■「上司による部下に対するパワハラが発生している」という情報が上がってきた場合、
どのようにすることが最も効果的でしょうか?
- パワハラを訴え出た部下にヒアリングして該当する上司を注意し部下を救う
- 周囲にヒアリングしてパワハラした上司を突き止め注意し部下を救う
- 管理職対象にパワハラ研修を受けさせ部下を救う
- パワハラについて厳しい罰則を設け部下を救う
- 上司を救う
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■大企業では2020年から、中小企業では2022年から、
改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)が施行されることとなり、
企業は、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。
すなわち
- パワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
- 苦情などに対する相談を受け付ける体制の整備
- パワハラを受けたスタッフへのケアと再発防止
などとされています。
しかし、これらが根治療法と言えるでしょうか?
「これまでもそれなりにやってきた」
という企業・組織の方が多いのではないでしょうか?
また、
パワハラ防止のセミナーでは、
しきりに
パワハラの類型を解説することがあります。
しかし、
それによって解決するのはごく一部でしょう。
なぜなら、
パワハラをしてしまう上司の大半が、
「やりたくてやっているわけではない」
からです。
もちろん、
いじめたくていじめる人もいます。
しかし、
そんな上司は少数であって、
ほとんどの上司は、
部下をいじめたいなどとは考えていません。
上司になる人のほとんどが、
管理職になる前から、
人をいじめるような人間だったかどうかを
考えればわかるでしょう。
管理職になった途端
部下をいじめる性格になったわけではなかったはずです。
また、人をいじめるような性質でない人だったからこそ、
管理職に登用されたはずではないでしょうか。
つまり、
冒頭のような対症療法を行なっていても、
そうした管理職の苦しい立場を理解するところから始めなければ、
いかなる施策も、
本当の解決にはつながらないということです。
パワハラ防止法を契機として、
多くの企業・組織が、
根治療法を講じることを願っています。
■では、なぜ、
「やりたくてやっているわけではない」
と言いつつ、パワハラが行なわれてしまうのでしょうか?
その原因たる構造は、
「上司が、部下を育成し活用する責任を負わされてしまう」
ところにあります。
管理職は、
割り当てられた部下を教育し、
パフォーマンスを上げられるようにすることで、
自分のチームや部署の成果を
上げなければなりません。
そして、
その責任を自分一人に負わされてしまうのです。
仮に、
その部下がどんなに
素直さや謙虚さを持たず、
学ぶ姿勢も成果を出す意欲もない人間だったとしても、
管理職は、
上手に育てて、
仕事をできるようにしなければなりません。
しかも一般的に、
管理職には、そのことについて、いかなる言い訳も許されません。
「そこをうまくやるのが管理職だ」
と責任を負わされ、
できなければ、
自分自身の人事評価が下がることになります。
部下育成について上司が困っている時に、
上司の努力を理解してくれたり、
組織が相談に乗ってくれるという仕組みを設けている
という企業・組織は稀でしょう。
みなさんがこれまで関わってきた組織で、
そのように部下育成などに苦しんでいる管理職を応援してくれるところは、
ほぼ無かったのではないでしょうか?
上司は一切の抗弁が許されず、
結果だけで判断されてしまう、
これが一般的ではないでしょうか。
■そのため、
上司は、
部下を厳しく指導することもあり、
成果が乏しければカバーし、
部下のやる気が感じられなければ話を聞き、
それに合わせて指導するなど、
さまざまに心を砕きフォローを尽くすことになります。
しかし、
自分の立場を履き違えた部下が
「できません」
あるいは、
「それは僕がやらなくても良いもではないでしょうか?」
と指示を拒絶することもあります。
権利は主張するが義務は果たさない、という
ケースも珍しくはありません。
上司から面談をしようとしても
部下が忙しがったり、
いま流行りの1 on 1ミーティングについても、
自分からまったく申し出てこない部下もあり、
コミュニケーションそのものを築かせない部下もいます。
生まれた時から、
目にするものにはすべてマニュアルがあるマニュアル世代は、
「世の中のすべてについて最良のやり方が決まっている」
という前提なので、
「丁寧に教えてもらって当り前」
「正解のない課題を指示する方がおかしい」
と考えているところもあります。
こんな状況で、
部下を順調に育成し、
パフォーマンスを上げられるようにするなど、
果たして、どんな上司でもできることでしょうか?
にもかかわらず、
「そこをやるのが上司だ」
と、組織からも責任を負わされているのが、
我が国の、昭和時代から今に至るまでの管理職なのです。
こうした背景があるため、
世の中のほぼすべての管理職の方々に、
自分なりに部下を育成しようとするあまり、
履き違えた部下とは関係性が悪くなったり、
鍛えようとしたことが嫌がらせのように
受け止められてしまい、
知らず知らずのうちにエスカレートした結果、
「パワハラを受けた」
と訴え出られてしまうというケースが多発しているというわけです。
というより、
パワハラ事案の多くが、
このパターンではないでしょうか。
■これをすべて
「上司が悪い」
パワハラと認定していては、
管理職の身が保ちません。
組織からは指導をしろと言われ、
部下からはパワハラだと言われ、
板挟みになっても誰も助けてくれない、
・・・こんなことをしていては、
どこの組織でも、
上司の方がメンタルを害してしまいます。
そして、履き違えた部下も目を覚ますことがないので、
組織が期待するような成長は見込めません。
このような状況が生まれ、
組織全体が病んでしまっている現場が少なくないことでしょう。
つまり、
この構造を変えて、
管理職を救い出さなければ、
本当にパワハラを根絶することなどできないのです。
ではどうすれば良いか?
それは、
「ある部下の育成・指導の責任を、
その上司一人に負わせない」
ことに尽きます。
多くの管理職、さらには多くの同僚からも、
どのように指導されているかが見える
ガラス張りの組織にするということです。
つねに多くの社員が育成・指導のプロセスを見ていれば、
上司に行き過ぎがあれば上司が、
部下に問題があれば部下が、
他部署の管理職や多くの同僚たちから
指摘されることとなります。
上司は、
行き過ぎた指導へとエスカレートすることから
免れることができます。
部下も、
誰もが同じ意見で自分の非を指摘するので、
上司の私情でいじめられているのではなく、
「自分自身が心を入れ替えなければ
みんなから呆れられてしまう」
と、客観的な存在価値を確認することができます。
また、
ガラス張りの環境であれば、
そうなるまで
部下を育成・指導するべく、
辛抱強くさまざまに手を尽くしてきたことや、
厳しく指導せざるを得なくなったプロセスまでがつまびらかとなるので、
上司が
多くの社員から理解してもらうことができ、
なにより上司が、一人だけの責任に追い詰められることが起きません。
■そもそも、
いじめ、虐待、体罰、DV、
セクハラ、パワハラなど、
行き過ぎた支配は、
密室で生まれます。
したがって、
密室を作らないことが、
公正・公平な職場環境を作る大原則なのです。
仲良くなりたくもない上司から嫌われるだけでなく、
多くの同僚からも嫌われるとなれば、
部下も、
甘えてはいられませんから、
成長しなければならないと思えるでしょう。
■では、どうすれば、
密室にならないよう、
ガラス張りの環境を創ることができるでしょうか?
それは、
つねに社員一人ひとりが、
周囲から理解や応援を取り付けられるように
みずから情報発信し、
自分の立ち位置を明らかにしておく
「自治能力」
を持つようにする、
ということになります。
そのための最もシンプルな方法が、
1日5分のコミュニケーション・モデル
『HIT-Bit®︎』
です。
パワハラをなくすには、
上司を追い詰めないことが必要です。
そのためには、
上司にも部下にも、
日頃から状況についての情報を発信してもらい、
密室を作らないようにすることが
論理必然的に不可欠となります。
反対に、
上司も部下も情報発信しない組織で、
密室が生まれないようにすることが可能でしょうか?
密室が生まれる組織では、
どんな部下でも伸ばさなければならない責任を
負わされてしまう上司が、
部下から絶対にパワハラだと訴え出られないようにすることができるでしょうか?
上司を救い、
部下を救い、
そして、
「良いことは良い、ダメなものはダメ」
と組織としての意思を明確に示して、
思うような組織を創ってゆきたいならば、
スタッフからの情報発信が当り前に行なわれる
組織運営をお勧めします。
なお、HIT-Bit®︎については、1Dayセミナー(オンライン)を開いています。
◆5/8(土) 13:30〜16:30
◆6/12(土) 13:30〜16:30
◆7/10(土) 13:30〜16:30
(いずれも同内容です)
1Dayセミナーの詳細と申込はこちらからです。