■昨日、このブログで
「接遇研修を引き受けるにあたり、院内巡視はいたしません」
とお伝えしたところ、
「ホントにホントにしないのか?」
「まったくしないのか?」
「巡視してわかるところだってあるはずだ」
とのご指摘をいただきました。
ホントは、
「どうしても」
という場合には、することも、あります。
ただし、その視点が、
形を重視する接遇講師・接遇コンサルタントとは全く異なります。
■一般的な接遇講師・接遇コンサルタントは、
外来については、午前中の忙しい時間帯を
見ようとするのですが、
一方、
患者サービス研究所は、
院内を拝見する場合には、
午後の、比較的空いている時間帯に関心があります。
なぜ、このように正反対になるのでしょうか?
それは、目指すべき接遇が正反対だからです。
■まず、
一般に接遇講師・接遇コンサルタントの人は、
企業向けのビジネスマナー講師出身であったり、
ビジネスマナーを基礎とした接遇教育をしているので、
商業ビジネスの考え方がベースになっています。
そして、商業ビジネスでは、
よく言われることですが、
「お客様の店内の滞在時間が、売り上げに比例する」
とされています。
そのため、
店内が混み合う忙しい時は、
もっとも重要な掻き入れどきであり、
そんな時こそ、
お客様に快適に店内で少しでも長く過ごしていただきたいので、
「忙しい時ほど、笑顔を忘れずに」
という指導になるのです。
忙しい時ほど、
「美しい立ち居振る舞い、爽やかな笑顔、正しい言葉づかいが、できていなければならない」
というわけです。
そのため、
商業ビジネスをベースとした接遇講師・接遇コンサルタントは、
医療機関から依頼された場合にも、
「午前中の混雑しているときにこそ、
職員が、美しく振舞っているか?」
を見たいと考えるのです。
■しかし、医療現場では、
「より長く院内に滞在するために、快適な対応をして欲しい」
と考える患者さんはいません。
むしろ、
「一刻も早く帰りたい」
とさえ思っています。
もし、みなさんが患者さんやご家族の立場で医療機関を訪れた時にも、
その病院の職員に望むのは、
美しい立ち居振る舞いや、
爽やかな笑顔や、
正しい言葉づかいではなく、
「できる限りのことをしてほしい」
ということではないでしょうか。
忙しい中でも、一生懸命向き合ってくれて、
やれることをしてくれていると感じられれば、
「この病院でよかった」
「この人に相談してよかった」
と思えるでしょう。
そして、大抵の病院において、
午前中の混雑している時間帯には、
誰一人、手を抜いてのんびりしている職員などいません。
なので、そんな現場を見ても、
接遇が良いか悪いかなど、見えないのです。
逆に、午後の、比較的空いている時間帯には、
職員の方々も、少し自分のペースで動けるようになるので、
そんな時間帯こそ、
廊下で患者さんに声をかけている人がいるか、
もののレイアウトや掲示物などの環境を整えている人がいるか、
来院者の方の話をじっくり聞いている人がいるか、
……と、
職員の方々が、患者さんに対して
「できることをなるべくしようとしているのか?」
がわかるのです。
もし、午後にさえ
こうした気配りや動きが見られなければ、
その現場は、
「業務は忙しくてもこなすけれど、
患者さんのためにできることをなるべくしようという
ホスピタリティが高い現場ではない」
ということがわかります。
なので、患者サービス研究所では、
院内巡視をするとすれば、
できれば午後にお訪ねするようにしているのです。
そこで見るのは、もちろん形ではありません。
若い女性の職員が、一生懸命対応している方が、
ぎこちなくても、
年配の患者さんからは好感をもたれています。
馴れ馴れしい話し方の看護師さんと喋る方が、
お年を召した患者さんは
娘と話すように心から気を楽にしていることもあります。
■もし、
「院内巡視しますよ」
という接遇講師・接遇コンサルタントがいたら、
「どんな時間帯に来て、何を見るのですか?」
と確認されることをお勧めします。