■経営者・管理職の方々から
「スタッフの意識をもっと高めたい」「スタッフの危機感がない」「スタッフに組織全体のことを考えてほしい」といった声を聞きます。
では、どのようにすれば、スタッフが変わるでしょうか?
- 課題について説明する
- 課題について考えさせる
- 課題について話合わせる
- 課題の解決策を出させる
- 状況を見せる
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■経営者・管理職の持つ、上記のような悩みは、
多くの組織に共通するものでしょう。
もしこれが解決されている組織が多いならば、
「うちの組織では、
スタッフ全員、考え方が経営者並みだ」
という声が、世間のあちこちから聞こえてくるはずだからです。
つまり、
スタッフとは、
「経営者・管理職ほど意識が高くない」
「危機感が乏しい」
「組織全体のことを考えることはない」
・・・というものだ、ということでしょう。
では、なぜそうなるのか?
それは、得てして
「人間は近視眼的になる」
性質があるから、ということができるでしょう。
人はどうしても眼前のことに関心を持つために
視野が狭くなり、
日々過ごすうちに、
目先の世界だけで完結してしまうので、
問題を感じなくなってしまう、という性質があるからです。
たとえば、現代の日本に暮らす私たちは、
「Wi-Fiが届かない」
ということにひどく不便を感じ、
日常生活やビジネスにおいて、
大いに不服を感じることでしょう。
しかし、
目先を離れれば、
世界には、
いまも1950年代のように
新生児の10%が命を落としている国もあれば、
1日1ドルで暮らしている人たちもいるのです。
良くも悪くも、
「人間は近視眼的になる」
性質があるということなのです。
■したがって、
スタッフの視野を広げるならば、
単に、
「意識を高くしろ」
「危機感を持て」
「組織全体のことを考えろ」
と言ってみても効果はありません。
今日の今日まで、いまの環境の中で、
それなりに幸せに暮らして来れているという
学習をしてしまっているからです。
では、どうすればよいか?
重要なのは
「何と比べるか?」
です。
つまり、
「もっと良い結果を生み出している組織と比べさせること」
です。
「自分が損をしている」
「このままでは不公平だ」
と感じると、
「もっと頑張らなきゃ」
と思うようになるでしょう。
あるいは、
「もっと悪い結果に落ちいている組織と比べさせること」
です。
「この組織と同じになったら大変だ」
「もっと頑張っておかなきゃ」
と思うようになるでしょう。
このように、比較対象を見せることによって、
いまの自分や自分の環境に対する課題を
ダイレクトに感じることができるのです。
その比較対象を見せずにあれこれ言っても、
スタッフに伝わるはずがありません。
「指導や教育で判らせよう」
などという発想は、横着極まりありません。
■スタッフを説得しようとしないほど、
スタッフに伝わるのです。
経営者・管理職が、
スタッフを説得しようとすればするほど、
スタッフには伝わりません。
「まったくピンと来ないことなのに、
この経営者・管理職は、
自分たちが気になることをやたらと説得してくる」
としか、スタッフの目には映らないからです。
こうしてみると冒頭のクイズにおいて、
[1]の「課題について説明する」
[2]の「課題について考えさせる」
[3]の「課題について話合わせる」
[4]の「課題の解決策を出させる
・・・は、いずれも、
スタッフにとっては、
経営者・管理職からの押し付けとなるので、
心に刺さることはありません。
上司がうるさいと感じて、
関係が悪くなることにしかならないのです。
したがって、正答は、
[5]の「状況を見せる」
となります。
経営者・管理職は、語らず、
ただただ、自分たちの置かれている状況を見せ、
比較対象と自分たちを比べさせることです。
すると、スタッフは、
「どうにかしたい」
と感じ、
「どうすればいいか」
を真剣に考えるようになるのです。
これが、
「課題が自分ごとになる」
ということでしょう。
課題が自分ごとになれば、
「自分たちがどんなに恵まれていたことか。
わがままをいっていてはいけない。
もっと頑張ろう」
と思うことでしょう。
あるいは、
「私たちがいかにリスクから目を離していたことか。
恥ずかしいので、もっと頑張ろう」
あるいはまた、
「他の組織ではいかにみんなが力を合わせて
良い成果を享受していることか。
このままではいけない。
自分たちももっと頑張らなければもったいない」
もしくは
「世間のみんながいかにもっと真剣かわかった。
自分たちが頑張らずに満足していたことが愚かだった。
もっと頑張ろう」
と感じるようになることでしょう。
■そもそも、
経営者・管理職などのリーダーの仕事は、
「部下を啓発すること」
と言えます。
檄を飛ばしたり、叱責することだと考えていたら、
部下の心が離れるだけで、
もう通用しない時代です。
そのかわり、部下に
自分の立ち位置をわからせることに
専念すると良いでしょう。
いかに蛸壺化しているか?
いかに独善化しているか?
茹でガエルになっているか?
いかに井の中の蛙になっているか?
・・・こうした視点を持って俯瞰できることを
「メタ認知」
とも言うようです。
わかりやすく言えば、
「俯瞰化させること」
それが、リーダーの最も重要な役割だと言っても良いのではないでしょうか。
スタッフがみずからの立場や組織を俯瞰化できれば、
おのずと、
「いまの自分にとって何が必要か」
「いまの組織にとって何が必要か」
を理解します。
その瞬間、
「スタッフの意識がもっと高くなる」
「スタッフの危機感が高まる」
「スタッフが組織全体のことを考える」
組織へと、変わることになります。