■みなさんは、
職員がのびのびと働く職場を作りたいでしょうか?
そうなれば、確実に離職を防ぐことができ、
退職に伴う募集採用の費用や労力を費やす必要がなくなり、
年間何千万円もの募集採用費用も節約できることでしょう。
この、
「のびのびとした働ける職場」
を創るためには、
昭和の時代のストイックな組織管理を
卒業しなければならないことは
改めて言うまでもないでしょう。
■ところで、わたしが以前勤めていた会社は、
若い社員が多く、
グループには専門学校があって、
多くの若い教職員が働くなどの影響もあって、
グループ全体が、
一見、明るくのびのびとした雰囲気でした。
しかし、
退職は少なくありませんでした。
いまもそれは変わらないようです。
いまでは社員1万人以上のグループ企業を
創業者は一代で築いた人でしたが、
起業時より社員のモチベーションを重視してきました。
創業者は、職員がのびのびと働くことを願い、
ホームラン級の新しい取組が現場から生まれることを
つねに期待しています。
しかし、この会社では、
ホームランが出たためしがありません。
職員はみな、驚くほど目的を考えず、
目先の手段に拘泥する傾向があるのです。
いわば、全員がバントして
確実に出塁することに努めているような社風なのです。
なぜそうなってしまうのか?
それは、経営者が、
のびのびと働いて欲しいと願っていながら、
職員に対しては、
「結果を出すことに絶対に責任を持て」
と意思表示してしまっているからなのです。
例えて言えば、
「ホームランを期待している」
にも関わらず、
選手に対しては、
「絶対に出塁しろ」
と厳命しているようなものです。
もしみなさんが選手だったとして、
打席に立つ時に、
「絶対出塁しろ、判っているよな」
と言われたら、
やはり、
「なんとしてもボールにバットを当てなければならない」
と集中するあまり、
手堅くバントする構えになってしまうでしょう。
大振りするのはリスクが大きすぎるからです。
たしかに、思い切り振って、空振りばかりしていたら、
絶対に出塁できませんから、
得点できないのですから、
勝てる日は来ません。
■とはいうものの、常日頃から
「絶対に出塁をしなければ許さん」
と言っていたら、職員は萎縮するだけで、
思い切ったプレイをする選手は存在しなくなってしまいます。
それでいてのびのびと活躍させたいと願っても、
それは相反することなのです。
では、どうすれば良いか?
大切なのは、
時と場合とタイミングを見て、
のびのびとやらせなければいけない、ということです。
たとえば、野球の例えで言えば、
- まだ点差がない場面では、失うものがないのだから思い切って振らせれば良い。
- 相手が疲弊している時には、甘い球が来ることもあるのだから隙あらば振ったら良い。
- ノーアウト1・2塁なら、一打多得点のチャンスなのだから、思い切って攻めて見たら良い。
- 追いつかれた直後で、2アウト、ランナー無しなら、ねじ伏せたら良い。
……といったことです。
つまり、
常日頃から、のべつ
「絶対に出塁しろ」
と言って、選手を芯から萎縮させるのではなく、
出塁狙いと長打狙いを、時と場合によって使い分ける、
ということです。
■組織で言えば、
- リスクが無いこと
- お金や時間や労力がかからないこと
……は、どんどん思い切ってやらせてしまう、ということです。
もし、
お金や時間や労力がかかることでも、
これまでになかった患者対応や地域貢献ができることを
職員が言い出したならば、
大いにやらせたら良いでしょう。
ある程度のお金や時間や労力がかかっても、
そんなことをボトム・アップでやる例は少ないので、
やらせてみた方が良いのです。
そうした、
経営者の
「思い切ってやってみろ」
という承認と、
職員ののびのびとした言動があって、
初めて、職場でもホームラン級の働き方が
生まれるのではないでしょうか。
■そもそも、医療業界も、これからの時代は、
「前例があることならやる」
から、
「前例がないからやる」
文化にならなければなりません。
病院同士でも、生き残りをかけて
競争しなければならないのですから、
その競争相手や過去に倣っていては、
絶対に生き残ることができません。
というのも、
医療業界は行政方針のもとで市場規模が縮小しており、
患者一人当たり医療費単価も下げられているのですから。
商業ビジネスにおいても、
顧客数が減少し、客単価も減少していたら、
回復への出口がないと言われるところです。
そんな中で勝ち残らなければならない時代に
なっているのですから、
これまでと同じことをしているところは
間違いなく追い詰められてゆくことになります。
■その環境の中で生き残るためには、
職員一人ひとりが
「自分ならば何ができるか?」
を常に考え行動する全員参加の総力経営へと、
一日も早く舵を切ることが必要でしょう。
そのためには、職員を
「萎縮させないこと」
が必要条件です。
野球に例えて言えば、選手に
「絶対に出塁しなければ許さん」
と日頃から言うのではなく、
その反対に、常に、
「思い切って行ってこい!」
と、基本的にチャレンジングなモードへと
マインドを促しておくことが必要です。
普段から、
「いざと言う時には、見ていろ!
これまでにないホームランを打って見せてやる!」
と、チャンスさえあれば大活躍する気持ちがあってこそ、
いざと言う時にも長打を打つことができるからです。
もし、その反対に、普段から
「失敗は許されない」
というモードになっていたら、
突然、いざという場面が来ても、
長打など打てないのです。
■みなさんの組織においては、
職員の方々は、
「チャンスさえあれば大活躍する」
気持ちになっているでしょうか?
でなければ、
全員参加の総力経営など、実現することはありません。
また、
職員が失敗を恐れるほど、
その組織は、
チャレンジングな取り組みが生まれず、
滅びてしまいます。
反対に、
職員が失敗を恐れない方が、
その組織は、
チャレンジングな取り組みが生まれ、
生き残ることができます。
■皮肉なことに、
「なんとしても勝ち残る組織にしたい」
ならば、
「手堅さを優先する職員」
を育ててはなりません。
「のびのびとチャレンジしたいと思う職員」
を創ることが必要なのです。
医療業界は、いまや
「安全第一がもっとも危険な時代」
なのです。
まずは、みなさん自身が
「前例があることならやる」
でしょうか?
それとも、
「前例がないからやる」
でしょうか?