負責病の実例(1) 「人事評価」

負責病の実例(1) 「人事評価」

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■なぜ、自律進化しないのか?

 

それは、上層部・上司が、

部下職員がするべきところを、わざわざみずから責任を引き受けてしまう

「負責病」

になっており、その結果、部下職員が

「依存病」

になっているから、にほかなりません。

 

■たとえば、人事評価です。

 

こんにち、ほぼすべての組織においては、

職員の人事評価は上司がするものであり、

部下職員本人には原則として口出しをさせない、というのが常識になっていると言えるでしょう。

 

しかし、上司が、部下の

仕事ぶりや、技能・知識、マインドなどを、把握することが、可能でしょうか?

 

例えば、今日、部下一人ひとりが、どんな気持ちで帰っていったか、

把握できているでしょうか?

 

そこまで掌握できている上司は稀でしょう。

 

そもそも、一人の部下でも、その内面を把握することが難しいのですから、

部下が複数いた場合には、その管理をするのは実質上、不可能と言えるのではないでしょうか?

 

それでも、世の中のリーダーシップ書には、

そこをなんとか部下とのコミュニケーションを上手にとって、

部下の働きぶりからいまの感情までをも把握することが

上司の役割だ、と書かれていることが多いのです。

 

このように、不可能への挑戦を強いられているため、

世の中のすべての上司が悩んでいると言っても良いでしょう。

 

このため、評価基準には、

「計画性があるか?」

「協調性があるか?」

「積極的に臨んだか?』

「統率力があるか?」

などの事細かな項目が羅列されているにも関わらず、

最終的には、上司の主観判断によって評価がつけられている、というのが実情ではないでしょうか?

 

「なぜ、この項目が、4ではなく3なのでしょうか?」

と部下から問われても、主観評価なので、満足に説明ができる上司は少ないものです。

 

そのため、公平・公正にするために、多くの組織で行なっているのが、

上司の上司が登場して、

「二次評価をする」

という方法です。

 

その結果、上司以上に判っていない人間が評価に介入するという、

考えてみれば本末転倒なことが、

ごく当り前のように起きていることに、誰も異論を唱えないのも不思議です。

 

また、上司は、部下に気を使いながら話しかけ、

顔色を見て思いや考えを聞いてやり、

時にはうまく励まし、時には厳しく指導しなければならないとされています。

 

世間が

「上司は、部下に関する情報を取りにゆくもの」

としているので、部下も、

「自分たちは仕事に専念しているので、上司はきちんと自分たちの状況を把握して公正に評価してほしい」

と依存しています。

 

公正に評価してもらえて当り前、公正に評価されなければ不満、という認識です。

 

これでは、上司と部下のどちらも幸福になることはなく、

また関係性が良くなることもありません。

 

■自律進化させたいのであれば、

人事評価に関わる情報こそ、部下職員がみずから発信するようにした方がよい

ということが見えてくるのではないでしょうか?

 

「こんなことに気づきました」

「こんな相談をしました」

「こんな提案をしました」

「こんなことを実践しています」

など、自分の意欲や姿勢や努力を示す事実を、本人から挙げさせるのです。

 

こうすれば、客観的に事実をもとに評価することになるので、

なぜか判っていない二次評価者が介入する必要もありません。

 

なにより、上司が目も手も行き届かない部下に関する情報が、

自然に挙がってくるのですから、

「上司が把握するべき」

という精神論に依存する必要もありません。

 

また、部下自身が情報を挙げることになるので、

「ちゃんと見てもらえていなかった」

と上司を恨んだり不満を抱く必要もありません。

 

■そもそも、

職場は学校ではなく、上司は神様ではありません。

 

「ひたむきに働いていれば、きちんと評価してもらえると思ったら大間違い」

なのです。

 

なぜなら、上司・部下・全ての人が、異なる時、異なるところで生まれ育ち、

異なる体験をして異なる学習をしてきているのですから、

「判ってもらえないのが当り前」

なのです。

 

自分から発信せずに判ってもらえることは、ありえないのです。

 

そう考えてみれば、

自分の評価に関わる情報は自分が発信してゆかなければ伝わらないのは、

当り前でしょう。

 

これまで、なぜ、

「上司が部下を把握するべき」

と、不可能なことの責任を上司が負うとう精神論がまかり通ってきたか?

不思議にさえ思われるのではないでしょうか?

 

1日も早く、上司は「負責病」を卒業し、

部下もまた「依存病」を治すことが大事です。

 

さもなければ、いつまでも自律進化の組織体質に変わることはありません。