組織を良くするなら、自惚れ(自己美化した人間観)を排すること

組織を良くするなら、自惚れ(自己美化した人間観)を排すること

■今シーズンは、病院ドラマが目白押しですね。

 

先日、そのうちの『病室で念仏を唱えないでください』が

スタートしました。

 

念仏というくらいで浄土真宗が背景にあり、

 

主役の伊藤英明が

「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」

と、歎異抄の有名なフレーズを叫んでいるシーンもありました。

 

「善人が救われるのだから、悪人はもちろん救われる」

という、世間の常識からすると

「逆だ!」

と思えるような言葉です。

 

■本当の意味を簡単に解説すれば以下の通りです。

(TVが本当の意味を踏まえているかはわかりませんが)

 

人間には二種類しかなく、

善人とは、自分は善人だと思っている人(自称善人)、

悪人とは、自分が至らない存在だとわかっている人(悪人)、

という前提があります。

 

たしかに、わたしたちは、

恨んだり、

怒ったり、

いなくなれば良いのに、

痛い目に遭えば良いのに…などと

心の中で人を傷つけることも多々あり、

他人の幸せな話を聞けば素直に喜べず、

「この人に少しは試練が訪れますように」

と願う心が出てきたり、と、

それはあさましく、

器が小さく、

とても親しい人には言えない(とくに自分の子どもには決して言えない)醜い心だとも言えるでしょう。

 

そうした自覚がなく、

「自分は善人だ」

と自惚れ、自分を美化している人が「自称善人」、

そのことに気づき自覚している人が「悪人」、

というわけです。

 

なので、

「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」

は、

「自覚がなく自惚れている人さえ救われるのだから、もちろん自覚している人はもちろん救われる」

となるのです。

 

■言い換えれば、

「自覚がなく自惚れている人は、救うことが極めて困難」

ということです。

 

これはみなさんも、お心当たりがあるでしょう。

 

血圧や血糖が異常値なのに、その自覚がなく、

「大丈夫」

と自惚れている「自称健康」な人は、

検査も治療も受けず、

来院されることもなく、

まして生活習慣を変えることもありません。

 

そんな自惚れている人たちのことも、

みなさんは、

普段、来院時や訪問時やデイケアに来られた時に、

こまめに声をかけるなどして、

何とか治してあげたい、と働きかけてあげていることでしょう。

 

一方、

症状を自覚している人は

もちろん治してあげる余地がありますね。

 

病院からすれば、

「自称健康な人も治してあげたい。いわんや症状を自覚している人なら、もちろん治しますよ!」

ということになるでしょう。

 

このように、

良くなるのも、良くならないのも、

決定づけているのは、

つまるところ、

本人の「自惚れ」があるかないか、だということです。

 

■ここからが、本題です。

 

ところで、

みなさんは、

「世の中に、

さまざまに組織論、リーダーシップ論、コミュニケーション論が出回っているのに、

なぜ、なかなか組織づくりがうまくいっていないのか?」

と感じることはないでしょうか?

 

その原因は、実は、

やはり、

「人間を自己美化しているから」

「人間について、自惚れているから」

に他なりません。

 

この人間観を誤っていると、

いかなる人材育成も組織開発もうまくいくことはないからです。

 

それは、

身体構造の理解を誤っていると、

いかなる治療も適切に行なわれず身体を良くすることはできないのと同じです。

 

ところが、

世間には、以下のような人間観を前提にした考え方が多いでしょう。

 

「人間は、習慣を身につけられるものだ」

 

「人間は、頑張れば大事なことを続けられる」

 

「みんなで考えて進めれば良くなるものだ」

 

「誰もが、素晴らしい想いを持っている」

 

「人間は、基本的には前向きだ」

 

「誰にも、あたたかい思いやりの気持ちがある」

 

「頑張るスタッフもいるのだから、

すべてのスタッフも同じように頑張れるはず」

 

「取り組む部署もあるのだから、

すべての部署も同じように取り組めるはず」

 

「誰もがコミュニケーションの大切さを理解している」

 

「気がついた人がやれば良い」

 

……などなどです。

 

現場で、

「できるはずのことが、できていない」

「なかなか全体の取組にならない」

「せっかく始めた取組が、続かない」

ということが、多々起きているのは、

上記のように人間を美化しているからです。

 

うまくいっていない組織論がたくさん出回っているのは、

組織論などの領域で研究してきた先人たちも、

やはり人間なので、つい

「人間には素晴らしい可能性がある」

と美化してしまっている歴史があるからでしょう。

 

マクレガーの

「人間は生来働きたいものではないか」

という考えや、

マズローの

「5段階の上に、自己超越という6段階目がある」

という考えなど、

人間に期待しすぎな考えが生まれているのは、

やはり

人間は人間を美化したいものだからでしょう。

 

こうしてみると、

「人間が素晴らしいものだと信じたい」

という自己美化が働いている点で、

科学の方が

感情的・信仰的であり、


「人間は弱くて小さくて至らないものだ」

と厳しいまでに冷静に人間の心を直視している仏教の方が、

むしろ理論的・科学的だとも言えるかも知れませんね。


■そこで、

実際、組織づくりをする上では、

「ちゃんと意識すればできるはず」

と自惚れてばかりもいられません。

 

「意識してもできないのが人間だ」

と冷静に客観視して、

「ではどうするか?」

を講じた方が、科学的で、合理的で、

向上することが実効性あるものになるでしょう。

 

そう言えば、医療安全の分野でも、

「ミスをゼロにするにはどうしたら良いか?」

という精神論的な発想はすでに卒業し、

 

こんにちでは、

「ミスをするのが人間。

では、それでもミスが起きないようにするにはどうすればよいか?」

と、自惚れを排し、

科学的・合理的に対策を講じるのが常識となっています。

 

同様に、

人材育成や組織開発の分野も、

「人は、頑張らせれば、やるものだ」

という精神論的な発想を卒業した方が良いでしょう。

 

そして、

「頑張らせても、やれない・続かないのが人間。

では、それでもより良い成果を生み出すようにするためにはどうすればよいか?」

と、自惚れを排し、

科学的・合理的に対策を講じるべきでしょう。

 

■患者サービス研究所では、

自惚れは人間観を排した取組をお勧めしています。

 

なので、患者サービス研究所の研修・セミナーに

参加された方には、

すでにいつもお伝えしていることですが、

 

「人間は、習慣を身につけるのが大の苦手」

 

「人間は、続けられるのが至難の技」

 

「みんなで考えても、良い方に進むとは限らない」

 

「誰もが、素晴らしい想いを持っている時もあれば、

そんなことを考えるゆとりのない時も多々ある」

 

「人間は、前向きな時もあれば後向きな時も多々ある」

 

「あたたかい思いやりの気持ちがある時もあれば、

そんなことを考えるゆとりのない時も多々ある」

 

「頑張るスタッフが奇特なだけで、

すべてのスタッフも同じように頑張れるわけではない」

 

「取り組む部署が奇特なだけで、

すべての部署も同じように取り組むわけではない」

 

「誰もがコミュニケーションの大切さを理解しているが、

それ以上に大切なことを優先してしまい、

コミュニケーションをおろそかにしがちなものだ」

 

「気がついた人がやることにすると、

決まった人が気づき、負担が偏るのが関の山」

 

……などなどという前提から始めます。

 

■なぜなら、

「すべての失敗は、自惚れから生まれている」

からです。

 

病巣を直視しなければ、

適正な治療は決してできません。


患者サービス研究所では、

こうした前提に立ちつつも、

そんなわたしたちの人間観のもとで、

組織がより良くなるモデルを提供しています。

 

それが、

「HIT-Bit」

です。

 

HIT-Bitを行なっていると、

上司が指示・命令をしなくても

現場がみずから気づき、考え、話し合い、行動する

「自律進化組織」

が実現します。

 

「HIT-Bit」

については、1Dayセミナーを行なっています。

 

本当に効果が永続する組織づくりを実現したい方は、

ぜひご参加ください。

◆ 2020年2月1日(土)13:30〜16:30【東京】

◆ 2020年3月1日(日)13:30〜16:30【東京】

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◆参加費:1人当り4,000円

 

■自律進化組織が6ヶ月で生まれる方程式「HIT-Bitプログラム」

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ブックレットで概略をお読みいただくことも可能です。

 

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