■スタッフに、大切なことを伝えている。そして、スタッフも了解してくれている。
にも関わらず、その意図が現場の向上につながっていない、ということがあります。
そんな場合、どう改善すればよいでしょうか?
- 同じ話を何度も聞かせて徹底してみる
- どう理解したかスタッフに言わせてみる
- どう理解したかスタッフに書かせてみる
- 理解が間違った行動を見つけては注意して回る
- 伝えている「つもり」をやめる
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■みなさんも、
時として、
「なぜ、部下たちと話し合っているのに、うまく伝わらないのか?」
「なぜ、教育しているはずなのに、教えたことが現場に浸透しないのか?」
と感じることがあるでしょう。
なぜ、そうなるのか?
その原因は、
受け手が、
その言葉の持つ「一般的な意味」として
受け止めているからに他なりません。
言葉の「一般的な意味」は、
みなさんの組織の中で使われることを
想定していません。
しかし、みなさんが何かを訴える時には、
実は、
自分の価値観をその言葉にこめて伝えているものです。
ところが、その言葉を使えば、
受け手であるスタッフたちは、
「一般的な意味」
だと受け止めてしまうので、
お互いが噛み合わない、ということが起こるというわけです。
なので、
みなさんが重要なことを伝える場合には、
自分たちにとって価値のある定義を持って
その言葉を使うことが必要なのです。
■たとえば、
サービスとホスピタリティの違いについては、
さまざまな見解があり、
「定形的な行動か、不定形な行動か、の違いだ」
という学者もいれば、
「反復的な行動か、単発的な行動か、の違いだ」
という学者もいます。
「有償か無償か、の違いだ」
「作業的行動か創造的行動か、の違いだ」
・・・などなど。
しかし、わたしたちにとって最も重要なのは、
可視的なことではなく、
「提供者がどんな気持ちでするか?」
「提供された側がどんな気持ちになったから?」
ではないでしょうか。
つまり、自律進化組織研究所では、
「やりたくてやるのがホスピタリティ、
やりたくなくてやるのがサービス」
と定義しています。
つまり、
提供者が楽しんで幸せになり、
その結果、提供される側も、
自分に心が向けられていることに幸せが生まれることが
ホスピタリティとなります。
その行動が、
無償でなくても、
反復的な行動であっても、
可視的なことは問題ではない、という解釈です。
このように理解した方が、
今後の行動に参考になり、
価値のある定義となるのではないでしょうか。
■また、みなさんは、
「コミュニケーション」
をどのように定義しているでしょうか?
辞書では、
「意思の疏通」
などと説明されていますが、
それで良いのでしょうか?
みなさんがわかって欲しいのは、
その一般的な意味あいの「コミュニケーション」では
ないはずです。
職場において価値のあるコミュニケーションとは、
「相手に勇気や元気を与える」
情報の発信と受信ではないでしょうか。
ということは、
みなさんが
「よくコミュニケーションをとりましょう」
という場合、
「相手に勇気や元気をもたらすようなやりとりをしましょう」
と言い換えた方が良いのかもしれません。
これまで、敢えてそのように伝えていなかったために、
「コミュニケーションはとっているが、
一向に協力的な組織にならず、
コミュニケーション・エラーが減らない」
ということが起きていた可能性が高いと言えるでしょう。
■よく
「なんでも言い合える風通しの良い職場」
といった表現をする人がいる通り、
そんな風通しの良い職場を作れたら良いと
考えている経営者・幹部は少なくないでしょう。
とはいうものの、その一方で、
「本当になんでも言い合えるようになったら、
ネガティブな意見も交わされるようになってしまうのではないか」
と恐れいている人がよくいます。
みなさんが価値があると考えている
「なんでも言い合える風通しの良い職場」
とは、正確に言えば、
「前向きなことならなんでも言い合える風通しの良い職場」
ではないでしょうか。
前向きとは、
組織・会社にとって良い、
クライアントにとって良い、
スタッフにとって良い、
・・・のいずれかに該当するということでしょう。
なので、みなさんが
「なんでも言い合える職場にしよう」
という場合、
「組織やクライアントや自分自身にとって
より良くなるようなことならなんでも言い合える職場にしよう」
と言い換えた方が良いかもしれません。
■また、よく
「組織を活性化したい」
という要望を聞きます。
「活性化とは、みんながいろいろと話し合っている活気のある様子」
というイメージを持たれていることが多いようで、
それ自体は、良いことなのですが、
同時に、
「ただ趣味やくだらないことでおしゃべりしているだけなら意味がない。
職場は仲良しクラブではないのだ」
という考えもあるようです。
みなさんも同感でしょう。
つまり、みなさんが求めているのは単に、
「会話が、ただ活発に交わされている」
状況ではなく、
「建設的・生産的な会話が、活発に交わされている」
という状況でしょう。
なので、
「各部署が、活性化するようにして欲しい」
というところを、今後は、
「各部署が、建設的・生産的な会話が活発になされるようにして欲しい」
と言い換えた方が良いでしょう。
■この他、
「心に寄り添う」
という言葉について、
「心に寄り添うとは、
クライアントとまったく同じ気持ちになることなのか?」
という疑問もあるでしょう。
もちろん、
「同化」
ではありませんが、
では、
「心に寄り添う」と「同化」の違いは何か、
言語化できるでしょうか?
あるいは、
「自走組織」
という言葉についても、
「自分から進んで行動する組織とは、
全部自分たちで決めて進んでゆく組織なのか?」
という疑問もあるでしょう。
もちろん、
「全権を持つ」
ということではありませんが、
では、
「自走する」と「全権を持つ」の違いは何か、
説明できるでしょうか?
■このように、
一般的な言葉を使う場合には、
そこに自分なりの意味を込めるのであれば、
それを言語化してきちっと説明できなければなりません。
それを怠れば、
スタッフたちは、
「コミュニケーションとは
単なる言うこと、聞くことだ」
と解釈したり、
「なんでも言い合える職場が良いなら、
明日から自分も言いたいことをどんどん言おう」
と理解することになるでしょう。
また、
「活性化とは、ただ単におしゃべりをすればよいのだ」
と誤解したり、
「心に寄り添うとは、
相手と全く同じ気持ちになることだ」
と思い込んだりしてしまうことでしょう。
それとも、
「一般的な言葉なのだから伝わるだろう」
と考え、伝わっているということにしてしまっているでしょうか?
というわけで、
冒頭のクイズの解答は、
[5]の「伝えている「つもり」をやめる」
となります。
実は正確に伝わっていない、という前提にたち、
正確に伝える表現をする、ということです。
■そして、この
「みなさんにとって価値のある意味づけ」
ができているかどうかで、
組織が、
みなさんが目指す方向へ、正しく、速く変わってゆくようになります。
この価値のある意味づけをしている組織では、
スタッフは、
トップや管理職と同じ方向を目指して前進できるからです。
反対に、
意味づけを怠っている組織では、
スタッフは、
「自分なりの解釈」
つまり、
「この辺りまでやれば問題ないだろう」
という独善に陥るので、
組織が一丸となって前進し続けることはできないのです。
普段、何気なく使っている言葉ですが、
重要なワードについては、
決して一般的に使われている意味ではないということを
明らかにし、
みなさんやみなさんの組織にとって
価値のある意味づけをして使うことをお勧めします。