことにしかなりません。

[3]の「新しい施策を導入するかどうかは現場に任せる」は
一見、現場を尊重しているので良さそうですが、
実務上は、
これはまったく意味をなしません。

現場は一人ひとりが余裕がないので、
気軽に周囲と相談する余裕もありません。

そのため、
新しい施策なる得体の知れないものを
「この余裕のない中、やってみましょうよ」
などと軽々に提案できない、というのが本音です。

なので、
「みんなに任せるよ」
といえば、現場からは、
「ありがとうございます。考えておきます」
という返事が返ってくるものの、
待てど暮らせど、
「みんなで相談しました」
「やることに決まりました」
といった返事が返ってくることはありません。

したがって、自律進化組織研究所の答案は、
[4]の「まず、新しい施策の話はしない」
となります。
まず、面談をして、状況や想いや考えを聴くことだからです。

新しい施策の話に進むのは、
その後です。
具体的には
管理職を対象とした
「管理職が楽になるための勉強会」
といった新リーダーシップ研修へと進むこともあれば、

実際に部下とのコミュニケーションを円滑にしてゆくための
『HIT-Bitプログラム』
へと進んでゆくこともあります。

この個別面談のステップなしに、
新たな施策に入ることには、
人間の心理構造を考えれば、リスクしかない、ということがお分かりでしょう。

■なお、
「吐き出させれば良いのであれば、
みんなを集めて話を聞いてやれば良いのではないか」
と考える方も、
経営者の中にはいました。

しかし、
「みんなの前では話せないこと」
もたくさんあるのが人間です。

というより、
「そのみんなの中に、わたしの悩みの元凶となっている人がいる」
ということもあります。

普段、吐き出せる場がなく
苦しんでいる、ということも多々あるのですから、
「ここだけの話」
をしゃすい環境を設けることが大切であり、
したがって、
個別に面談するという形になるというわけです。

■ところで、
個別面談では一時的なトリートメントにしかなりません。

本来は、
日常的に想いを吐き出せていなければ
健全な職場とは言えないのです。

また、管理職がすべてのスタッフに声をかけて
ケアしてゆかなければならない責任を負うとすれば、
キリがありません。

では、どうするか?
そのための方法が、
1日5分のコミュニケーション・モデル
『HIT-Bit®︎』
です。

そのため
『HIT-Bit®︎』
を行なうと、
1~2ヶ月もすると、
対話が増えたり、
スタッフの表情が明るくなったり、
お互いに元気になれるので、
「楽しいので5分では終わらない時もあるんです」
と嬉しそうに話すスタッフも現れます。

どんなに残業を減らし
有給休暇を消化させても、
自分の想いを吐き出せない職場では、
周囲に味方がいることを感じられず
孤立化・独善化してしまうので、
スタッフは病んでしまったり、辞めてしまうでしょう。

『HIT-Bit®︎』のように
日頃から自分の想いを吐き出すことができ、
周囲がいつも味方になってくれる職場では、
健全な心で、驚くほど頑張れるものです。

『HIT-Bit®︎』については、
1Dayセミナー(オンライン)を開いています。

  • 2/13(土) 13:30~16:30
  • 3/13(土) 13:30~16:30
  • 4/10(土) 13:30~16:30