■たとえば、
ある病院の定例会で、職員の一人が、
その日の議題に挙がっていなかったことについて、
「うちの病院は、もっとこういうことをしなければならないのではないか?」
と発言した場合、
みなさんの職場では、
参加者がどのような反応をするでしょうか?
先日、わたしが出席した会議では、
出席者の一人のそんな発言に対して、
役員の一人が、
「その件については、担当者たちがすでに話している。
この会議は、そのことについて話す場ではない」
と牽制していました。
たしかに、
一見、
「決められた議題について話し合うのが正しい会議」
だと思われるかもしれません。
しかし、それを続けてゆくとどうなるでしょうか?
もうお察しのことと思いますが、
どの会議の守備範囲にも入らない問題については、
誰も発言する場を持つことができないので、
問題が事故やクレーム、退職などにつながってしまう、といことになってしまいます。
■なぜ、そういう反応をしてしまうのか?というと、
「口を出すが、行動しない人」
をこれまでたくさん見てきているからではないでしょうか?
もし、
「口を出すだけあって、行動する人」
ばかりだったら、
いかなる発言も大歓迎でしょう。
議題にも挙がっていない、
だれも気づかず、予期しなかった事についても、
職員の方々が、
どんどん発言して、みずから行動してくれるのですから、
「その件については、担当者たちがすでに話している。
この会議は、そのことについて話す場ではない」
という必要はありません。
むしろ、
「その件については、担当者たちが話しているので、
引き合わせて参加させてあげよう」
と、もっと発言を引き出したくなるはずです。
■もし、発言を黙殺すれば、
職員は、あっという間に自分の業務に埋没してしまい、
視野を狭くしてしまいます。
そして、目先のこと以外には関心を持たなくなり、
結果、自分の職場の経営に対して
傍観者となってしまうのです。
その時、職員は、
誰も責任を感じることはありません。
もしかしたら、
「なぜ経営者が気づいて対処してくれなかったのだ」
と他責発想にすらなるるでしょう。
これは、もし自律進化組織を目指すならば、
その正反対の組織体質に他なりません。
■つまり、
「そんなことは話さなくていい」
と発言を封じることは、
それに基づいて行動することも封じてしまうことになり、
その結果、
言った本人は、
部下たちに手出しをさせない分、
自分がその責任をみずから背負って、
感謝もされず、傍観者的に非難されるといった立場を
進んで受け持つことを意味しているのです。
これも一種の「負責病」です。
では、部下に当事者意識を持ってもらい、
経営陣・管理職が楽になるためには、
どうすればよいか?
その答えはシンプルです。
■もし、その会議の議題に挙がっていない、
一見、関係のない話題であっても、
「よくぞ言ってくれた!
では、気の済むようにやってくれ!」
と言えば良いだけです。
とはいうものの、会議である以上、片付けなければいけない議題もあるでしょう。
なので、会議を二部構成にすることをお勧めします。
前半は議題を片付けるための会議。
後半は、目先のこと「以外」のことについて、
どんどん発言してもらい、
その行動を促せば良い、ということです。
なお、
「言ったことは全部やれ」
と言ってしまうと、
「迂闊なことを言えば全部自分に降りかかってくるので、言えない」
と萎縮させてしまうので、禁物です。
担当者がいる領域の問題であれば、
その担当者に引き合わせたり、
担当者がいない領域であれば、
賛同者を集めて自分たちで行動する機会を作らせるとか、
それが無理な場合には、
経営者に連絡して問題の所在を伝えるといったことだけを、
すれば良いでしょう。
このように、
一見関係ないことを言い出す職員がいた場合に、
「文句を言うな」
ではなく
「待ってました!文句を言うなら、一緒にやろう」
という文化をつくることが、
組織の生産性を大いに上げることでしょう。
関与できる選択肢を与えれば、
関与しない職員は、
「現実が変わらないのは自分が関与しないせいでもある」
とわかるので、
他責発想になることはありません。
■ただし、
「会議の場でそんな時間を取れない」
と思う方も少なくないでしょう。
そのためには、
1日5分のコミュニケーション・モデル
「HIT-Bit」
をお勧めします。
毎日、一人一言、発言するので、
細やかな気づきや、ちょっとした違和感などが
挙がってきます。
その反対に、
会議では
「そんな社会問題みたいなことを言って意味あるの?」
と言われてしまいそうな、マクロな発言も上がります。
しかし、そうした
小さな話から、
大きな話まで、
ごく個人的な価値観の話から、
世の中の制度的な話まで、
幅広い話題が飛び交うので、
「すべてが自分たちの問題だ」
という当事者感覚が育まれます。
人任せな他責発想とは無縁な、
全員参加の総力経営が実現するのです。
HIT-Bitについては、1Dayセミナーを開催しています。