負責病の実例(3) 「問題解決」

負責病の実例(3) 「問題解決」

■なぜ、自律進化しないのか?

 

それは、上層部・上司が、

部下職員がするべきところを、わざわざみずから責任を引き受けてしまう

「負責病」

になっており、その結果、部下職員が

「依存病」

になっているから、にほかなりません。

 

■たとえば、問題解決です。

 

 患者サービス研究所では、

「職員が何でも話せる関係性を作りましょう」

と、様々な意見が上がりやすくなるコミュニケーション・モデルを

提案していますが、

しばしば、現場のリーダーの方々からは、

「解決できない問題がどんどん出てきたらどうするのか?」

と質問されます。

 

「せっかく部下が問題提起してくれても、

解決できなかったら、

『無駄なことを言わされた』

と、部下が不満に思うのではないか?」

と、心配なのだそうです。

 

実際、部下職員の中には、

「きちんと整備されていなければ、安心して働けません」

と、問題があるままでは働けないと主張する人もいます。

 

そのため、

「問題があれば、部下職員が安心して働けるように、

解決してやらなければならない」

と、上司が、つい責任を負ってしまうのも、

判らなくはありません。

 

◾️しかし、考えて見てください。

 

そもそも、いかなる組織においても、

解決できない問題がたくさんあるのが、現場ではないでしょうか?

 

医療現場なら、

待ち時間が長いのが解消しないことも、

来週の当直の先生が決まっていないことも、

病床稼働率が定められた水準を維持するようにすることも、

未収金を確実に回収することも、

できるという保証があることなど一つもありません。

 

解決できない問題が山ほどある中、

知恵と力を出し合い、

より良くしてゆくことこそが、

他のどの部署でもなくその部署に働いている職員のミッションなはずです。

 

と同時に、

部下職員がみずから問題に立ち向かい、

次善策、三善策を打ち出して、

乗り越えて行けるよう、

足腰を鍛えさせるのが上司の責任であるはずです。

 

しかし、上司が、

問題を解決してやり、道を平坦にしてあげる責任を

進んで負っていては、

部下職員は、いつまでも

問題を乗り越えてゆく当事者の自覚を持つこともできません。

 

どんなに状況が変わっても、

その部署と職員たちが、

自分たちで乗り越えて行ける知恵も力も身につくことはありません。

 

また、解決すべき問題が無いところで働くことを期待するならば、

その職員は、

知恵も力も期待されることもなく、

自分らしさを活かすことを放棄していることにほかならないのではないでしょうか。

 

◾️一般的には、

「部下が気持ちよく安心して働ける環境を整えてやるのが上司の役割」

と、リーダーシップ書にも書かれています。

 

もちろん、できるところは、そうしてやれば良いでしょう。

 

しかし、それはあくまでできるところだけであり、

そもそも、解決できない問題が山ほどあるのが現場なのです。

 

「原則として、上司が解決してくれる。

例外的に、解決できない問題もある」

という前提を、

「解決できない問題が山ほどあり、みんなで策を講じるのが原則。

例外的に、上司が解決してくれることもある」

という前提へと、

一日も早く切り替えることをお勧めします。

 

◾️「解決できない問題が出てきたら部下が気の毒」

と、部下を守ろうとすることは、

まさに上司の負責病であり、

部下を依存病にする効果しかありません。

 

もし、部下から

「この問題が解決しなければ、わたしたちは進めません」

と言われたら、上司は、

「解決できない問題があるからこそ、

その代わり自分たちで何ができるのか?を

みんなで考え、より良い成果を出すことができるチャンスなんだ」

と、

責任と権限を改めて差し戻してあげることです。