■自律進化組織を勧めていますが、時々「自立組織」を勧めているコンサルタントもあります。
どちらが良いでしょうか?
- 自律のためには自立は欠かせないので「自立進化」が良い
- 自律と自立は大部分が共通しているので問題ない
- ほぼ同義なので、どちらでも問題ない
- 自律と自立は、まったく違う
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■かつて、
「自立」
は、非常に重要でした。
昭和時代には、
スタッフ各自が
与えられた業務を、
責任を持って遂行することが、
何よりも重要だったからです。
ただひたすら、
造り続け、
売り続け、
それでも会社は成長し、
従業員は幸せになるとされていたからです。
なぜ、それができたか?と言えば、
外部環境の変化が
遅かったからです。
昨年と同じことをすれば、
ほぼ昨年と同じ成果を生み出せました。
なので、春になれば春闘があり、
ベースアップするのが当り前だったのです。
それが判り切っているのだから、
みな余計なことを考えず、
「与えられたことをこなしさえすれば良い」
つまり、「自立」が大切だったのです。
自分と与えられた業務だけを見ていれば良い時代
だったとも言えるでしょう。
なので、
「自分も自分の業務に責任を持つ以上、
他人に依存するなどもってのほか」
「他部署を頼ってはならず、頼らせてはならない」
あるいは、
「他部署に借りを作るな、貸しも作るな」
というカルチャーだったのです。
■いまは、どうでしょうか?
そうはいきません。
先月と同じことをしても、
同じ成果が得られるとは限らない時代です。
となれば、
「与えられたことをこなしさえすれば良いのか?」
という視点がなければならない、ということです。
自分と業務を取り巻く環境を見る視点が必要な時代
となったと言えます。
想定外の状況の変化が起これば、
「してはならない」
などと組織の中のルールに縛られている場合ではありません。
頼ることも、
頼られることも、
借りを作ることも、
貸しを作ることも、
柔軟にできる組織こそが、
スマートでしなやかで、
生き残ってゆけるでしょう。
具体的には、
「今月は他部署から人を借りて乗り切り、
来月は他部署に人を送り込んで、
その分の利益を出す」
といったパターンです。
あるいは、
「今年は思い切り地域を応援し、
来年は思い切り地域に協力してもらう」
という戦略もダイナミックな成果を上げるには、
極めて素晴らしい発想です。
これらは、
空間的な、視野の広さ、
時間的な、展望の長さ、
関係性の、視座の高さ
・・・などがあれば、誰でも考えを巡らせることができます。
みなさんの現場に、
そのような視点で考えているスタッフは、
何人いますでしょうか?
■このように、
「自立」
を大事にしすぎると、
トンネリングやサイロエフェクトに陥る危険があります。
トンネリングとは、
トンネルの中を猛スピードで疾走している時のように、
視界が極端に狭くなり、
周囲が見えなくなってしまう状態です。
サイロエフェクトとは、
専門領域に埋没して、
周囲の専門外とのコミュニケーションを
断絶してしまう状態です。
いずれも、
本人が視野狭窄に陥るのですが、
その結果、
自分自身が孤独や不安、恐怖、猜疑心、報われない虚しさなどに
囚われてしまうばかりか、
独善に陥るゆえに生産性の低下につながります。
だれも幸せになりませんが、
不思議と、
いつの間にかその病弊に陥ってしまうのが
人間なのです。
これが、
依存を許さず、
「自立」
を強調することの副作用です。
■反対に、
「今回はうちがそちらに依存します。
その分、来月は安心して依存してね」
と、
個人の担当や部署の役割の壁を超えたり、
今日、今週、来月の壁を超えたり、
俯瞰する視点を持てることが、
柔軟で強い組織になる要件となっているのが、
こんにちです。
コロナの影響がある今、
みなさんの現場からは、
たとえば、
「今月は、
うちの部署は思い切って休業にして、
あちらの部署をみんなで手伝いに行こう」
という大胆な話が出てきているでしょうか?
実施するかしないかは別として、
そうした視点と発想が
あるかどうか、が重要です。
医療機関であれば、
「状況が変わるまで、
この部署は、人手に余裕があるので、
みんなで、
あちこちの連携先の応援に行こう」
という話があっても良いでしょう。
みなさんの現場のスタッフが、
このようはしてにと発想を持って、
こんなふうに話し合ってくれたなら、
どんなに心強いでしょうか?
これが組織の柔軟性と本当の強さであり、
変化への対応能力でしょう。
■このように、
「自立しようか」
「自立せずにいようか」
「依存しようか」
「依存させてあげようか」
ということまで、
コントロールすること・・・
それが、
読んで字のごとくの
「自律」
です。
したがって、冒頭のクイズ
「自立が良いか、自律が良いか」
については、
[1]の「自律のためには自立は欠かせないので「自立進化」が良い」
[2]の「自律と自立は大部分が共通しているので問題ない」
[3]の「ほぼ同義なので、どちらでも問題ない」
・・・は、誤りとなります。
自律は組織を柔軟化し、
自立は組織を硬直化するという
180度、異なる結果をもたらします。
なので、最も重要な点において、
[4]の「自律と自立は、まったく違う」
が正答となります。
■上層部や管理職が、
余計なことに関心を持つスタッフに
顔をしかめたり、
スタッフが
「与えられたことだけを責任を持ってこなす」
といって殻に閉じこもっていられたのは
過去の時代です。
今の時代には、
「自立」
にこだわる必要はありません。
むしろ、柔軟に、
個人や部署や組織の枠を超えて、
「依存したりされたりを自律すること」
を、
みなさんのような上層部・管理職の方々が、
「視野が広いね、すごいな!」
と、大歓迎する方が良い時代でしょう。
そのように柔軟であるほど、
タイムリーに選択と集中ができるスタッフだということなので、
おのずと生産性が高い組織でもあります。