渡る世間でも活かせる! アドラー心理学の実践方法

渡る世間でも活かせる! アドラー心理学の実践方法

■アドラー心理学は、
とても良いことも言っていますが、
思い切ったところがあるため、
現実の社会生活においては雑に見えるところがあるように感じます。

それは、
みなさんの中にもお心当たりがある方があるのではないでしょうか?

(1)
たとえば、アドラーは、
「人生の悩みの全てが人間関係の悩みだ」
と言い、
確かに、ほとんどのことが人間関係の問題と言えるでしょう。

仮に、
「死んだ父に謝りたい」
「数十年後になる孫の結婚をいわってやりたいが、自分が生きているかわからない」
といった、一見物理的な問題のようなことでも、
自分と相手との関係性を
どのように自分の中で構成するか?という人間関係の問題だと
考えることができます。

しかし、すべてかといえば、
そんなことはありません。

たとえば、
日々、身体に苦痛をもたらす病気は、
どんなに人間関係がよくても解決しません。

(2)
また、たとえば、アドラーは、
「勇気づけが大事だ」
と主張しています。

患者サービス研究所では、
「承認」
という言葉が最も近いと解釈していますが、
アドラー心理学では、おそらく
encourageを直訳しているらしく、
「勇気づけ」
となると、
「やる気がある人を励ますことが大事」
というニュアンスになってしまいます。

しかし、
人間には頑張れない時もあるし、
何かに挑む必要がない時もたくさんあります。

それでも味方になってもらう時、
人は大いに支えられるのですから、
「勇気づけ」
といったなにかへの前進を前提とした言葉よりも、
そのままに受け入れる
「承認」
と言った方が良いでしょう。

(3)
さて、そうした
「アドラー心理学って、そうなの?!」
とわたしが感じる最大の点は
最も有名なフレーズです。

すなわち、ベストセラーになった書籍のタイトルでもある
「嫌われる勇気」
という言葉です。

簡単に言えば、
「人は、好かれようとするから
自分を抑制して苦しむ。
だから、それをやめて、
嫌われても良いと思えば、
自分を抑制する苦しみがなくなるよ」
という提言と考えて良いでしょう。

たしかに、その通り。
ですが、わたしにはやや雑に思えてなりません。

■なぜなら、
実際の社会生活では、
「それができたら苦労しない」
ということが多いからです。

嫌われる勇気を持ってしまうと、失うものも多いのですから。

たとえば、
上司に嫌われたら左遷されてしまうかもしれません。

上司に逆らったら望むような仕事ができなくなるかもしれません。

堂々と意見を言ったものの、
それが煙たがられて昇級しなかったということもあります。

姑に嫌われたら、いつか同居することになった時にひどいことになる。

・・・などなど。

嫌われる勇気を持って、自分を抑制せずに解放すると、
その時は楽になる反面、
失うものも大きい、ということが多々あるものです。

以前、TBSで放送されていた
「渡る世間は鬼ばかり」
はまさに、
あちらを立てればこちらが立たず、
それでもあちこちぶつかったり支え合ったりしながら
生きていかなければならないのが
人生です、という話で、

単発スペシャルも含めれば28年も続いているのは、
「嫌われてもいいじゃないか」
では済まないのが人間の社会生活の摂理だということの
証左のドラマだからでしょう。

そう考えれば、
「嫌われる勇気を持とう」
などというのは、
ある意味、無責任でさえあるのではないでしょうか?

■では、
自分の心を抑制することなく、相手との関係性も維持するには、
どうすれば良いでしょうか?

持つべきなのは、
「嫌われる勇気」ではなく、
「諦めてもらう勇気」
ではないでしょうか。

嫌われても良いと思って、
自分を守るあまり、相手の価値観を軽んじると、
たしかに自分を抑制して苦しむことはなくなり、
確かに嫌われますが、
関係を悪くするので、その後に悪い影響しか残りません。

これでは、自分を解放するけれど
関係を壊してしまうので、
「嫌われる勇気」
を持つことは大きな代償をともないます。

では、どうするか?

自分の心を犠牲にしない程度に、
相手の価値観を尊重して、
無理のない範囲で合わせてあげる、ということです。

あながち相手を軽んじているわけではないので、
嫌われたり憎まれたりすることは避けられます。

むしろ、
自分が無理なくできる範囲ではありますが、
相手を尊重して合わせるのですから、
「ここまでやってくれたのか」
と感謝されるでしょう。

「ここまでやってくれる人はいない」
と感じられれば、
信頼されるでしょう。

嫌われるどころか、
結局は、
次の機会にも
「ぜひ、あなたにそばにいて欲しい」
とまた選ばれる存在になる可能性もあります。

「自分の味方なのだ」
と感じられた人は、
嫌われるどころか、
相手にとってかけがえのない存在となるのです。

そして、
「これ以上、無理を言うのはやめよう」
と、多くを求めることを諦めてもらうことができるのです。

なので、
「嫌われる勇気」を持とう
ではなく、
「ここまでやってくれたのだから、
これ以上、無理を言うのはやめよう」
と、
「諦めてもらう勇気」を持つこと
をお勧めします。

※もちろん、
自分を守りながらも、
それなりに
「相手を尊重して合わせているんだよ」
ということが相手に伝わらなければ、
感謝されることも良い関係になることもありませんので、
そこには、
表現する工夫が必要です。

表現方法については、
また別の機会にお伝えします。

■これは、
「自分を犠牲にして好かれる道をとるか?
自分を守って嫌われる道をとるか?」
という単純で雑な問題ではありません。

自分を守りつつも、
相手を尊重すれば、
良い関係を築くことができる可能性がある、という
「関係性デザイン」
の話なのです。

上司と部下
同僚同士
職員と患者さん・利用者様
親子
兄弟
親戚同士
近所同士
先生と生徒
夫婦
恋人同士
・・・とあらゆる人間関係に言えることでしょう。

したがって、職場であれば、
職員同士が、つねに、
「あなたを尊重しているよ。
無理のない範囲で応援するよ」
というメッセージを送りあっていれば、
どんなに良い人間関係になるでしょうか?

というより、
お互いに
「あなたを尊重しているよ。
無理のない範囲で応援するよ」
という職場において、
人間関係で悩む理由が存在しないでしょう。

では、どうすれば、職員同士がつねに
「あなたを尊重しているよ。
無理のない範囲で応援するよ」
というメッセージを送り合う組織を創ることができるでしょうか?

そのための最もシンプルで、
知識も技術も要らない方法が、
患者サービス研究所の提唱する
「HIT-Bit」
です。

HIT-Bitについては、1Dayセミナーを行なっています。
・10/24(土) 13:30~16:30
・11/21(土) 13:30~16:30
・12/19(土) 13:30~16:30