対話技術を学んでもコミュニケーションが向上しない理由

対話技術を学んでもコミュニケーションが向上しない理由

■職場でコミュニケーション・エラーや、メンタルトラブルが発生すると、
経営者や幹部職員は、
「職員にコーチングを学ばせよう」
「ファシリテーションを身につけさせよう」
などと、コミュニケーション技術に関心を持ちがちです。

しかし、テクニックを学ばせたと言う企業・病院の経営陣や担当者に
どうなったかを聞いてみると、
職員から、
これまでに無かった新たな問題提起や、思いがけない改善提案、
予期しなかった良い結果が飛び出し、
経営者がしばしば驚かされる、
・・・・といった自律進化が生まれるには、なかなか至っていないと聞きます。

それは、次のうち、何が欠けているからでしょうか?

  1. 学んだ対話技術の理解不足
  2. 学んだ対話技術の練習不足
  3. 自分の現場で使える対話技術
  4. 良いコミュニケーションをとれる関係性

■多くの経営書やリーダーシップ書、
あるいはコーチングやファシリテーションのスクールでは、
「部下に声をかけて、気持ちを理解することが大事」
「部下の願いを聞いて、支援することが大事」
「部下の適性を見抜いて力を引き出してあげることが大事」
・・・などと教えています。

そして、読者は
「では、そのためにどうすればよいか?
明日からできる方法があるのか?」
と感じることでしょう。

すると、その経営者、リーダーシップ書、
あるいはコーチングやファシリテーションのスクールは、
このように助言してくれます。

「まめに声がけすることが大事」
「意見を聞くことが大事」
「本音を引き出すことが大事」
・・・などなど。

そこで、読者はこう思うことになります。
「それができたら苦労していないよ」
と。

■なぜ、書籍やスクールで学んだことを実践しようとしても、
うまくいかないのか?

それは、たいていの場合、
学んだ通りにしても、

  • 声をかけても反応がよくない
  • 時間をとってくれない
  • 本音を話してくれない
  • いろいろ言いたいことはある模様
  • スタッフや他のリーダーには話している
  • 別にやりたいことはない
  • あなたに聞いてほしいことはない
  • プライベートは話してくれない
  • 要望があるときだけ、突然家族の都合を持ち出す

といった状況があるからです。

一言で言えば、
「関係性ができていない」
ということです。

関係ができていないのは、
テーブルについてもらえる関係にないと言うことでしょう。

それは、例えば、
ある人と一緒にステージ上で演奏したいからと言って、
その人がステージに上がってくれていないのに、
路上で急に伴奏を弾き始めるようなものです。

これでは良い音楽にもなることもなければ、
「また一緒に演奏しましょうね」
という話にもならないことは明らかです。

乱暴な人だと嫌われ、
もっと関係が悪くなるだけです。

そこでコーチングのテクニックを駆使しようとしても
気持ち悪いだけ。

一緒に演奏して良い音楽を奏でたいならば、
まず、
「いいですよ!」
と、ステージに上がってもらえる関係性を作ることが必要不可欠です。

みなさんも、
相手が心の準備も何もないところに、
いきなりセッションを強要していると言うことはないでしょうか?

関係性づくりができていないのに、
セッションの練習ばかりしても意味がないことは明らかでしょう。

■なぜ、関係性づくりを教えず、
セッションの方法だけ学べばいいですよ、という人が多いのか?

なぜ、多くの経営書、リーダーシップ書、
コーチングやファシリテーションのスクールは、
関係性ができている前提であるかのように、
「対面でのコミュニケーションの方法」ばかりを教えるのでしょうか?

それは、いつも伝えているように、
昭和の時代の組織論がわたしたちに染み付いているからです。

昭和の時代は、
「仕事を辞めるのは忍耐力がない」

とされ、
職場には今以上に理不尽なことはたくさんありましたが
「そこを頑張るのが美徳」
という文化でした。

なので、組織を動かす時には、
経営者や管理職は、
トップ・ダウンで情報発信すればよく、
こんなに楽な状況はありませんでした。

しかし、こんにちでは、
「仕事を辞める選択肢を持つのも当り前」
であり、新型コロナの影響で、
「柔軟に働き方を変えられるのが美徳」
という文化にすらなりました。

何かを押しつけようとしても、
職員には拒絶する自由があるのがこんにちです。

それでも押し付けようとすれば、
職員は辞めてしまうのです。

そんな時代なので、
組織を動かす時には、経営者や管理職は、
コミュニケーションをとることも押し付けてはなりません。

まず、コミュニケーションを取ることに対しての
コミットメントを取り付けることが必要になっているのです。

言い換えれば、
テーブルについてもらえなければ、
どんな話も始まり用がないのですから、
対話のテクニックを学ぶ以前に、
テーブルについてもらえる関係性をつくる方法を学ぶ必要があるということです。

■では、どうすれば、部下職員が、
「この人に呼ばれたなら、時間をとらなければいけないな」
と思ってテーブルについてくれる
良い関係性を築くことができるでしょうか?

上司の
「今どんな感じか、ちょっと話を聞かせてもらいたいのだけれど、
ちょっといいかな」
に対して、
部下が
「すみません。いまちょっと忙しいので…」
と敬遠する場合、
どんな気持ちなのでしょうか?

もちろん
「忙しいから」
ではありません。

良い関係があるのに忙しいだけなら、
「いまちょっと忙しいですが、夕方なら大丈夫です。
16:30でいかがでしょう?」
という答えが返ってくるからです。

そういう答えが返ってこない場合には、
上司は、その部下から、

  • 期待されていない
  • 信頼されていない
  • 他言されることを恐れている
  • 一緒にいて楽しくない
  • 実は恨みに思っていることがある

・・・といった感情を持たれている、ということではないでしょうか。

たとえば、
「あれほど上司から言われたから、
頼まれたことを最優先でやって見せたのに、
その苦労を全然理解せず、
“ありがとう”
の簡単な一言で済まされた」
といった過去があると、

部下は、
そんな上司からの声がけに素直に応じる気にはなれないでしょう。

こうした、上司に対する小さなわだかまりや、大きな不信といった
ブロックは、
みなさんにもお心当たりがあるのではないでしょうか。

こうしたブロックをそのままにして、
いくら対話テクニックを磨いてみても、
まったく効果が生まれないことは、
火を見るよりも明らかでしょう。

■さて、そこで最大の問題である、
「どうすれば、良い関係性を築けるか?」
ですが、
実は極めてシンプルです。

「つねに相手の味方になる」
を徹底する、ということです。

言い換えれば、
「つねに相手の重要な価値観を尊重し応援する」
を徹底する、ということです。

人間は、わかってもらいたい動物ですが、
「何を最もわかってもらいたいか?」
と言えば、
自分の価値観に他なりません。

人を理解するとは、
「その人の価値観を理解する」
ということに他ならないのです。

みなさんも、相手がご自身の
学歴や勤務先や職種や家族構成、趣味・特技、
資格、職歴といった履歴書に書くような
表面的な情報をわかってくれたからと言って、
「わかってくれる人だ」
と感じて心を開くことはないでしょう。

では、どんな人に心を開くでしょうか?

それは、
「いま、自分にとって何が重大か?」
を我がことにように受け止め、
「何かできることがあれば力になるよ」
と言ってくれる人ではないでしょうか。

それは、
自分の価値観をわかってもらえていることによって、
強力な関係性が築かれている、ということです。

■とはいえ、
対話自体がなければ相手の重大な価値観を聞き出すこともできません。

なので、
まずは、どんな小さな価値観でもキャッチしては、
それを尊重し応援することから始めるよりほかありません。

そこで、最初は返事を期待せず、
ただ、
「何か気にかかっていることはある?
いつでも応援するから言ってね」
と日頃から言うようにする、ということです。

ただし、関係が良くない場合、部下が
「最近、上司がやたらと声をかけてきて、鬱陶しい」
と感じることにもなりかねません。

声をかけたり、かけなかったり、となると、
自分を心配してくれるかどうかは、
上司の気まぐれ、場当たり的、気分次第とも取られやすいからです。

ではどうすればよいか?
最も良いのは、
毎日、決まったタイミングで、部下に、
「何か気にかかっていることはある?
いつでも応援するから言ってね」
と投げ掛け続けるということです。

部下一人ひとりに声をかけてまわったのでは
手間がかかりすぎる上、
部下にとっても負担を感じることになることでしょう。

それよりは、、
1日5分、職場の全員が集まる場を設けて、
その場で、
「何か気にかかっていることはある?
いつでも応援するから言ってね」
と、毎日言い続けておく、という形が現実的でしょう。

このコミュニケーション・モデルが、
患者サービス研究所が提唱している
「HIT-Bit」
です。

HIT-Bitを行なうと、
職員間の関係性が目に見えて変わります。

そのための方法については
1Dayセミナーを開いております。

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