■みなさんの現場にも、
さまざまなコンサルタントや学者が、
さまざまなマネジメントの手法を売り込んでくるでしょう。
しかし、
注意しておかなければならないのは、
「実際に効果のある手法は、極めて少ない」
という現実です。
たとえば、
「社員みんなでやる仮想体験ゲームで、経営感覚を学ぶ」
といった研修。
現場に戻って、
新しいビジネス展開や業態の見直しを提案してくる社員が
一人でも現れたでしょうか?
そもそも、そのコンサルタント会社自体、
そのゲームで、
日々イノベーションが起きているのでしょうか?
たとえば、
「人間のタイプを16パターンに分け、それぞれに応じた接し方を学ぶ」
という研修。
現場に戻って、
16の対応方法を使いこなして、
素晴らしいパフォーマンスを上げているクライアントがあるなら、
見学に行った方が良いでしょう。
そもそも、そのコンサルタント会社自体、
その手法で、
どれくらい離職が減り、パフォーマンスが上がっているのか
見せてもらいたいところです。
■なぜ、このように実効性の乏しい
「研修らしきもの」
が、臆面もなく出回っているのでしょうか?
また、
それを購入してしまう企業・組織が多いのでしょうか?
一言で言えば、
これまでの学者やコンサルタントが、
「真剣な組織マネジメントを研究してこなかったから」
という原因に尽きます。
そうなったのは、
昭和の景気の良い時代が永らく続いたからです。
高度経済成長に支えられた昭和の時代は、
「安定の時代」
であり、
その時代に研究されたマネジメントは、
こんにちの激変の時代には合わないのです。
■たとえば、
安定の時代は、
川下りに例えれば、
緩流(穏やかな流れ)を下るようなものです。
クルー同士が連携しなくても、
サボっても、
サボっている人を何人も乗せたままでも、
目を瞑ったまま漕いでも、
毎日安全に暮らせるボートに乗っていれば、
おのずと、
関心はお互いの存在へと向きがちになるので、
無駄にいがみ合うこともあります。
しかし、それなりに幸せなので、
混み合う中、誰一人ボートを離脱する者もありません。
なので、職場で、
上司がオフィスでタバコを吸い煙と匂いを撒き散らしても、
部下をいじめても、
この時代には、大した問題にはなりませんでした。
マネジメントにおいても、
「できるだけ気持ちよく」
「できるだけ効率的に」
とは言うものの、
目くじらを立てて厳しくするほどの
必要に迫られていなかった、とも言えるでしょう。
たとえば、みなさんも、
「人事評価って、こんなんでいいの?」
「本当に頑張った人が報われていると言えるの?」
という違和感を抱いたことがあると思いますが、
「絶対に、良い方法を開発しなければならない」
と必死になっている組織は珍しく、
「結局は主観になるのは仕方ないよね」
と妥協している組織が多いのではないでしょうか。
そういった意味で
「真剣なマネジメント」
を探究する必要に、まだ迫られていない
牧歌的な時代だった、
ということです。
■しかし今は、
何が起きるかわからない時代です。
コロナのような誰も答えを知らない災害が起きることもあります。
政府が「まず自助から」という通り、
業界育成や産業振興を積極的にすることもありません。
昔は数少なかったTOB(敵対的買収)も珍しくなくなりました。
川下りに例えれば、
いまや、激流の中に飛び込んでしまっている状態です。
クルーがいつボートの外へ放り出されるかわからず、
そして、
そのボートさえもいつ転覆するかもわからず、
まるでジェットコースターのような中では、
みな必死にならなければ生き残れません。
したがって、
危険には敏感でなければならず、
そもそもわずかな違和感にも鋭く気づかなければ命を落とします。
クルーが互いに責めあっていては沈没してしまいますから、
「あの人が嫌い」
などと言っている余裕はないはずです。
一寸先は闇という恐怖感があれば、
なおさらより遠くを見ようとして、
外へと目を向けなければなりません。
もしそんな風に頑張っていても、
報われなければ
ボートから降りてしまう者も出てくるのは当然でしょう。
つまり、
のんびりやっていてもみんなが幸せ暮らせる状況から、
本当に実効性のある、
真剣なマネジメントが必要な状況へと、
完全に時代が変わってしまっている、ということです。
それはつまり、
コンサルタントや学者も、
激流時代のマネジメントを研究し、
実効性のある手法を開発して提供するべき時代なのです。
そんなコンサルタントや学者が、
まだまだ稀であることを、
みなさんも、感じつつあるのではないでしょうか。
■すでにわたしたちは激流下りをしているのに、
コンサルタントも学者も、
悠然とした緩流の中で開発した仮想体験ゲームや
16パターンの心理分析や
あるいは、
コミュニケーション手法や
コミュニケーションのためのICTツール、
教育研修などを
いまだに売り歩いているというわけです。
■組織の中でも、
緩流下りでは、
「なにか問題があったら
来月の定例会に挙げるので、
みんなで相談しましょう。
決まったら指示します」
と、悠長なことを言っていられたでしょう。
いまは激流を下っているのですから、
「何か問題があったら」
ではなく、
「つねに問題の予兆に敏感であれ」
です。
「来月の会議」
を待っている必要はなく、
「すぐに見にゆこう」
です。
「みんなで相談」できる機会を待っていては
手遅れになるので、
「集まれる人だけで良いので」
となります。
「決まったら上司が指示」
ではなく、
「確認がとれたらどんどん現場で実践」
することです。
■いますでに、
形式的なマネジメントでは、通用しない時代です。
実効性のあるマネジメントへと切り替えるならば、
他にも、
緩流時代の常識を
激流時代の常識へと、180度切り替えなければなりません。
たとえば、
組織を動かすには
「集めて伝える」から
「各人と話し合う」へ。
「トップ・ダウン」から
全員参加を徹底した「ボトム・アップ」へ。
目先の責任に専念する「内向型組織」から
より良い情報を求めてなりふり構わず打って出る「外行型組織」へ。
社員への人事においても、
結果しか見なくても通用していた「主観評価」から、
しっかり報われる「定量評価」へ。
■みなさんの現場には、
いくつ
緩流マネジメントが残っているでしょうか?
逆に、
いくつ
激流マネジメントが行なわれているでしょうか?
いまも多くのコンサルタントや学者が、
緩流の時代からまだ目を覚ましていないので、
持ち込んでくるほとんどが、
緩流時代の研修や手法です。
実際、
そのコンサルタントや学者が、
「どれだけ成果が上がったか?を効果測定するように」
と、その方法とともに、
効果測定を要求してくることは、
なかなか無いのではないでしょうか?
効果測定を求めないコンサルタントや学者だとすれば、
それはやはり、
実効性がなくても通用していた
緩流くだりの時代の人たちだということでしょう。
マネジメントの領域においては、
みなさんの目にウロコを入れにくるコンサルタントや学者が
いかに多いことか、
判ることでしょう。
「効果がある気がする」
といって取り入れている場合ではありません。
目からウロコが落ちる、
本当に効果のある施策を提案してくれるコンサルタントを
見抜かれることをお勧めします。