引きこもる幹部職員

引きこもる幹部職員

■むかし、『はぐれ刑事純情派』というドラマがあったのを

覚えておられるでしょうか?

 

藤田まこと扮する所轄のベテラン・安浦刑事が

さまざまな人間模様の中で、

関係者の心を解いてゆき、

事件を解決する人情派ドラマでした。

 

2009年に終了したそうですから、

もう随分経つのですね…。

 

その当時から、わたしは

「ずるい!」

と感じていたのです。

 

というのも、

いつも、結局、

安浦刑事が人の心の扉を開けさせて、

事件を解決に導いていたからです。

 

・犯人が自供する

・嘘をついていた目撃者が本当のことを言う

・トラウマから口を閉ざしていた人が過去を語り出す

・意地や見栄などの自分の醜い心を告白する

などなど……。

 

頑なに口を閉ざしていた人たちが、

終盤になると、

なぜか、安浦刑事にだけは打ち明けてしまうのです。

 

犯人から電話で、

「本当のことを話すから、安浦刑事一人で来い」

と指名される、などといった展開です。

 

これが、

安浦刑事の人柄がそうさせるから、

という理由になっているようなのですが、

視聴者誰もが、

「つい安浦さんにだけは打ち明けちゃうよね」

となるほどの必然性が感じられず、

「ご都合主義だ、ずるい!」

と感じてしまっていた、というわけです。

 

■職場においても、

職員がなんでも打ち明けてくれるような関係性を

築くことができれば、どんなに良いでしょうか。

 

みなさんも、

「一番肝心な、

そんな風に人の心を解くことができる方法を知りたいよ!」

と感じるのではないでしょうか。

 

昭和の時代は、

現場から成果の数字だけが上がってきて、

上層部はその数字を見て評価すればよいという

トップ・ダウンの文化でした。

 

なので、日本では長い間、

事実上、スタッフの気持ちはどうでも良く、

本心を打ち明けてもらう必要性がない時代が続いてきました。

 

また、世の中の多くの組織では、

いまだにこの感覚が抜けないので、

(しかも、昨今の働き方改革の影響で)

ますます職場からコミュニケーションが減る傾向にあります。

 

そのため、

多くの職場でスタッフの気持ちが荒んでしまい、

離職がなかなか止まらないのが実情となっています。

 

そこで、これからの令和の時代には、

ボトム・アップが基本の文化にしてゆかなければならないでしょう。

 

離職を止めたければ、

現場の様子がわからなければならず、

そのためには、

働く職員の方々の心を解き、気持ちを聞くことが必要不可欠だからです。

 

■では、聞くにはどうしたらよいか?

 

そこで、よく行われているのが、

・面談

・アンケート

・ミーティングでヒアリング

・忘年会、レクリエーションなどの親睦会

……などといったところでしょうか。

 

かなり以前に、

「現場の職員の話を聞きたい」

と思い立った院長先生が、

一人ずつ若手職員を院長室に呼んで、

ケーキを出して若手にヒアリングした、といった例もありました。

 

ご想像の通り、職員の方は、

「緊張して味がわからなかった」

と言っていました。

 

いつもお伝えしていることですが、

コミュニケーションそのものをどんなに工夫しても、

「この人には打ち明けたい」

と思ってもらえる関係性がなければ、

本心のやりとりはできません。

 

また、アンケートにせよ面談にせよ、

すべての施策が、

相手への意思表示にもなっていることに注意して

コミュニケーションをとることが大切です。

 

■では、

「この人には打ち明けたい」

と思ってもらえる関係性を築くためには、

前もって、どうすればよいでしょうか?

 

それは、

「普段から、現場に足を運ぶこと」

に尽きます。

 

病院組織の幹部職員となると、

管理部門のエリアに引きこもっていて、

これができていないことが、多々見受けられます。

 

つねに現場に足を運び、

現場の日常を少しでも見ようとし、

職員に声をかけ、小さな意見や想いを聞き、

できるかぎりバックアップしていれば、

職員から、

「この人は、わたしたちの味方だ」

と認識されることでしょう。

 

そうなれば、

「この人なら、打ち明けてみよう」

と思ってくれるようになるということです。

 

幹部職員の方々が、

「部長だから」

「事務長だから」

と、現場に行かず引きこもっていたら、

「本当は、現場を理解したい」

と思っていることも現場に伝わることはありません。

 

それでいて会った時に、

とってつけたように、

職員に感謝したり、

労って見せても、

その言葉にリアリティがないので、

表面的なメッセージになり、

職員には空々しく聞こえてしまい、

まったく響かない、ということになってしまいます。

 

見方によっては、それ自体が、

職員からすれば

「横着なコミュニケーションをとろうとしている」

という意思表示に映ってしまうことに注意しなければなりません。

 

こうした関係性のままで、

どんなに面談やアンケートなどをしても、

本心が聞こえてくることはありません。

 

幹部職員こそ

管理部門エリアに引きこもっていてはなりません。