■「いまの日本で働くことが、恵まれていることに気づけば、
職員は、もっと自分から積極的に働いても良さそうなもの。
なのに、なぜ、自走組織にならないのか?」
と不思議に思っている人も多いことでしょう。
こうなってしまうのは、
これまでの長い歴史の中で培われてきた
「指示命令体質」
が、職員の奥深くに染み付いているからです。
職員だけでなく、今日の社会を作ってきた
経営者・上層部の世代の方々にも染み付いています。
しかも、驚くほど!
■以前の日本では、
高度経済成長期、
大量生産の時代でした。
そのため、
「これと同じものを作れ。
そのために決められた作り方を守れ」
それが企業だったのです。
つまり、明確な指示命令と忠実な業務遂行が
美徳だったのです。
その作業そのものに魅力を感じなくても、
頑張って働いていれば安心して暮らせる時代でした。
このため、
「大事なことは経営者・上層部が決める」
「大事なことにほど、部下は口出ししない」
のが当たり前でした。
■しかし、こんにちでは、
事業活動にもさまざまな側面があり、
その側面に関わった職員にしかわからないこと、
思いつかない解決策、
実行することができない対策があることが
当たり前の時代になりました。
つまり、打って変わって、
ボトムアップがなければ、
生産性が上がらない状況になったのです。
■そこで、世間では
「ボトムアップが大事」
ということになり、
にわかに、
職員からの意見を求めてみたり、
職員に考えさせる研修を行ってみたり、と
職員の参加を求める発想が生まれてきました。
しかし、それらがことごとくうまくいっていないのは、
指示命令体質があまりにも深く染み付いているからなのです。
そんな自覚はあまりないかもしれません。
■では、たとえば、
物品を購入してほしいと部下が申し出てきた時、
みなさんの現場の管理職はどう応じているでしょうか?
「わかった。やってみる」
と、管理職は、
稟議を通し購入するのが自分の仕事だと思って
責任を負ってはいないでしょうか?
しかし、よく考えれば、
稟議書を書くのは管理職ですが、
そのための材料を提出するのは部下でなくてはなりません。
なぜなら、
その物品が必要だということを
最も痛感しているのは、その部下本人なのですから。
このように、部下が材料を提示するべきなのに、
上司が、みずから進んで稟議を通す責任を負ってしまう習癖を
「負責病」
とでも呼ぶことができるでしょう。
こうすることで、
部下は
「言えば買ってもらえる」
と、稟議についての当事者意識を持たず、傍観者になり、
稟議が通っても上司に感謝せず、
稟議が通らなければ上司に不満を持つ、
という他責発想の組織、依存体質の組織になってゆくのです。
こんなことをしていては、
永遠にボトムアップが当たり前の組織にはなりません。
■また、たとえば、目標管理制度を実施するときに、
上司が部下に
「期日までに、必ず目標シートを出しなさい」
「期日までに面談をするので、必ず時間をとるように」
と指示・命令していることが多々あります。
目標管理制度は、
文字通り、個人が目標を掲げる制度であり、
ノルマ管理制度ではありません。
ということは、目標を掲げたくない職員は、
掲げなければ良いのです。
その代わり、その職員については、
人事評価の材料は乏しくなりますから、
客観的な評価ができないので、
上司の主観で評価されることになります。
職員がそのことを理解し、
みずから目標を掲げ、自分から面談を申し込むように促してこそ、
ボトムアップ型の組織づくりです。
せっかく
「自分から目標を掲げて自走組織になろう」
といって始めた目標管理制度を、
指示命令体質の中で強権的に運用しているので、
結果、自走化と反対の取組となってしまい、
台無しになっているというわけです。
これも、上司の方が、
「部下が黙っていても、ちゃんと評価をしてあげる」
という責任をみずから負っており、
負責病と言えるでしょう。
■患者サービス研究所の研修では、
プログラムの最終日には、
各部署から発表してもらうことができますが、
しばしば時間内に、全部署が発表しきれない事態がおきます。
すると、多くの病院では、上層部の方が、
「時間を延長してでも・・・」
「もう1日設けてでも・・・」
と、全部署にチャンスを与えようとする傾向があります。
しかし、各部署から頼まれてもいないのに、
上層部が、そのような配慮をして、
「お行儀よく待っていればちゃんと順番を与えてもらえる」
という状況を与えることが
かえって受け身の姿勢を養っているのです。
「みんなに平等にアピールするチャンスを与えてあげなければ気の毒」
とばかりに経営者・上層部・上司が、
一生懸命気を使っていると、
部下職員は、それが当たり前になり、
「順番が回ってこないなんて、ひどいよね〜」
と他責発想、依存体質になってしまいます。
これも典型的な負責病です。
自律して欲しければ、
時間切れになれば終わり、とすることによって、
職員が、
「時間がなくなるのは当たり前。
だから、先を争ってでもアピールしよう」
と考える心を養うことです。
あるいは
「もしアピールするチャンスがなくなったら、
他にどんな方法でアピールできるか?」
を工夫して、
経営者や上層部が思いもかけなかった方法で
アピールしてくるようになれば、
これ以上のボトムアップはありません。
■このように、
多くの組織がなかなか自走組織にならない原因をたどってみれば、
それも自然なことだということがわかるでしょう。
このような状況なので、
経営者や上層部・上司が、
ときどき思い出したように、
「ところでなぜきみたちは
もっと自分で考えようとしないのだ?」
と言ってみたり、
取ってつけたように、
職員から意見を募ってみたり、
職員研修を行ってディスカッションさせてみたりしても、
「突然、なぜ?」
と職員には唐突に感じられ、
一向に
自律進化体質にはならないのです。
組織の中でこの負責病が現れているパターンについて、
上述した事例はごく一部です。
ほかにもまだまだあります。
管理職研修やコンサルティングの際に
こうした事例を挙げるたび、
「あ、そうか!確かに進んで責任を負っていた!」
と、上層部の方々からは驚かれており、
まだまだたくさんあります。
それだけ、
多くの組織の経営者、上層部から部下職員に至るまで、
この体質が染み付いているからです。
というわけで、さまざまな病院や企業にお伺いして、
相談するたびに、
「恐いな〜、恐いな〜、これも負責病だなぁ〜、
現場職員がどんどん依存体質になっちゃうなぁ〜、
恐いな〜」(稲川淳二風)
と、いつも痛感させられています。
■とはいうものの、
それを変える方法がないのか?というとそんなことはありません。
患者サービス研究所の
HIT-Bitプログラムでは、
難しい知識も技術も不要であり、
どんな不器用な管理職でも、
どんな現場でも、
確実に自律進化組織になることが実証されています。
というより、組織体質を変えるには、
誰でも簡単にできるシンプルな手法でなければなりません。
なぜなら、無理なく継続できる方法でなければ
体質は変わらないからです。
その具体的な方法は、いずれまたご紹介できれば嬉しいです。
■その具体的な方法についてお伝えする
1Dayセミナーを行なっていますので、
よろしければ、ご一考ください。
直近では、
7/28(土)
8/19(日)
9/29(土)
です。
いずれも、13:30〜16:30、東京です。
主催は、
およびその企業部門である
「人事・組織開発研究所」となっています。