責任を明確にしない「責任ロンダリング」

責任を明確にしない「責任ロンダリング」

■最近、世間では問題が起きても、

「誰も責任をとらないの?」

という不可思議なことが多すぎないでしょうか?

 

重罪の嫌疑がかかっても逮捕されないこともありました。

 

逮捕状が出ても逮捕しない、ということもありました。

 

やったのは官僚で、忖度を強要したこともない、という回答もありました。

 

その記録も、どんどん破棄されています。

 

政治家にしても、

政治家のお友達にしても、

スポーツ団体の役員にしても…、

誰かが決めたはずなのに、

誰一人、責任をとらない、

というケースは、

改めて具体的に申し上げるまでもなく、

枚挙にいとまがないでしょう。


みなさんにとっても、

眼に余ることが多いことと思います。

 

■民主主義とは、

「みんなで決める」

という建前なので、誰も責任をとらないということが起きやすいのかも知れません。

 

しかし、だからこそ、

「みんなで決めたことなのだから、この結論を飲み込め」

という独裁的な態度になってしまう余地があるのです。

 

しかも、

「誰がどういう意見を述べたか?」

といったプロセスについては、たいてい公開されません。

 

参加者がお互いに立場を守りたいために

秘密主義になってゆくからです。

 

一見、恣意的ですが、実質的には、

こんなに恣意的なことはありません。

 

独裁者が一個人か、一定数かの違いでしかありません。

 

このように、

本来なら責任を持って意見するべきものを、

誰の責任でもないということにしてしまうことを

「責任ロンダリング」

とでも呼べば良いのでしょうか?

 

■そして、この責任ロンダリングは、

協会、組合、委員会などの、

任意団体の中では、とても起きやすい傾向があります。

 

個々の利害を超えて、

全体最適のために、

強権的にバッサリと決裁するオーナーがいないからです。

 

その結果、

権限を持った人たちが、

自分たちだけのために、という力学で舵取りをする結果、

それ以外の人たちを犠牲にしてしまうのです。

 

そこがブラックボクスとなり、みんなからは

「まったく民主的ではない」

という不満が上がります。

 

■その点、医療現場においては、

医療行為については、責任の所在が明確です。

 

そのため、業務マネジメントは、とても高度なものとなっていることでしょう。

 

ただし、一方、

組織マネジメントについては、

責任の所在が明確になっていないことが実に多いことを、みなさんもご存知でしょう。

 

経営者でさえ、

「現場が良いというなら、やってみて」

「現場が反対するなら、無理しなくていいんじゃないか」

ということもあるくらいで、

これは企業体では考えられないことです。

 

こうなるのも、

「経営者がやらせた」

と受け止められることに、経営者が大きな不安を持っており、

「みんなで決めたんだから」

と、みんなの責任にしたいからです。

 

▶︎病院には、多くの委員会がありますが、

「委員会が、何をいつまでに達成する」

ということが、明確にされていないことが少なくありません。

 

「目標も委員会で決めて」

「進捗も委員会で検証して」

「来期どうするかも委員会のみんなで」

と、丸投げされていることも多々あります。

 

これが、

医療安全委員会や接遇委員会などになると、

みずから高い目標を立てるモチベーションが起こりにくいので、

結局、

「毎月のヒヤリハットを集計して、

各部署に対処を講じてもらい、病院全体で共有する」

とか

「先月のクレームを確認し、各部署から対処を上げてもらう」

とか

「患者満足度調査を実施して、結果をグラフにして公開」

といった、

対症療法的なことをするだけ、

……ということになっていることが多いのではないでしょうか。

 

「どこよりも質の高い医療安全を実現するために、

自分たちで、視察に行ってきます」

「日本一愛される病院になるために、ホスピタリティの研修を研修を受けてきます」

という話が出てくることは、まずありません。

 

「誰がいつまでに何を達成する」

という責任が、どこにもないからです。

 

▶︎責任の所在が明確でない、最たるものは、

「管理職」

です。

 

みなさんは、管理職に

「管理職とは、何の責任を負う」

と明示しているでしょうか?

 

管理職になった職員に、それを提示しているでしょうか?

 

組織が責任を提示していなければ、

管理職本人は、その責任を果たそうすることはありません。

 

「主任」

にいたっては、その概念も不明確なのではないでしょうか?

 

なので、

「主任は、主体的に動いてくれない。

師長がいないときは、代行をしてくれているみたいだけれど」

ということは多々あります。

 

さすがに

「師長がいないときには、No2の自分が代行しなければ」

ということだけはわかるからですが、

「では、師長がいるときには何の責任があるのかわからない」

ために、

メンバーの中に埋没してしまうのも

無理ないことでしょう。

 

また単に、

上層部からの連絡を部下に伝え、

部下からの報告を上層部に伝えるだけなら、

管理職を配置する必要はありません。

 

これからの時代は、システムがやってくれることでしょう。

 

では、

「管理職の責任とは何か?」

 

みなさんの現場では、明示されているでしょうか?

 

一言で言えば、

「経営者の理念を実現すること」

でしょう。

 

そのために、

まず担当する部署からできることを増やし、

他部署を巻き込み、

病院全体を変えてゆくことができなければ、

それは自部署の運営に過ぎず、

いうまでもなく、

「経営者の理念の実現」

はできません。

 

なので、管理職の方々には、

「経営者の理念の実現」

がミッションであることをまずは明示した方が良いのではないでしょうか?

 

■なお、

もしみなさんが管理職であり、

上席者から責任を明示されていなければ、

「この責任を負います」

と自分から明示して、同意を得て負いた方が得策でしょう。

 

なぜなら、そうした約束がなされていなければ、

一方的に主観評価されてしまうからです。

 

なので、自分の身を守るためには、

約束を取り付けておくことが大切ということです。