職員とコミュニケーションする関係性を設計する方法

職員とコミュニケーションする関係性を設計する方法

■以前からお伝えしている通り、
コーチングやファシリテーションなどのように、
「どんなコミュニケーションをとるか?」
といった対話の方法は、たくさんありますが、

それよりもはるかに重要なことが、
「コミュニケーションの機会をどう設けるか?」
といったテーマです。

言い換えれば、
(これも以前からお伝えしていることですが)
これまでの
「テーブルについて活発に発言してもらう方法」
ではなく、

これからは、
「テーブルについてもらう方法」
を研究しなければならない、ということです。

さらに、言い換えれば、
(これも以前からお伝えしていることですが)
これまでの
「働くこと前提で、1のモチベーションをどのように
3や5にするのか?」
という延長的モチベートではなく、

これからは、
「働くかどうかもわからない人の、0のモチベーションを
どのように1にするか?」
という創造的モチベートを
研究しなければならない、ということです。

■つまり、昭和の時代のように、
上司が呼べば部下は集まり、
上司が伝えれば部下が従う、
という時代ではなくなったということです。

つまり、上司は、
「どうしたら集まってくれるか?」
を研究しなければ、
呼び掛けても集まってもらえず、
押し付けたこともやってもらえず、

そればかりか、
呼び掛けも押し付けもしていないのに、
勝手に部下が辞めてゆく、
という時代になったということです。

■そして、なにより、
今回の新型コロナ感染の影響によって、
みなさんが、それを痛感しているのではないでしょうか?

もとより働き方改革の流れもあったために、
「コミュニケーションをとるくらいなら、早く返すことが大事」
とまで言われるようになっていたことは、
改めて申し上げるまでもないでしょう。

さらに密閉・密集・密接を避けたいと
誰もが思う状況下では、
だれも
「コミュニケーションをとりましょう」
とは思いません。

しかしながら、
コミュニケーションをとることを遠慮していて、
距離がある状態を放っておくと、
いつのまにか誤解が生じたり、
互いの関心が希薄にある結果、
悪い関係にことはあっても、

久しぶりに会った時に、
良い関係になっていてお互いにびっくりした
などということは絶対にありません。

つまり、
意図的・意識的・作為的にコミュニケーションを
とってゆかなければ、
組織が空中分解しかねない世の中になったと
いうことではないでしょうか。

実際、
みなさんは、
新型コロナ以前よりも、
対話が増えたでしょうか?

最近話せていないため、
「あいつ、気持ちが前向きになっているかな?」
と気がかりな職員がいませんでしょうか?

■ただし、上述したように、
強制的に時間をとらせて
あれこれ聞く、というのは、
そのことに気が進んでいない職員にとっては
ストレスでしかなく、逆効果となります。

もし、職員が、
「自分はこうしたいのに、困っている!」
などと、意思表示してくれれば、
応援しようもありますが、
なかなかそんな意思表示をしてくれることもありません。

■そこで、人間の心理構造を振り返っておきます。
人間はそもそも、
放っておけば、自分の世界に埋没していってしまうという
性質が、初期設定されているでしょう。

いわば、
「自己埋没(セルフ・バリー)」です。

気がつけば
蛸壷化したり、
茹でガエルになったり、
と、独善に陥りがちです。

さらには、自分との対話も減るので、
自分の価値観を見失ってしまうことが珍しくありません。

自分で選んで入った職場で、
毎日文句を言い続けている、という人をよく見かけることでしょう。

そんな
「自己埋没」
した人たちがたくさん集まって、
毎日一緒に働いていれば、
摩擦が生まれストレスが大きくなり、
不機嫌な職場になることは、論理必然でしょう。

そして、これまでは、
「自分をどうするか?」
「周囲とどう折り合うか?」
は、本人たちが解決すべきこと、
とされてきました。

しかし、それに任せていては、
職員はモチベーションが下がり、
人間関係は悪くなり、
辞める人続出で、
組織の生産性が下がるばかりとなってしまいます。

そこで、
こんにちでは、
職員のモチベーションを上げ、
人間関係を良くして、
辞めない職場づくりによって、
生産性を上げるためにも、

組織が、
意識的・意図的・作為的に
「組織づくり」
を行なってゆかなければならない時代となっているのです。

■では、具体的にどうすれば良いか?
切り替えなければならないポイントはたった一つです。
すなわち、
「自己埋没(セルフ・バリー)」
を徹底して排し、
「自己開示(セルフ・ディスクロージャー)」
を促すことです。

自分開示によって、
自分の価値観を明かすためには、
言語化をしなければなりません。

言語化することによって、
自分の感情や思考、価値観を改めて形成することになりますから、

自分の価値観を改めて見出す
「自己発掘(セルフ・マイニング)」
が始まります。

「本当は、こんなことがしたかったのだ」
「本当は、こんな人になりたかったのだ」
と、本来描いていた自己の輪郭を明確にするので、

それに引き換え、
できていない現実の自分と向き合うことになります。

それは、
蛸壷化や
茹でガエルから
脱却する視点をみずから持つことでもあります。

■このように考えてみると、
いかに、
「自己開示」
することが当り前になることが大事か、
お分かりでしょう。

いま、どんな想いで現場で頑張ってくれているのか
わからない部下・職員と、
コミュニケーションを設けて、
良い関係性を築くためには、

コーチングやファシリテーションの技能を磨くこと以上に、
「自己開示」
することが当り前という
習慣をつくることが重要です。

■ただし、
自己開示・自己発掘を習慣化してもらうためには、
以下の3点が不可欠でしょう。

まず何よりも、
(1)身体的に楽なことです。

労力がかかると続きませんから、
極力、楽でなければ続きません。

つまり、身体的に楽な自己開示とは、
「1日に、一言だけ」
です。

次に、
(2)精神的に楽なことです。
わざわざ意味のあることを言語化するのは
負担がかかりますから、

その瞬間、自分の胸の内にあることを
そのまま発言してもらうことが
もっとも負担が少ないでしょう。

つまり、精神的に楽な自己開示とは、
「自分の言いたいことを言う」
です。

そして、いかに負担が少なかろうと、
やはり、人は、レスポンスがないことを続けることは
困難です。

したがって、発言に大して
 (3)「周囲が承認する」
ということです。

このように、
(1)毎日ひとこと、
(2)それぞれに言いたいことを言い、
(3)何を言っても必ず承認され続けると、

人は、
「自己開示って悪くないな」
と思えるようになります。

人間はもともとわかってもらいたい動物なので、
承認される環境では、
驚くほど心が明るくなり、
ますます自己開示するようになります。

自己開示してくれる人には、
その価値観がわかるので、
周囲も応援することができるチャンスが得られます。

日頃から承認してもらえて応援してもらえる環境であれば、
もし、上司から
「ちょっと時間を取れるか?」
とコミュニケーションの機会を求められれば、
「喜んで応じたい」
と、心から思えることでしょう。

これが、テーブルについてもらうための
創造的モチベートです。

なお、ご紹介した、
(1)毎日ひとこと、
(2)それぞれに言いたいことを言い、
(3)何を言っても必ず承認
……というコミュニケーション・モデルが、
患者サービス研究所が提唱する
「HIT-Bit」
です。

1日5分のコミュニケーションで、
職員同士がなんでも話し合える関係性を築き、
おたがいに応援し協力し会える組織を創ります。

みなさんの現場でも
こうした組織づくりをされることをお勧めします。

■ただし、導入には細心の注意が必要です。
「1日5分のコミュニケーションをやるぞ」
と呼び掛ければ、
「忙しいのに」
「必要ない」
「なぜ?」
と反発が巻き起こることは火を見るより明らかで、
二度と導入することができなくなるでしょう。

では、どうすればよいか?
その方法は、またいずれ、ここで紹介します。

■なお、
職員とのコミュニケーションを大切にして、
自己開示を促し、
組織が一枚岩になるための組織運営の方法について、
オンライン・セミナーを行ないます。

『いまだからこそ病院一丸となる! 1Dayセミナー』
です。

詳細・お申込みは、こちらです。

6/21(土) 13:30~15:30
6/27(日) 13:30~15:30
両日とも同じ内容です。

よろしければ、
健全で力を発揮してくれる組織づくりの根本を一緒に学びましょう。