■昨年、
訪問先近くのロッテリアでコーヒーを飲んでいたとき、
近くのテーブルで、男子高校生が話しているのが聞こえました。
「新川優愛、結婚だって!」
「ショック。相手は?」
「有名人じゃないよ。ロケバスの運転手だって」
「チキショー、ロケバスの運転手って、どうしたらなれるの?」
■むかしのホームドラマで、こんなシーンがありました。
朝、若者が目を覚まして階段を降りてくると、
ちょうど訪ねてきていて玄関にいた知り合いと目が合う。
片方の鼻の穴に綿を詰めているその若者は、
つらそうな表情で頭をさすりながら、
「ああ、まいったまいった」
知り合いは、
「どうしたの!?」
「いや、昨夜、呑みすぎちゃって・・・」
「へ~、呑みすぎると、鼻から綿が出ちゃうの?」
■笑いの公式の一つに、わたしは、
「因果関係誤解」
があると考えています。
因果関係を誤解することは、たしかに滑稽です。
しかし、実は、
すべての人間の間違いの原因でもあり、
幸せになれない根源でもあるのです。
たとえば、
「トップ・ダウン型の組織はダメだ。フラットな組織にしなければならない」
と考えた経営者が、
「役職で呼ぶのは禁止」
と言い出すことがあります。
しかし、
「おい○○、これやっておけ」
「◇◇部長、わかりました」
「○○、なんで指示した通りにやらないのだ」
「すみません、◇◇部長」
というやりとりだったのが、
「おい○○くん、これやってくれ」
「◇◇さん、わかりました」
「○○くん、なんで指示した通りにやらないのだ」
「すみません。◇◇さん」
となっただけで、
さっぱりフラットになっていない、
ということが多々あります。
これは、そもそも、
役職で呼ばない
→上下関係がなくなる
→フラットで風通しの良い組織になる
と、因果関係を誤解していることによって起こっている間違いです。
実際は、原因と結果がその逆で、
風通しの良い組織であれば
→上下関係がなくてもよく
→役職で呼ぶ必要がなくなる
という因果関係なのです。
ちょうど、
「太っている人は、
ダブルバーガーとラージサイズのコーラが好き」
だと思っているのと同じです。
実際は、原因と結果がその逆で、
ダブルバーガーとラージサイズのコーラを頼むような人だから
太っている、という因果関係なのです。
■世間では、
『認知行動療法』
という技術があるそうで、
人は、思い込みによって苦しんでいるので、
その思い込みを治すことが大事だとされています。
思い込みは、概ね7つ挙げられています。
- 感情的きめつけ
- レッテル貼り
- 結論の飛躍
- 過度な一般化
- 「べき」思考
- マイナス化
- 拡大解釈・過小評価
しかし、このように分類しなくても、
いずれも
「過去の体験によって誤った学習をした」
ということでしかありません。
そして、これらが「症状」なのではなく、
人間は、
「自分だけのごく狭い体験から学習してしまう生き物」
なのです。
(人間に限らず、すべての人間がそうですが)
■こうしてみると、多くのことにおいて、
「原因を変えれば、良い結果を得られる」
ということが、スッキリと見えてきます。
□会議で、せっかく大事な議題をあげても
たいてい、みんなが反対するのはなぜか?
そうなるのは当然なので、
会議の前を変えれば良い、ということです。
□せっかく一生懸命に謝罪しているのに、
相手に許してもらえないのはなぜか?
そうなるのは当然で、
謝罪する前を変えれば良い、ということです。
□せっかくコーチングを習ったのに、
職場で、部下や上司とのコミュニケーションを良くすることができないのはなぜか?
そうなるのは当然で、
部下や上司と対面する前を変えれば良い、ということです。
□研修を行なって、職員の意識づけを図っているのに、
なかなか定着しないのはなぜか?
そうなるのは当然で、
研修の前を変えれば良い、ということです。
□会議では何でも言えるように安心安全な場作りをしているはずなのに、
意見が出てこないのはなぜか?
そうなるのは当然で、
会議の前を変えれば良い、ということです。
□管理職には、管理職の自覚を持ってもらうべく、
管理者教育を施しているが、
一向に意識が向上せず、
業務をこなしてさえいれば良いと考えているのはなぜか?
そうなるのは当然で、
管理職になる前を変えれば良い、ということです。
□さまざまな施策を講じても、まもなく
職員は決められたことだけをやり、
疑問を感じたりより良くしようという視点を持たず、
たいてい形骸化してしまうのはなぜか?
そうなるのは当然で、
施策を持ち込む前を変えれば良い、ということです。
■そして、
ボトム・アップ型の組織を目指して、
さまざまに教育しているのに、
なかなか、自律進化体質にならないのはなぜか?
そうなるのは当然で、
そうした施策をする前を変えれば、確実に変わるということです。
■わたしたちは、
「自分だけのごく狭い体験から学習してしまう生き物」
だという前提を、つねに忘れてはいけません。
そして、
「いま目の前で起きているこの事象の、本当の原因はなにか?」
と、つねに因果関係をたどれば、
誤った判断に陥ることを避けられるはずです。
■「なぜか?」
という持って行き場のない不満を抱えることは、
原因が見えていないことによる、出口のない苦しみです。
「そうなるのは当然の結果だ」
と、原因を見極めてゆくことをお勧めします。
このように、
人間の心理構造を前提に、
因果関係から考え、
本質を見極めて施策や研修を設計しているコンサルタントを選ぶことをお勧めします。