■メンタル疾患を原因とする労災申請、おなじく労災認定が、
ともに増加の一途を辿っていることは
みなさんもご存知でしょう。
その結果、従業員が休んでしまうことは
組織としても大きな損失です。
これは一般に、
Absenteeism(疾病欠勤)と呼ばれています。
また、休まないものの、
疾病があるまま就業している場合も、
かならずしも充分なパフォーマンスには
なりませんから、
損失が発生していることは否めません。
これは一般的に、
Presenteeism(疾病就業)と呼ばれています。
さらに、
「病んではいないけれど、
充分に力を発揮してくれているとは言い難い」
ということもあるでしょう。
経営者・管理職からすると、
「あるでしょうどころか
それが一番多い!」
と不満を感じていることも
少なくないのではないでしょうか?
私自身も、外回りの営業マンだったころ、
死ぬ覚悟で炎天下を走り回ったこともあれば、
雪の日にはほとんど移動せずに
あまり働いていなかった、と自覚する日も
ありました。
部下が業務を放棄するわけではありませんが、
組織や上司の期待に応えることなく、
最低限度の成果しか上げてこないことが、
多々あるものです。
みなさんも、
上司のこだわりに付き合うのは苦痛で、
自分のこだわりに注力することがあるでしょう。
たとえば、
上司はスピード重視だったが、
自分は精密なものを作りたかった。
あるいは、たとえば、
上司は数字を全面にプレゼンテーションをしたかったが、
自分は周辺関係者の声を盛り込んで資料をつくった。
または、たとえば、
上司は報告に当たり社長が喜ぶ演出をしようとしたが、
自分は客観的なデータでインパクトをもたらしたかった。
逆に、
部下は頑張ったプロセスを見て労ってほしいが、
上司は結果しか見てくれない。
部下が良かれと思って提案をしても、
上司は明確な理由も告げずに却下する。
・・・などなど、
良くも悪くも、こだわりは人それぞれで、
その重なりが少ない場合には、
互いの価値観が満たされず、
大きなストレスとなります。
そして、組織にとって、
無駄が生まれているということに他なりません。
■この、
組織や上司が求めることと、
部下が実践したい(あるいは、したくない)こととの
ギャップが大きければ、
本来、組織や上司がスタッフに求めるパフォーマンスのうち、
半分も果たされていないということすらあるでしょう。
これを
「逸失成果」
ということもでき、
潜在能力が活かされていないという点では
「逸失パフォーマンス」
ということもできるでしょう。
組織や上司が求めていることが果たされることに対して
給与などが支払われているとすれば、
人件費が活かされていないので、
「Loss per Potentials Cost(逸失人件費)」と
呼ぶことができるかもしれません。
LPCは、
本来、
従業員が100%力を発揮してくれることを期待して
組織が支払っている人件費のうち、
無駄になっている部分を算出することができます。
なので、
このロスが全人件費に占める割合を、
「逸失人件費率」
すなわち
「LPR Loss per Potentials Rate」
ということもできます。
さて、
みなさんのLPCの金額は、
一体いくらになるでしょうか?
■部下が業務として最低限度のことをした場合を、
仮に、70点としましょう。
弁護士、税理士、公認会計士、医師、一級建築士などの
国家資格の合格ラインを平均すると
ほぼ70点なので、
合格最低ラインを70点としてみます。
部下が、充分力を発揮し尽くした場合を
100点としましょう。
一般に、給与は、
すべてのスタッフが持てる力をいかんなく発揮し尽くしてくれること
つまり、
100点に見合う働きに対して
支払われるものとして、異論はないでしょう。
では、みなさんの組織のパフォーマンスは、
何点でしょうか?
全員が70点ギリギリということはない一方、
全員が100点に値することもないでしょう。
仮に、
スタッフ150人、
平均給与月額33万円、
したがって、
人件費月額総計5000万円としましょう。
そして、
組織全体における全スタッフの平均が
85点だったと仮定します。
すると、
月間の人件費が5000万円のうち、
パフォーマンスに反映されている人件費は
その85%
つまり、4250万円ということとなります。
ということは、
その差額、750万円が、
月間「逸失人件費」
という計算になります。
100点を期待して支払って
給与を毎月5000万円支払っているうち、
業務のパフォーマンスに反映されているのは、
4250万円。
反対に、活かされていないのが
毎月750万円
にのぼるということになります。
それは、換算すれば、
「逸失人件費」は、
年間9000万円であることを意味します。
■スタッフが心身不調で休んだ場合の
Absenteeism(疾病欠勤)、
スタッフが心身不調でも出勤したて効率が低い場合の
Presenteeism(疾病就業)、
さらには、
こだわりの偏りや
モチベーションの低さ、
スタッフ同士の連携不全などによって、
たとえスタッフが健康で出勤していても、
実態が
「消極就業」
となっていることで、
目に見えない損失が日々生じていることが
見えてきたことでしょう。
もし
「ポテンシャルの85%程度を発揮してくれていれば良い」
と思っていたとしても、
それが
150人の組織では、
損失は年間で9000万円にまでなる、ということです。
■なお、そればかりではありません。
雇用主は、
本人への給与だけでなく、他にも多くのコストを支払っています。
賞与引当金、
退職金引当金、
社会保険関係費用、
有給休暇コスト、
その他の福利厚生費、
教育研修費、
入退職時の引継ぎコストなどなど。
一般に、
各従業員の雇用コストは、
当該従業員の給与の2.5〜3倍と言われています。
スタッフが85%しかポテンシャルを発揮していない場合、
活かされていない雇用コスト
「逸失雇用コスト」
は、途方もない金額になることがわかるでしょう。