■一定以上の規模の企業では、その多くが、
社員の評価制度を設けて、
できるだけ実態に即した適正な評価を実現して、
「やっている人が報われる会社にしよう」
としています。
そして、
階層別の評価項目、
職種別の評価項目、
職制別の評価項目
……など、こと細かに評価項目を設けて、
社員を評価できることを目指しています。
そこには、
「協調性をもって取り組んだか」
「創造的な仕事を行なったか」
「計画性を持って業務を進めたか」
「つねに効率性の向上を図ったか」
などの項目がならんでいるのではないでしょうか。
そして、上司が各項目に、
たとえば5段階評価で、点数をつける、ということになっていることが
多いのではないでしょうか。
■しかし、問題は、その各項目に対して、
「上司が、どのように点数をつけるのか?」
でしょう。
「何をもって、協調性が3なのか」
「なぜ4ではなく3か」
「なぜ2ではなく3か」
は、何を持って決めているか?というと、
つまるところ、上司の主観で判断されていることがほとんどでしょう。
そして、主観評価となると、
上司がその部下に抱く総体的なイメージによって評価される傾向にあります。
つまり、イメージが悪い部下に対しては、
総じて厳しい点数をつけることになりがちで、
「この項目だけはちゃんとやっている!」
という高得点をつけることは稀です。
逆に、イメージの良い部下に対しては、
総じて優しい点数をつけることになりがちで、
「この項目だけは全然なってない!」
といった厳しい点数をつけにくい、ということはみなさんも心当たりがあるでしょう。
このように主観評価は、
いわばイメージ評価になりがちなのです。
これでは、
せっかく何十項目もの評価項目をこと細かに定めても、
「事態に即した適正な評価」
を実現することはできません。
たとえば、
小学校の通信簿のように、10項目でも変わりない結果となってしまうのです。
こうしてみると、人事評価は、主観評価ではなく、
客観的な事実を元に評価する
「客観評価」
にするべきだということがわかるでしょう。
■なお、もちろん、ここでいう「客観的事実」とは、
「生産性が上がった」
「増収につながった」
などの成果が出た事実に限ってたものではありません。
「気づいた」
「気づいて、みんなを啓発した」
「自分なりに改善してみた」
「部内のみんなに新たな施策を提案した」
「新しい取組を実践した」
などの、成果未満の言動も重要です。
なぜなら、協調性、創造性、計画性、効率性などの項目で
把握しようとしたのは、
成果未満の、職員の要領や意欲、姿勢、努力などだからです。
■ところで、
なぜ、大多数の企業・組織が、
懸命に「実態に即した適正な評価」を模索しているにも関わらず、
主観評価に陥ってしまうのでしょうか?
それは、部下の客観的事実を、上司が収集しきれないということを
わかっているからに他なりません。
上述のような、
「気づいた」
「自分なりに変えてみた」
などの事実を、すべての部下について上司が把握しきれないからです。
では、なぜ、上司が部下の情報を把握しきれないのでしょうか?
それは、部下に関する情報については、
「上司が獲りにゆくもの」
という前提があるからです。
自分も業務を抱えて忙しいにも関わらず、
様子を見て、部下の状況に合わせて、
観察したり、声をかけたり、報告させたり、といったことをして、
部下の情報を、上司が獲りに行かなければならない、といった
責任を、上司が負わされているのです。
ところが、これはそもそも物理的に極めて困難なことです。
部下が複数いれば、もはや不可能でしょう。
では、なぜ、不可能であるにも関わらず、
「部下の情報は上司が獲りにゆくもの」
という前提になっているのでしょうか?
これこそが、
「負責病」
であり、その背景には、
「指示命令体質」
があるのです。
■指示命令体質のもとでは、
「大事なことは上司が決める」
「部下は黙って従うもの」
ということが大前提となっています。
このため、
「部下の情報は、上司が獲りにゆくもの」
となっているのですが、
現実には、
「物理的には不可能」
なので、いくら人事評価の項目をこと細かに定めても、
結局は、
「主観評価にならざるを得ない」
という結果になっているというわけです。
■では、どうすれば良いか?
自律進化体質のもとでは、
「部下が答案を挙げて、上司が最終決済をする」
ことになっており、
「部下は自分から発信するもの」
ということが大前提となっています。
このため、
「部下の情報は、部下が発信してゆくもの」
となっているので、
「上司はその情報をもとに検討すればよい」
ので、人事評価の項目をこと細かに定めれば、
その各項目について、上司は部下からの情報をもとにして、
「客観評価をすることができる」
というわけです。
■では、部下はどのように情報発信すれば良いのでしょうか?
そのフレームもなしに、
「自分から上司に伝えなさい」
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