■組織を活性化したい場合、どうしても、
「自主性を重んじる」
ということになるでしょう。
しかし、完全に自主性を重んじても、
決して良い方向に進むとは限りません。
というのも、中には成長したいと思う人もいれば、
大多数は特に成長したいと思わないためです。
なぜなら、どこの職場でも、与えられた業務があり、
その業務に関しては、
期初に目標を設定され、
期中では逐一、進捗を管理され、
期末には評価されて報酬に反映されるため、
あたかも、業務に専念して、
他のことには脇見をするな、と、言われているようなものだからです。
そして、個々の職員は、
眼前の担当業務に専念するあまり、
他のことがどんどん視界から消えてゆくのです。
このように眼前のことに集中するあまり、
他のことが視野から見えなくなってしまうことを、
トンネルの中を高速で進むと、
視野が狭窄することになぞらえて
「トンネリング」
と言うそうです。
このトンネリングには、
若手もベテランも、女性も男性も問わず。
どんな人でも陥りがちです。
しばしば
「手段が目的になってしまう」
というのも、このトンネリングです。
■そのため、自主性を重んじても、
その中の一人ひとりがトンネリングに陥っていれば、
当然、新しい発想も取組も生まれようがありません。
むしろ、余裕がないために、新しいことを排除しようとする
傾向すらあります。
どんな職場でも、新しい変化が嫌われるのはそのためです。
個々がトンネリングに陥ることすら尊重されてしまうからです。
これでは、柔軟に進化するどころか、
是正しようもなく硬直化した組織になってしまいます。
■では、どうすれば、
自主性を重んじつつも、
柔軟で変化に強い組織を創ることができるのでしょうか?
それは、つねに
「トンネリングに陥っていないか?」
を問いかける仕組みを持つということです。
誰でも常にトンネリングが起こるということを前提にして
組織創りをする方が、
科学的で合理的であるとも言えます。
■つまり、
「自主性を重んじる」
とは、
「手放しで放置する」
ということではなく、
「常に、強制的に振り返らせる機能を持つ」
ということでなければなりません。
■ちょうど、今の日本は、民主主義と言いつつも、
「手放しで放置する」
状態となっているため、
軍備増強や武器輸出、自衛隊派兵へ向けての
改憲の論議も盛んで、
必ずしも良い方向に向かっているとは言えません。
その点、ドイツは、
「手放しだけの民主主義は、間違いも惹き起こす」
ということを第二次世界大戦で学んだことから、
今日では、
憲法裁判所を持ち、積極的に憲法審査をすることで、
「常に、強制的に振り返らせる機能」
を持って、
同じ過ちを犯さないよう、
常に視野を広げているのです。
これらのことからも、単なる
「自主性を重んじる」
だけで放置するのは危険であるということと、
「強制的に振り返らせる機能」
重要であるということが判るでしょう。
■活性化したい場合には、
もちろん、
一人ひとりの自主性を重んじなければなりません。
ただし、それがより良い方向に進むためには、
一人ひとりがトンネリングに陥ることがないよう、
組織の中に、
「常に、強制的に振り返らせる機能」
を備えることも、同時に必要不可欠となるのです。