■新入職者が、
「なんでマニュアルがないのですか?」
「なんで先に教えてくれないのですか?」
と言うことがあり、
びっくりしてがっかりしてしょんぼりした、という経験が
みなさんにもあるのではないでしょうか?
今や、生まれた時から
「なんでもマニュアルがあるのが当り前」
と勘違いしかねない生活環境だったという人も、
社会人になっている時代です。
なので、
「教えても感謝しない」
という嘆きもあちこちで聞かれます。
■なぜ、感謝できないのか?
それは、
「別に自分にとってはやらなくても良いことを、やってあげている」
という心理が働いているからでしょう。
もし、自分がやりたいという思いがある人なら、
やり方を教えてくれる人には感謝し、
頼みもしないのにいきなりマニュアルをもらえなくても、
むしろそれが当り前だと思うでしょう。
そもそも日本人が教育好きなせいか、
どこに就職しても
「教育が整っているのが当り前」
という感覚の人が多いものです。
しかし、教育つまり「勉強させる」という言葉自体、
高校までで充分ではないでしょうか。
就職したなら、オトナななのですから、
自分から学ばなければなりません。
それはつまり、
自分に何が必要か、自分で知らなければならない、
ということです。
ところが日本はとっても過保護だから
人がみずから成長しにくいのです。
というのも、
人は、課題がなければ動かない動物です。
空腹になれば、
必死で食べ物を探しに行くものです。
つまり、日本の組織は、
本来は、本人に、
「自分に何が必要か」
を感じさせてあげれば良いだけなのに、
過保護なので、
ついつい、
本人がお腹も空いていないにも関わらず、
本人が頼んでもいないのに、
お膳立てをしてあげてしまう傾向があるのです。
お腹が空いていない本人にとっては、
迷惑なだけで、
それでも気を遣って
「食べてあげる」
という思いになってしまうのです。
職員が自分に何か必要だと感じていないにも関わらず、
教育研修部なる部署が、
(あるいは教育研修担当者なる人が)
職員が頼んでもいないのに、
お膳立てをしてあげてしまう傾向があるのです。
学ぶ必要を感じていない職員にとっては、
迷惑なだけで、
それでも気を遣って
「学んであげる」
という思いになってしまうのです。
■そんな前提の中で生きてきている職員は、
業務を割り当てられても、
必要に迫られているわけではないため、
感謝することもありませんから、
マニュアルがあればいいのに、
「なんで無いんですか?」
と言い出すというわけです。
その時の、部下の本音は、
「あなた方が頼むのだから、部品は用意しておくのが礼儀でしょ」
です。
職員本人が頼んでもいないのに
仕事を割り振り、
必要を感じてもいないのに
教育を施そうとすれば、
そんな教育研修部は、
もはや「上げ膳据え膳部」でしかありません。
上げ膳据え膳でもてなしていれば、
履き違えた人間が育つのも無理ありません。
■したがって、
これを、
「ぜひやりたいので、力を貸していただけたらこんなに嬉しいことはありません」
と職員がいうように、切り替えなければなりません。
そのためには、どうすれば良いか?
朗報です!
「もう上げ膳据え膳しない」
ということです。
そして、
自分に必要なものを感じて、
学ばなければならないと
「必要に迫られる環境」
に放り込むことです。
■人間の想像力は、驚くほど乏しいものです。
みなさんも、
あれほど自分が騒いでいたことなのに、
近くで見ていたはずの親しい知人や家族が、
その重さを
「まったくわかってくれていなかった」
とがっかりすることが、年に1回や2回ではないでしょう。
温室の中で、
どんなに言葉を尽くして外の寒さを説明しても
伝わらないのが普通だと、割り切った方が、
自分の精神衛生にも良いことと思われます。
というわけで、
「この人は何で動かないの?」
と感じたら
「この人は痛み(課題)を感じていないのだ」
と理解しましょう。
そして、
痛み(課題)を感じるように仕向けましょう。
どうすれば良いか、といえば、
ヒントは、
自分自身が痛みを感じたように
相手にも同じ体験をさせる方法を考えてみる、ということです。
具体的にはどうするか?
については、以前にも掲載しましたが、
またいずれ別の機会にここでご紹介しましょう。
ともあれ、
「お前なんか、必要に迫られちゃえ!」
というスタンスです。
■なお、想像力が欠如している人は
なかなか目が覚めないので、限界があります。
人の痛みがわからない人は、
自分に痛みが襲いかかる恐さも想像できません。
たとえば、自分自身、
雪の日に、届け物をしてくれた宅配ドライバーに
心から感謝して労っているでしょうか?
できていないと思う時には、
外に出て寒さを肌で感じてみることをお勧めします。
そうすれば、
魂のこもった言葉で、
心から感謝することができるでしょう。